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幼馴染は御曹子 番外編   作者: 小鳥遊 郁
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蓮との結婚式まであと7日。

その後に組み込めれている新婚旅行のために蓮は休みもなしで、夜遅くまで働いている。何かしてあげたいけど、わたしにできることは笑顔で「おかえり」と迎えてあげることだけ。夕飯もすませているし、朝も早いので挨拶だけので終わってしまう。ユカがいなければまた違うけど、隣にユカがいるからイチャイチャするわけにもいかない。


「聡はまだ来ないのか?」


八つ当たりのようにユカに聴いてるけど、ユカの方は席を外すわけでもなくわたしたちの邪魔をする気満々だ。


「ふん、金髪の秘書相手にどうせ忙しいんでしょ。聡が金髪好きとは知らなかったわ」


「そういえばお前と別れた時に付き合ってたのって、金髪だったな」


蓮が余計な一言を言ってせいでユカの目はつり上がった。ユカと高木さんが一時期別れたことがあるというのは聞いていたけど、その間に高木さんに彼女がいたことは知らなかった。どのくらいの期間別れていたのだろう。


「仕方ないだろ。二年も別れてたんだ。彼女の一人や二人いるさ」


「…それはわかるけど、私は誰とも付き合っていないのに…」


「確かに彼氏はいなかったけど、ユカだっていろんな男とデートしてたじゃないか」


「ふっ、蓮と一緒よ。蓮だってこの十年、恋人は作らなかったけどいろんな女とデートはしてたじゃない」


「ば、馬鹿言うなよ。あれはそんなんじゃないから……やっぱりユカは俺たちの結婚の邪魔をしようとしてるだろ」


蓮は慌ててわたしに弁解しているけど、蓮がわたし以外の女性とデートしていることは知っている。わたしと蓮は十年も音信不通だったわけでその間に恋人の一人や二人いてもおかしくない。いや、むしろいない方が変だ。蓮は優良物件だし女が放っておくわけがない。結婚してからだって誘惑は多いだろう。蓮が浮気をするようなことがあってもその相手がユカじゃなかったら許してしまうかもしれないなって思う。そうわたしが気になるのはユカだけだ。蓮がもし浮気をしてもわたしのところに帰ってくるって自信がある。でもその相手がユカだったら、蓮は帰って来ない気がする。


「やだ、なっちゃん泣きそうな顔して、嘘に決まってるでしょ。蓮はなっちゃん一筋なんだから」


「そうだ。ユカは冗談が好きだからな。本気にとるなよ」


蓮とユカに慰められてもなぜか涙は止まらない。これがマリッジブルーなのか。

二人がわたしを裏切ることはないとわかっていても、もう昔とは違うって理解したのにそれでも二人を信じきれない自分が嫌いだ。蓮はあの事故の時のことを謝ってくれた。わたしが怪我したことに気付いてなかったから間違えてしまったと。わたしを忘れていたわけではない。大丈夫だと勘違いしただけ。

もしあの間違いがなければわたしは蓮と結婚していただろうか。あの頃のわたしは今よりも自信がなかった。いつもユカと自分を比べていたような気がする。二人と違う大学を目指したのも比較されることに疲れていたからだ。だからきっとあの事故がなくてもうまくいかなった気がする。

今のわたしなら大丈夫? 今だって自信はない。愛されていることはわかってきたけど、まだ足りない。欲張りになったもんだ。あの頃のわたしならそれで充分だったのに。


「ユカは高木さんが来たらホテルで暮らすの?」


「そのつもりで予約してるわよ」


「そっかぁ。じゃあ、一緒に暮らせるのもあとわずかなんだ」


「そうよ。今度こそ日本へはしばらく帰って来れないから、明日も買い物付き合ってよね」


「え? まだ買うものがあるの?」


「私って外国に旅行したことはあるけど暮らしたことはなかったから、暮らしだして気付いたものがたくさんあるのよ。日本の製品が全く手に入らないわけではないけど、ないものっておおいのよね」


ユカは慣れない外国暮らしで日本がやっぱりいいなって思ったらしい。住んでいると気付かないけど、離れたらいいとこが見えてくるんだよね。

ユカは高木さんのことも離れてみて気付くことがあったようだ。


「ユカは聡とアメリカに帰る気になったんだな」


「あの時は頭に血が上って日本に帰って来ちゃったんだけど、今は反省してる。金髪の秘書が色目を使ってるから、仕事だって聞いても信じられなくなってた。英語が話せても住んだことはなかったから、カルチャーショックなことばかりで自信もなくなってたしね」


ユカはいつも自信満々でいるから、そんな悩みを抱えているとは思っていなかった。わたしだってアメリカに住み始めた時はホームシックにかかったんだから、ユカだって大変なのに気付いてあげられなかった。友達なのにわたしはまだまだユカのことをわかっていないようだ。


「アメリカで嫌なことがあったら電話してよ。遠いから何もできないかもしれないけど何年もアメリカで暮らしてたからアドバイスくらい出来るよ」


「次はそうする。なっちゃんも日本に帰ったばかりで大変だと思って電話しにくかったんだよね」


わたしの言葉に嬉しそうに微笑むユカ。それを見て心配そうに蓮が言う。


「ユカ、時差は考えて電話しろよ。夜中にかけてくるなよ」



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