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姉×妹! 超絶ブラコン短編集  作者: 飛ケ谷隼人
第1章
9/12

第8話 夜這い ~柚乃ルート 1~


 とある真夜中のこと。


 一人の少年がすやすやと寝息を立てている部屋で、

 ガチャ、っと本来この時間で聞こえるはずがない音が部屋に響いた。


 「し、しし、失礼します!」


 すでに顔を真っ赤にさせていた訪問者は、とてもぎこちなさそうに部屋に入る。

 ドアを閉めて、一度その場で硬直すると、再びぎこちない足取りで一歩一歩進む。


 「……お姉さんは……いないよう……ですね」


 彼女はそう呟くと、ふと少年の寝顔に視線を奪われる。


 「……お兄ちゃん……寝顔、かわいすぎます……」


 お兄ちゃん、と呼ばれた少年は他でもないこの作品の主人公、花ヶ丘春菊だ。

 そしてお兄ちゃん、と呼び春菊の寝顔を緩み切った顔で見ているこの少女は、 

 花ヶ丘家次女である、柚乃であった。


 しばらく柚乃が春菊の寝顔を堪能した後、柚乃は顔を赤くしたままぶんぶんと首を振った。


 「ち、違います私! 今日は、お姉さんが夜這いしている犯行現場を

 現行犯で捕まえることです! べ、別にお兄ちゃんと一緒に寝ることじゃありません!」


 多少声を荒げながら、柚乃は自分自身に向けてそう言い聞かせた。


 「さ、さあ! いつでも来てくださいお姉さん!

 今日こそは、私がお姉さんの夜這いの現行犯を、必ず押さえて見せます!」


 そうして柚乃はちらちらと春菊の寝顔を横で眺めながら、 

 ひたすら真夜中の中菊乃がやってくるのを待っていた。




 「…………全然来ません……」


 時刻は一時を過ぎており、もう一日が明けていた。

 そして柚乃も、普段は来るはずの菊乃が来ないことに少し困惑と疲労を感じていた。

 まあ一時間ほどずっと見張っていたのだ、無理もないだろう。


 「はぁ……お姉さんは本当に夜這いなんてしてないんでしょうか……?」


 柚乃がだんだんと思考が回らなくなってきて、瞼も少し重く感じ始めていたころ。

 その頃、またしても、春菊の裏の顔が、ひっそりと影を潜めていた。


 「今日はもう……帰りますか……さすがにお兄ちゃんの部屋にずっといるのは

 体がもちませんし……」


 さも当然のようにそう言いのけた柚乃は、少し残念そうに顔を曇らせて、

 その場から立ち上がろうとした、


 その時だった。


 「……待てよ」


 「へ?」


 柚乃のか細い腕に、大きな手が、指がその腕に絡まる。


 「お、お兄ちゃん?」


 「……柚乃……何でここに……いるの?」


 「お、お兄ちゃん!? 起きてるんですか!?」


 そう叫び柚乃は春菊から距離を取ったが、春菊はすーすーと寝息を立てている。

 柚乃は多少のパニックに陥っていると、今度は春菊から話しかける。


 「……柚乃……柚乃も俺の……夜這いに来たのか……?」


 「ち、違います! 私はただお姉さんの犯行現場を押さえようと……」


 「……本当にそれだけ……?」


 「ふぇ?! そ、そうですよ……私は別に、お兄ちゃんの夜這いなん……か」


 「……じゃあ、柚乃、部屋に帰りなさい」


 「ふぇ……?」


 春菊はそう言うと、掴んでいた柚乃の腕をそっと離した。

 その行動に、柚乃はどこか泣きそうな表情を浮かべていた。


 「……菊乃姉さんは……今日は来ないから……大丈夫だ」


 「今日は、って……いつもは来てるんですか……?」


 「……さあ……柚乃には……関係ないだろう……」


 「そ、そんなこと……!」


 「……それより、柚乃……早く部屋に戻りなさい……もう時間も遅いぞ……」


 春菊はそう促すと、柚乃に背を向ける形で寝返りを打った。

 それに、柚乃はもう我慢できなくなったのか、瞳から一粒二粒、

 涙が頬を伝っていった。


 「……どうしたの……柚乃……早く部屋に戻らないと……」


 「うぅ……だ、だってぇ……ひっく……お、お兄ちゃんが……ひっく……

 私のこと……いじめ……るからぁ……」


 言葉を発するたびに嗚咽を漏らす柚乃を横に、春菊はさらに捲し立てる。


 「……柚乃は……どうしたいの……」


 「うぅ……わ、私……?」


 「……俺のとこに……来たかったんじゃ……ないの」


 「へぇ?! そ、それはちが……!」


 「……見張ってたって言ってたのに……こっちのこと、ちらちら見てたよね……」


 「しょ、しょれは!」


 盛大に噛んだ柚乃は、瞳を潤しながらじっと春菊を見る。


 「……じゃあ、言ってごらん……」


 「ふぇ……?」


 「……むっつりで変態な私は、お兄ちゃんのところに夜這いに来ました……って……」


 「ふぁ!?///」


 柚乃は顔を真っ赤に染めて、口をはわわとぱくぱくさせている。


 「……ほら、言ってごらん……」


 「や、やだよ……は、恥ずかしいもん……」


 「……じゃあ、部屋に帰って……ほら……」


 「うぅ……そ、そっちの方がやだっ!」


 叫ぶようにそう言うと、若干ではあるが裏の春菊は口角を上げた。


 「……じゃあ……言って見て……」


 「うぅう……言ったら……どう、するの?」


 「……そうだな……ご褒美を……あげる……」


 「ご、ご褒美?」


 「……うん……早く……言って……」


 「うぅ……」


 そして、少しの葛藤の後、柚乃はとても恥ずかし気に顔を真っ赤に染めながら言った。


 「む、むっつりで……変態な私は、お、お兄ちゃんのところに……夜這いに来ました……」


 言い終えた後、柚乃は再び瞳に涙を浮かべて顔を手で覆った。


 「……うん、合格だ……じゃあ……ご褒美……」


 春菊はそう言うと、今度は強引に柚乃の腕を引き寄せて、

 自分のすぐ隣に柚乃を寝かせた。


 「……ほら……ご褒美……だ……」


 「お、お兄ちゃぁん……」


 「……朝まで……こうだ……」


 「お兄ぃちゃあん……えへ、えへへへ……」


 だんだんと、今度は柚乃の裏の顔が出てきてしまった。

 そしてそれと比例するように、今度は春菊の裏の顔がだんだんと薄まる。


 「……ゆ、の……今度……また来たら……これ以上……のこと……する……から」


 「ほ、本当……?」


 まるで子犬がエサをもらう時のような表情になると、再びえへへと顔を緩ませた。


 「……今日は……もう……おや……すみだ……」


 「ふぇ?」


 そうして、間もなく、春菊は再び大きな寝息を立てた。


 「お、お兄ぃちゃぁん……」


 そして、甘ったるくそう囁いた柚乃は、自分から春菊に近づくと、すんすんと匂いを嗅ぐ。


 「お兄ちゃんの匂い……最高……えへ、えへへへ……」


 

 そうして、長い長い真夜中の出来事は、ひとまずは幕を閉じた。


これから”夜這い”をシリーズ化してみようかなと思います!

理由は単に、面白そうだからです!

基本的に菊乃と柚乃のルートで進行していきます。


あと、ブクマ、感想ありがとうございます。

これからブクマが0になってしまうまではやっていくつもりですので、

是非是非お気軽に読んでいってください! では!



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