第6話 夜這い ~菊乃ルート 1~
とある、真夜中のこと。
外方はすでに真っ暗で、星の光りやビルの灯りがかすかに窓から差し込む。
時間はすでに午前一時を回っており、花ヶ丘家も一人を除いて全員が床についていた。
そう、一人を除いては……
「おじゃましまぁ~す……」
ガチャっと静かに部屋のドアを開け、訪問人はそろりと部屋に入る。
その部屋では一人の男が静かに寝息をたてながら、時々右へ左へと寝返りを打っていた。
「は~る~ちゃん? 起きてますかぁ?」
訪問人、菊乃は自分の部屋から持ってきたのであろう枕を腕で抱えながら、
男、もとい春菊の頬を指で優しくつつきながら聞く。
「……んん…………」
春菊は一度頬をつつかれ反応したものの、すぐにまた深い眠りへと落ちていった。
「ふふっ……春ちゃんの寝顔、かわいいなぁ~……」
菊乃は春菊の寝顔をまじまじと見ながら顔を赤く染め、手を頬に添えた。
「それじゃあ春ちゃん? 今日もぉ~よろしくおねがいしまぁ~す……」
春菊が起きないように静かに春菊に挨拶すると、
菊乃は慣れた手つきでそろそろといともたやすく春菊のベッドの中へと侵入した。
「はぁう~~あたたかぁ~い~~」
菊乃はベッドに侵入してからすぐに、ふやけきった顔でそう呟いた。
菊乃の隣には春菊が気持ちよさそうに寝息をたてながらすーすーと寝ていて、
春菊の温かみもあるのかベッドの中はとても暖かった。
「今日も春ちゃんにあたためてもらいながら寝れるなぁ~お姉ちゃん嬉しいよぉ~」
春菊に向けた言葉は、もちろん聞き手が眠っているので届くはずがなかったのだが、
菊乃はとても満足そうに春菊の寝顔を眺めていた。
「……私も早く寝ないと…………ふぁあ!?///」
菊乃がそろそろ寝ようと目を瞑ろうとしたその時であった。
菊乃の耳に、物凄く熱い吐息と言葉が瞬間に広がる。
「きく……ねえ……さん……」
菊乃はすぐに春菊の方に目を向けるが、春菊はすやすやと気持ちよさそうに眠っていた。
しかし、菊乃は顔を再度赤く染めると、今何が起こったのか頭の中で理解した。
「春ちゃん……寝言はずるいってばぁ……」
そう。
人間には必ず、表もあれば、裏もある。
それは誰一人として例外なく、もちろん今眠っている春菊もそうだ。
春菊は起きているときと眠っているときで、表と裏があるのだ。
「……菊姉さん……そんなところで何やってるの……?」
「ふぇ!? そ、それは……春ちゃんのところに……夜這いに来ましたぁ……」
「……まったく、菊姉さんは……そんなはしたない……女の子なんだね……」
「ち、違うよぉ?! 私は春ちゃんとじゃないと……一緒に眠れないからぁ……」
「そんなんじゃ、お姉さん……失格だね……」
「う、うぅ~~……」
そう。
春菊は、夜、深い眠りにつくと……無意識で性格がサディストになるのだ!
そしてその秘密は、春菊自身も知る由がないのだが、
たった一人だけ、その秘密を知っている者がいる。
その人物とは……
「春ちゃん? はしたない女の子でごめんね?
私、春ちゃんのためだったらどんな女の子にもなってみせるからね?」
その人物とは、今隣ですやすやと眠っている春菊に対して、
涙目で必死にそう訴えている、他でもない花ヶ丘菊乃だった。
「……そう……だったら今ここで服……脱いで」
「ふぇぇえ!? は、春ちゃん、それはさすがに……///」
「……なに、できないの……今さっきのは……ウソだったの……」
「そ、それはぁ~……」
「……じゃあ、ウソをついた罰として……今ここで服……脱いで?」
「そぉ、そんなぁ~……」
春菊にそう言われ、菊乃は涙を目に浮かべながら、頬を真っ赤に染めている。
「ほ、本当に、その……脱ぐのぉ?」
「……なに? 俺の言うこと……聞けない?」
「う、ううん! 春ちゃんの言うことだったら、なんでも聞くよぉ?」
「……そう……だったら、今すぐ脱いで……」
「はぁぅ……わ、分かったよぉ~……」
春菊に言い責められ、菊乃はパジャマのボタンを一つずつ外していく。
そして数分後、菊乃はブラとパンツだけを身に着け後はすべて脱ぎ捨てた。
「……やればできるんだね……菊姉さん……」
「う、うん……で、でも……こんなことするの……春ちゃんだけぇ……だから……」
「……そう、でも……まだ全部脱いでないよね……」
「ふぇ!?」
「……ほら……まだ残ってる……」
「は、春ちゃぁん~……私、この姿とっても恥ずかしいんだよぉ?」
「……そう、恥ずかしいの……」
「う、うん……」
「……じゃあ、いいよ……」
「ふぇ?」
「……だって、恥ずかしんだろ……」
「う、うん……」
「……だったら、恥ずかしい菊姉さんの……いや、菊乃の姿……ずっと見たい……」
「は、春ちゃん~~!」
「……でも、今度またウソついたら……全部……脱がせるから……」
「は、はい……」
「……じゃあ……今日はここまでだ……」
「……え?」
「……今度……こそ……ぜん……ぶ、ぬがせ……か……」
そう言い残して、裏の春菊は影を潜め、再び静かな寝息を立て始めた。
「春ちゃん……強引すぎだよぉ~……」
菊乃は、顔を真っ赤にさせながら、幸せそうにそのまま眠りについた。
「な、な、な、なんですかこれはぁーーーーー!」
「ご、誤解だーーーーー!」
翌朝、下着姿の菊乃が幸せそうに春菊の腕にしがみつきながら
すーすーと寝ていたことに、またひと騒動起こるのは必然的なことだった。
「は~るちゃん……だいしゅき……むにゃむにゃ……」
書いてる途中から暴走してしまった私がいました……
何度でも言います。
こんな作品を作って本当にすみません!