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幼馴染は御曹子 番外編   作者: 小鳥遊 郁
6/12


結婚式まであと20日。

ユカとの共同生活は思っていたより快適だ。

人に任せて自分では何もしないところは蓮と同じだけど邪魔をしてこない分、ユカの方が良い。その代わり蓮は料理が得意だ。わたしは基本的に料理の才能はないので惣菜を買ってきて並べるだけだ。ユカは一応料理教室に通ったことがあると言ってるけど一度もキッチンに立たないので料理が作れるとは思えない。


「この牛のほほ肉は美味いな。このソースが抜群だ」


蓮が夕飯を食べながら感想を言ってくれるけど、自分で作ってないのでドヤ顔はできない。どう返事をしようか悩んでいるとユカが答えてくれる。


「そうでしょう? これはパルザホテルのフレンチなの。ここはソースが最高なのよね」


なんとデパ地下ではなくホテルの料理だったらしい。きょうの夕飯のメインは任せてと言ってたから頼んだけど、まさかホテルの料理だったなんて。でもこれって届けてもらってたけど誰が届けてくれたのかしら。まさかホテルの従業員じゃないわよね。


「ああ、あそこのか。うん、やっぱり美味いな」


庶民派のわたしからするとこういう料理は年に一度で良い。コロッケはカニクリームコロッケよりポテトコロッケの方が好きだ。ほほ肉の隣に置かれているカニクリームコロッケを見ながらため息をついた。

ご飯とポテトコロッケと漬物があればそれだけで良いのに。こんな贅沢をしていたらウェディングドレスが着れなくなりそうだ。


「どうした? 食欲がないのか?」


「ううん、美味しいよ。ただ少し量が多いみたい」


蓮に残りを渡すと嬉々として食べてくれる。


「なっちゃんはもっと食べた方が良いのに」


「ユカと違って食べ過ぎるとすぐに肉になるから気をつけてるのよ」


ユカは痩せの大食いというかいくら食べても太らない体質だからわたしの気持ちはわからないだろう。ウェディングドレスを着た時にお腹がポッコリだけは避けたい。


「結局披露宴は一回にしたんだって?」


「ああ。二度もやってると新婚旅行に行けなくなる。ホテルだと無理なんで船を貸し切って船上で披露宴をすることにした」


初めにこの話を聞いた時は絶句した。でも詳しく聞いてみると披露宴は一回ですむし、船上だとわたしだけが目立たなくて良いことに気付いた。披露宴に参加する人はわたしに興味があるわけじゃない。朝比奈家の披露宴に参加することが大事なのだ。船上だと参加する人もわたしに群がる必要はない。各自楽しめるように考えられている。


「船上の花嫁かぁ。憧れるわ~」


「結婚式は教会でするから船上の花嫁ってわけじゃないのよ」


「あら、そうなの? でもお色直しはあるんでしょ? どんなドレスを着るの? それとも着物かしら」


ユカの白無垢姿は綺麗だった。あれを先に見たせいか蓮が白無垢にこだわって大変だった。教会での式だからと言ってウェディングドレスに落ち着いたけど、お色直しで一回は着物姿を披露することになっている。船の上で着物姿ってどうなのかなって思わないでもないけど仕方ない。


「ほとんど俺が選んでるから、菜摘に似合うものばかりだ」


「あ~失敗した。私も一緒に選びたかったわ。蓮より私の方がセンスがあるのに」


「何を言ってるんだ。菜摘の衣装は俺が選ぶに決まってるだろう? ユカに譲るわけないにはいかないね」


あれだけの衣装の中から選ぶのは正直大変なんで蓮が選んでくれた時はホッとした。


「でもウェディングドレスだけは自分で選んだのよ。まだ蓮には見せてないの」


わたしがユカにそう言うとユカが笑った。


「本番までは内緒なのね」


「そうなるわね」


蓮は不満そうな顔だけどこれだけは譲らなかった。一生に一度しか着ないウェディングドレスは自分で選びたい。そう言って説得した。


「そのかわりウェディングドレス以外は俺が選んだ。菜摘に一番似合うものにしたからな」


「ところで蓮は何を着るの?」


「俺はスタッフに、菜摘のドレスに合うように選んでもらったよ。自分のはどうでもいいけど菜摘の衣装にあってなかったら嫌だからな」


蓮は背が高いからなんでも似合う。きっと白のタキシードも似合うだろう。この場合わたしが選ぶべきか悩んだけど、サッサと蓮がスタッフに頼んでいたので何も言えなかった。まあ、男の人はそれでいいのかもしれないね。

ユカは結婚式や披露宴の話が楽しいのか蓮が帰るまで質問していた。おかげでわたしが教えてもらっていなかった事までわかった。船上で披露宴をすることは聞いてたけど詳しいことは聞いていなかったことに気付かされた。自分の結婚式なのにこれではいけない。


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