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幼馴染は御曹子 番外編   作者: 小鳥遊 郁
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間違えて番外編ではない本編を投稿しておりました。

ご指摘されるまで気づかず申し訳ありません。

8話と9話は変更しています。

あと少しで終わりますが最後までよろしくお願いします。


 夜更けからずっと雨が降り続けている。こういう日は、決まってあの時の夢を見る。

 蓮との初めてのデートの夢だ。夏休みはずっと一緒にいれたのに九月になってから、二人で会える日はほとんどなかった。だから今日のデートは待ち遠しくて仕方なかった。

 待ち合わせの場所へは三十分も前に到着した。早すぎたのはわかっていたけど、待つことすら楽しかった。

 時間が過ぎても蓮は現れなかった。蓮は呑気なところがあるから、遅れてくることは想定内だ。

 待っている間に空が曇っていくのには気付いていた。傘を買ってこようか悩んだ。けれど一番近いコンビニも十分は歩かなければならない。その間に蓮が来たらと思うと足が動かない。

 メールを送ったが返事は来ない。何かあったのか不安になってくる。

 そのうちに雨が降り出した。そうこの時に帰ればよかったのだ。どう考えても蓮の方が悪いのだから、帰るべきだってわかっているのに...。

 約束の時間は十時。もうすぐ十二時になる。帰った方がいいのはわかっているのに、なぜか帰ることが出来ない。

 そしてこの一時間後にメールが届くことを今のわたしは知っている。雨で全身ぐっしょりと濡れていた。もう意地だけで待っていた。


『ごめん、今日はなしにしてくれ』


 たった一行の短いメールだった。足が何故か痛む。あの頃のわたしは足が痛むことはなかったはずなのに痛い。

 今のわたしは知っている。この時蓮がどこにいたのか。わたしが雨の中待っている間にどこで何をしていたか。だから足が痛むのかもしれない。



 目が覚めた時、涙が流れた。


「あの頃のわたしって、ホントにバカだった」


 ああ、雨が降っている。だからあんな夢を見たのね。雨のせいか足が痛むので痛み止めを飲む。

 結婚式は明後日だ。結婚式の日は晴れるといいなぁ。なるべく座れるようにはなっているけど、雨の日にずっと立っているのはキツい。

 蓮はあの日、わたしがずぶ濡れになった事を知らない。わたしは雨が降り出す前に帰ったと言ったからだ。本当のことを言うにはプライドが邪魔をした。彼がユカと一緒だった事を知ったから余計だ。

 ユカと高木さんはまだ仲直りができていない。ユカが意地を張っているからだ。仕方がないので今日はわたしと一緒に高木さんが滞在しているホテルへ訪ねる予定だ。

 わたしの車で行こうと思っていたけど、雨が降っているのでタクシーで行くことにした。それにしても高木さんが折れないなんてどうしてかしら。結婚前は喧嘩をしても、謝るのはいつも高木さんの方だったのに。

 結婚した途端にこんな風に変わってしまうなんて、やっぱり結婚っていいものじゃないのかも。


「あれ? タクシーで行くの?」


「そう、雨が降ってるから...」


「まだ雨が降ると足が痛むのね。言ってくれたら私が運転したのに」


「ホテルまでだからタクシーにしたの」


 タクシーの後ろ座席に二人で座る。雨が激しく前が見えにくいくらいに降っているので、自分で運転しなくて良かったなと思った。


「高木さんには電話したの?」


「うん。でも今から行くことは言ってない」


「ホテルにはいるのね」


「そう言ってた」


 これだけの雨だから外出することはないだろう。タクシーの運転手さんはおしゃべりが好きみたいで、ユカと色々話している。わたしとしてはもっと運転に集中してほしい。でも最近笑わなくなってたユカが笑っているからいいか。

 運転手の話は芸能界やテレビの話が多く、わたしには何がおかしいのかわからないけどユカが夢中になっているくらいだから、結構有名な人の話のようだ。

 わたしはおかしくもないのにユカに合わせて適当に笑っていた。だからわたしも気付いていなかった。信号無視をした車がスピードの出し過ぎで突っ込んでくることに....。

 タクシーの運転手はできるだけ避けたが、避けきれるものではなかった。

 ガッシャーンという音と衝撃で気を失った。人生で二度も同じことがおこるなんて.....。蓮のわたしを呼ぶ声が聞こえた気がした。


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