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幼馴染は御曹子 番外編   作者: 小鳥遊 郁
3/12


「菜摘、すまない。アメリカに帰るように説得したんだが駄目だった。あとは高木に任せよう。きっと明日にでも迎えに来るだろう」


蓮はユカの説得は自分では無理だと諦めたようだ。わたしにしても蓮にしても小さい頃からユカの我儘に付き合っていたせいか、ユカに逆らうことがなぜかできない。しょうがないなと譲ってしまう。


「高木さんからのメール見てないの?」


「ああ、まだ見てない。でもあいつの事だから今頃は飛行機の中だろ」


「そうでもないみたいよ」


わたしの答えに蓮は眉を寄せてスマホでメールを開く。

多分わたしのところに来たメールと一緒の内容だろう。ため息が出るようなメールだった。喧嘩の後始末は自分たちでしてほしい。


「何だこれは。俺たちに預けるって本気で言ってるのか?」


「なんか忙しいみたいね。とても日本に帰れないって書いてあったわ。新婚旅行でかなり休んでるし、仕方ないよ」


社長の息子だと言っても会社の一員なのだから働かなくてはならない。仕事が暇なら休暇も取れるけど忙しいのなら妻と喧嘩したくらいで長期休暇は取れないだろう。


「ユカが泣いてるんだぞ。それなのに帰ってこないヤツはユカの旦那にはふさわしくない」


「えー? じゃあ、忙しい時に自分の部下が奥さんと喧嘩したから休みをくれって言ったらあげるの? 蓮の部下に話を聞いてみようかしら」


蓮の部下と話をしたことはないけど、日本企業は長期休暇が取れるほど甘くない。そんなものをとったら出世からは外される。蓮の部下だと出世コースを走ってる人たちだから長期休暇を取るなんて考えたこともないだろう。


「そ、それは、話が違うだろう」


「同じだよ。蓮はユカだから怒っているだけでしょ」


「菜摘は冷たい」


「はぁ?」


「幼なじみが困ってるんだから、ユカの味方になるのが本当だろ。高木の味方をするなんて冷たい」


拗ねたような声で言われても困る。わたしは間違ったことは言っていないはずだ。


「別に高木さんの味方をしてるわけじゃないけど、高木さんの言い分もわかるもの。ユカが蓮のカードで買い物をしたら嬉しくないって気持ちわかるよ。蓮だってわたしが高木さんのカードで買い物したら嬉しくないでしょ」


「菜摘は俺のカードも使わないからな。高木のカードで買うくらいなら俺のを使ってくれ。でも俺は別にいくらでもカバンでも何でも買っていいぞって言うけどな」


そう言うことを言ってるんじゃないけど、蓮には何を言っても無駄かもしれない。男のプライドとかわからないのかな。

わたしがため息をつくと蓮が近くに寄って来た。


「何か欲しいものがあるのか? 服とか買いに行こうか」


「服はこの間買ったので十分よ」


正直服を買ってもらうのには抵抗があった。でもこれから蓮の隣に立つのなら、手持ちの服が駄目なのはわかるし、自分のお金で用意しようと思えば何着も買うのは無理だ。それに自分のお金を全て使ってしまうのは怖い。蓮と結婚しても自分のお金は持っていたい。そんなわけで服や鞄や靴をこれでもかというほど買って貰った。


「そうだな。服は新婚旅行中でも買えるからな。じゃあ、宝石は? そうだ、腕時計もいくつか欲しいな」


同じ腕時計をいつもしているのはあり得ないそうだ。こういう感覚にいつかは慣れるのかな。

結局、蓮に説得されて買い物に行くことになった。

買い物に行くのに部屋着で行くわけにはいかないので、この間買って貰った服に着替える。


「ユカはどこのホテルに泊まってるの?」


「聞くの忘れてたな」


ユカの両親はヨーロッパの方で暮らしているのでホテルに部屋をとっているのだと思う。


「長くこっちにいるのなら部屋がいるよね。ホテルだと落ち着かないでしょ」


「そうかなぁ。ホテルは掃除もしてくれるし便利じゃないか?」


蓮は長期の海外出張の時はいつもホテルを利用してるけど不便な思いはしてないらしい。わたしは旅行でホテルに泊まってもゆっくり眠れないのに蓮は気にならないのか。これも慣れってことなのかも。


「とにかく部屋を用意しないと」


「うーん。余ってるマンションはあるけど、家具とか揃えるのに時間がかかりそうだ」


「家具って、全部揃えるつもりなの? 一ヶ月後にはアメリカに帰るのにもったいないわよ」


「ユカが使わなくなったら家具ごと売ればいいから勿体無くないよ」


蓮が揃えるというからには一流の家具を買うに決まっている。わたしの部屋の家具だって高級家具だった。あっ、そうだ! その手があったか。


「そうだよ。ユカはわたしと一緒に隣で住めばいいのよ。部屋は余ってるしちょうどいいわ」


「一緒に住むって、俺は? 俺はどうなるんだ?」


「結婚まで一ヶ月なんだし、離れて暮らす方が良いと思ってたのよ。その方が新鮮な気持ちで新婚生活を迎えられるって彩乃が言ってたの」


「そんな…、やっと一緒に暮らせるようになったのに…」


蓮は大きなため息をついてソファに倒れる。ここでいつもならわたしの方が折れてしまうけど、今日は無理。ユカに優しい蓮を見たせいか優しくはなれそうもない。


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