スポーツ部②
二話目です。何となく面白い流れにしました。これからもよろしくお願いします。
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次の日。学校に行くと、すごかった。色々と抜けているが、とにかくすごかった。
具体的にいえば、今まで全くモテなかったクラスメイトが学校一の美少女にラブレターをもらったらしい。それで、大騒ぎだった。
ラブレターをもらった側も、あげた側も、周りの人間も、その美少女に好意を抱いていた人間も、皆大騒ぎだった。
ラブレターを下駄箱に入れた以上、断ることはできまい。
ま、そのラブレターを下駄箱に入れたの俺なんだけど。
ごめんね、もらった人。ごめんね、あげた人。
要するに、この騒ぎの発端は俺ということだ。なんか悪いことをした気になったが、俺は学校一のぼっち。無視されるならまだ存在を認められているのでいいが、こいつらは違う。俺の事は完全に空気扱いである。
だから、そんな奴と付き合うことにならなくて良かったじゃないか。
恐らく、その女は入れる場所を間違えたのだろう。俺の所に真面目にラブレター入れるとか、相当脳味噌が残念でなければあり得ない。
だから、俺は常に一人だ。今だって朝の自主勉タイムだが、周りはめちゃくちゃうるさい。
今日の会話の内容は、これで持ちきりだろうな···。
俺って意外と記者の才能あるんじゃない? こんなスクープ、そうそう見つかるもんでもない。あ、でも、これ自分でまいた種か! 最悪のスクープ記者だね!
どーでもいいことを考えて自主勉タイムを過ごすと、朝のホームルームだ。
これがいちばん嫌いだ。俺の場合何処でもホームルームは出来る。なぜなら空気扱いだからだ。
俺は空気中なら何処でもホーム!
自分で言って悲しくなってきた。こんなこと考えるのやめよう。
ホームルームもすぐ終わり、さて、教科書取りに行くかぁと思い立ち上がろうとしたとき。
俺の所属する三年三組のドアが開け放たれた。ガツーン、といって開いたドアから、一人の女の子が現れる。
その瞬間、俺以外のクラスメイト全員が凍りついた。
彼女は一組のアイドルである。こんなところに来るはずがない。そう思って、全員の動きが止まったのだろう。
そう、入ってきたのは、学校一の美少女青澤 葵だった。
すると、クラスメイトの一人が動き出した。三組のリーダー的存在、銀 大義だ。
「どうしたの、青澤さん?」
持ち前のリア充スキルを利用して、気さくに話しかける。
「私、白川 勇雅君に会いに来たんだけど」
なんか俺の名前が聞こえた気がする。まぁ、気のせいだろう。青澤ともあろうお方が俺の名前を呼ぶ訳がない。
多分リア充は俺の名前なんかゴミとしか思っていない。「呼んだら肺と喉と口が腐るーw」とか影で言っているに違いない。
だから、俺は机に突っ伏した。恐らくこれからリア充同士の茶番が始まるのだ。
そんなものを見ていたら、目が腐る。
ドサッと頭を机に落とし、目を瞑る。あ、おちる。ねぇーむぅーいぃー。
まずい、眠ってしまっては授業に遅れる。ああ、でも上は向きたくない。どうしよう。はぁ。全部青澤のせいだな。授業に遅れても、アイツのせいにすればいい。
そのまま眠ってしまえ。ガクッ。
と、そのときだった。何やら扉の前で争っていた声が静まり、こちらに歩いてくる音が聞こえてくる。
な、なになに? 起こされるの?起こされちゃうの?と、ドキドキしていたら、頭をはたかれた。
スパーン! といういい音と共に、俺の頭に痛みが走る。誰だか知らんが、全力ではたきやがった。
誰だよ······と思って顔をあげると、そこには青澤の顔があった。
おお、やっぱり美人だなぁ。じゃなくて。
青澤は俺の方を見て微笑んでいた。しかし、目は笑っていない。
美人が怒ると、それだけ迫力があると聞いたことがあるが、本当だったようだ。
「あ、あのー、なんか用ですか」
聞いてみたが、何となく理由は分かっちゃいる。恐らくラブレターの事だろう。何であんなやつの所に入れたんだ、とか言われるのかな?
軽い気持ちで考えていたら、事態は以外と深刻だった。
「一時間目、保健室に来て」
ドスのきいた声で耳元に囁かれる。
え···。これって、「後で校舎裏に来いやぁ」ってやつと何が違うの? あ、一緒? だよね。わかってました。
「なん、なんで?」
なんとか聞くと、青澤はこちらをぎろっとにらんだ。言わなくてもわかるだろ? と言わんばかりの迫力だ。
「わかりました。すいませんでした」
即座に謝り、命令を了承する。
すると、青澤はフンッと言って教室から出ていった。
なんだったんだ。保健室で何をされるのだろう。注射で毒薬とか打たれるのかな? 俺まだ死にたくないんだけど。
とにかく、そろそろ一時間目が始まる。俺は教卓の所に行き、教師に「体調が悪いので保健室に行ってきます」とだけ告げると、教室を出た。
教室棟を出て、管理棟に向かう。
俺の頭の中は、不安でいっぱいだった。
最後までお読みいただきありがとうございました!