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姉×妹! 超絶ブラコン短編集  作者: 飛ケ谷隼人
第1章
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第11話 菊乃の不満 3


 コンコン

 

 「菊姉さん、俺です。ドア、開けてくれませんか?」


 二階へと駆け上がった春菊は、真っ先に菊乃の部屋の前へと向かいドアをノックする。

 しかし、中にいるはずの菊乃は、一向に返事を返さない。


 「菊姉さん、ちょっと話したいことがあるんですけど……」


 「……知らない……もう春ちゃんのことなんて知らない!」


 「……大切な話なんだ。だから……五分だけ、五分だけお願いします!」


 「……本当に五分だけ?」


 「えっ?」


 「だからぁ、本当に、五分だけ?」


 「あ、う、うん、そのつもりだけど……」


 「じゃ、じゃあ……五分だけ」


 そう言うと、菊乃が浮かない顔をしながら、ドアを開けた。

 まさか食いつく場所が五分のところだとは春菊は思ってもいなかったが、

 とりあえず部屋に入れて一安心だ。


 「そ、それで……」


 部屋に入ってお互いの体を対面下において、正座をしながら春菊は話を切り出す。


 「今さっきは、本当にごめんなさい」


 「ふぇ?」


 突然の謝罪に、菊乃は呆気にとられたかのように春菊に視線を向ける。

 頭を下げてから10秒ぐらいしてから、春菊は言葉を一つ一つ丁寧に紡いでいく。


 「今さっき言おうとしたことと、実際に言ったこととは、多少誤りがあって、

 その誤りを、ちゃんと直してもう一回菊姉さんに伝えたかったから来ました」


 「誤り?」


 小首をかしげて「?」を思い浮かべている菊乃に、春菊は目を見据えてゆっくりと言う。


 「きょうだい同士で好きっていう感情を持つのは、異常だと思う」


 「っ……」


 「だけど! 俺らが、”普通のきょうだい”だって言うのは間違ってた。

 俺らは普通じゃなくて、”異常なきょうだい”だって、そう思った」


 「……うん、そうだね」


 「それで、この前柚乃に言われたんだ。

 間違ったままでも間違ったものを正しいと思えばそれは正しいって」


 「……うん」


 菊乃の声がだんだんと涙声になる。

 それに合わせて、瞳にはもう涙があふれんばかりに溜まっていた。


 「それで、正直に言っちゃうと、その……もう菊姉さんの想いは知ってる」


 「そ、そっかぁ~私、気づかれないようにしてたんだけどなぁ~……」


 努めて明るい感じを出そうとしていたが、その声はかすかに震えていた。


 「あんな積極的にやられたら、気づくのも無理ないですよ」


 「……そっかぁ~私、本当にどうしようもないなぁ~」


 「……だから、その想いを断ち切らせようとして、今回みたいなことしました」


 「……うん」


 「きょうだいでそんなことはおかしいって、周りからどう見られるか分からないって、

 菊姉さんじゃなくて、自分のことばかり考えていました」


 「……うん」


 「だけど、今さっき気づいたんです。

 これで菊姉さんは幸せになれるのかなって、嬉しいのかなって。

 これは、ただ単に俺だけが荷が軽くなるだけであって、菊姉さんには辛い思いを

 させるんじゃないかなって。だから」


 

 「ごめんなさい、菊姉さんの想いを踏み潰すようなことしてすみませんでした」


 そう言って、春菊は頭をさっきよりも深度を深めて下げた。


 そしてその言葉に、菊乃は溢れる涙をこらえる防波堤に、ズキズキとヒビが入っていき、

 そして瞬く間に崩壊していくのが、菊乃自身にも分かった。


 「はる……ちゃん……はるちゃん……はるちゃぁ~ん……!」


 菊乃は涙でくしゃくしゃになった顔を隠そうともせずに春菊に勢いよく抱き着いた。


 「春ちゃん! はるちゃぁ~ん!」


 そして、抱き着いてきた菊乃の背中に自分の手をそっと添えると、

 快く菊乃を受け入れ自分も抱き着く力を強めた。


 「本当に……いいんですか? こんな間違った答えでも」


 「うん……私嬉しいよ?」


 「まだ……菊姉さんのこと、そう言う風には見れないけど、いいんですか?」


 「うん……これからそう見せるように、私も頑張るから」


 「結局、菊姉さんを選ばない結果になったとしても、いいんですか?」


 「うん……それは春ちゃんが決めることだから、私はその結果を快く迎えるよ?」


 


 「後悔……しませんか?」


 その質問に、菊乃はまだ涙を拭いきれていない満面の笑顔で


 「後悔、しないよ?」


 と、抱きしめる力を強めながら、そう言った。


 「……じゃあ、増々俺たちは異常なきょうだいになったな」


 「ふふふ、そうだねぇ~でも、私絶対想いは変わらないよ?」


 「え?」


 「だって、私、春ちゃんのこと、世界で一番、大大大好きだもんっ!」


 そう言って、菊乃は抱き合ってるまま春菊の顔を面と向かって見つめると、


 「んっ」


 「はっ!?」


 チュッと、春菊の頬に熱い口付けを残す。


 「き、きき菊姉さん!?」


 「ふふ、ひとまずは、頬にしといてあげるけどぉ~

 春ちゃんがその気になってくれたら、いつでも唇にしてあげるね?」


 「そ、そういうこと……言うのは少し卑怯です」


 「うん、今の春ちゃんの顔、すっごく真っ赤だよぉ~!」


 ふふふっと笑いつつ、菊乃は再び春菊を抱きしめると顔を肩にコトンと落とした。


 「じゃあ、しばらくはこのままぁ……」


 「……もう、分かりましたよ、菊姉さん」


 「ふふ……しあわせぇ~……ふふ……」


 そうして、菊乃が眠ってしまうまで、春菊と菊乃は体を抱き合わせたまま

 菊乃の部屋で一分一分、時を過ごした。


 そして、それに比例するように、春菊と菊乃の恋のステージも、

 一段階ステージアップするのであった。


 

 「……むにゃむにゃ……はるちゃ~ん……大好きぃ……」

 


これで菊乃はひとまずは他のヒロインよりも一歩先に踏み出しました。

これからも先、よろしくお願いします!

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