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姉×妹! 超絶ブラコン短編集  作者: 飛ケ谷隼人
第1章
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第3話 歯磨き

柚乃はこれから化けてくれることに期待です!


 「もう! これだからお兄ちゃんは変態鬼畜シスコン陵辱男なんです!」


 「いやだから暴言が増えてるって……」


 朝ご飯を食べ終えた後、菊乃は一度部屋へ戻り、碧はリビングでくつろぎ、

 そして柚乃と春菊は洗面台で歯磨きをしようとするところであった。

 

 朝ご飯では菊乃が色々とやらかしたので、もはや朝ごはんどころではなかったのだが、

 柚乃は頬を膨らませて、春菊に目を合わせないようにしていた。


 「……なあ、柚乃?」


 「なんですかお兄ちゃん……いえ、変態鬼畜シスコン陵辱男さん?」


 「いやその呼び方は疲れるだろうしメンタル的にきついものがあるからやめような!?」


 「いいえ、変態鬼畜シスコン陵辱エロ魔人さんにはこの名前がお似合いです」


 「さっきより酷くなってる!?」


 「……お姉さんに弱いからって……あそこまで露骨に見せられたら……さすがにへこみます」


 小言で呟くと、案の定春菊がなんだって? と言ってきたので、

 柚乃はそれを無視してそのまま歯ブラシを取って歯磨きを始めた。


 「全く、お兄ちゃんには危機感というのが足りなさすぎます」


 「は、はぁ……」


 「お姉さんがああいう性格だって言うのはもう一緒に住んでて分かってるはずですよね?」


 「は、はい……」


 「だったらああいう展開になるのも分かると思いませんか?」


 「……は、はい」


 「よって、お兄ちゃんがすべて悪いんです。分かりましたか?」


 「結局そうなるのかよ!?」


 しかし、直後に柚乃の鋭い眼光が春菊に向けられ、

 春菊は渋々といった感じで納得せざるを得なかった。


 「柚乃は菊姉さんには言わないのか? やめろ~とか?」


 「言っても意味がないこと自体お兄ちゃんも分かっているはずなのでは?」


 「しつこく言えば菊姉さんも分かってもらえるんじゃ?」


 「無理ですね」


 きっぱりと言い切った柚乃は、少し複雑そうな顔で続けた。


 「お姉さんは好きなになったものに関しては誰にも負けないほどの愛情を注ぎますから」


 「そ、そうか……」


 「そうです、お姉さんはそう言う人ですから」


 柚乃はどこか困ったようにそう言ったが、声色は嬉しそうに言った。


 「でも、問題はお兄ちゃんにありますから、そこは勘違いしないでくださいね?」

 

 「へいへい、なるべく菊姉さんが暴走させないように俺も気を付けるよ」


 「だ、だったらいいんですが……」


 一通り歯磨きを終え、洗面もしっかりと済ませると、

 春菊は柚乃と一緒に洗面所から出ようとしていた。

 がしかし、柚乃は「ちょっと待ってください」っと、春菊の服の裾を掴んだ。


 「ん? どうしたんだ?」


 「お兄ちゃん、今日髪の毛がはねてますよ?」


 「ん?……ああ、本当だ。そんな寝相わるかったかな?」


 「……お姉さんと一緒に寝てたからじゃないんですか……」


 「だ、だから! それは誤解なんだって!」


 「誤解でもなんでも、一緒に寝てたというのは事実なんですよね?」


 「うぅ……まあそうだが……」


 「じゃあやっぱり一緒に寝てたんじゃないですか!」


 「自分の意思はまるでないからな!?」


 「……とにかく! お兄ちゃん、こっちに来てください!」


 そう言うと、柚乃は裾をぐいぐいと引っ張る。


 「なんだよ?」


 「私の前に座ってください! 髪がとけないじゃないですか!」


 「といてくれるのか?」


 「し、仕方ありません! このままで学校に行ってもらっても恥ずかしいじゃないですか!」


 「別に俺とお前は同じ学校じゃないじゃないか……」


 「と、とにかくです! 妹は兄の世話をする義務があります!

 よ、よって、お兄ちゃんのことも、私が世話をしなければいけません!」


 「妹ってそんな義務があるのか……」


 「はい! なのでお兄ちゃんは早く座ってください」


 「わ、わかった。よろしく頼むよ」


 春菊はそう言うと、柚乃の前にちょこんと座った。


 「じゃ、じゃあ始めますから……おとなしく、してくださいね?」


 「お、おう……」


 柚乃はおぼつかない手つきでブラシを動かすと、そのままピンと立っていた髪を

 丁寧に丁寧に直す。


 「(お兄ちゃんの髪、すごいさらさらしてる……それにほんのりシャンプーの匂いも、

 私の鼻腔をくすぐって……どうしよう、結構こうしてるの気持ちいいかも……)」


 一方、春菊は、


 「(……どうしよう、さっきから柚乃が顔を近づけてすんすんって俺の髪の匂いを

 嗅いでるんだが……くすぐったいし寝起きだから汗臭いかも……)」



 お互い違うことを考えながらもなんとか春菊の髪はセットアップされた。


 「あ、ありがとうな柚乃! また今度頼むよ!」


 「いいいいいえ! これも妹の義務ですから!」


 どぎまぎしながらも春菊と柚乃は言葉を交わすと、春菊はそのまま部屋を後にした。

 そして、柚乃は春菊が部屋を出て行くのを見ると、力が抜けたように壁にへたりこんだ。


 「はぁ~~、お兄ちゃん……」


 とても切なそうにそう呼ぶ声は、すぐに空間の空気と同化する。


 「でも、お兄ちゃんの匂い……えへ、えへへへへ……」


 柚乃は自分の指にかすかに残っていた春菊の髪の匂いを嗅ぐと、

 瞬間、ものすごくだらしない笑みがこぼれた。


 「お兄ちゃん……えへへ、だぁいすき……」


 まるで行為の事後のように、柚乃は幸せそうに、そう呟いたのだった。


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