一月後
更新遅れまして申し訳ございません。
2月中旬から3月末までバタバタしてました。
土日更新ですが宜しくお願いします。
「おはようございます!・・・ふぁあ」
「をっクロノス様、おはようございます。今日もお元気ですね。・・・また朝の鍛錬ご一緒しても宜しいでしょうか?」
「はい!眠気覚ましに是非お願いします」
まだ朝の日も差さない明朝“モルゲン”にあるブロア家の屋敷内にて二人の男が剣を交えていた。一人はこの屋敷に使える騎士のリカルド。もう一人はこの屋敷にきて一月になる。
・・・居候のクロノス。
特に仕事もしていないしリリーに勉強を教えてもらっていることから只の居候だろう。
まぁ領主のトムから見れば娘や騎士たちの命の恩人であり、娘の笑顔が見られるので喜々として泊めているのだが。
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リカルドさんに同行し“モルゲン”の街に到着してから一月が経った。
道中、ゴブリンやオークなどが襲ってきたが、他の人たちも疲れているうえ同行させてもらっている居候の身なので護衛を買って出た。
ここの魔物はあの森と比べると物足りなさを感じる強さだったので斬っていながらあくびが出ていた。
むしろ剣で斬ってしまうとオーバーキルも甚だしいので素手で戦っていたのだが
―――周りからは引きつった笑みを浮かべられた・・・解せぬ。そんなに驚く事かな?
約一名、リリーは目を輝かせて戦闘を見つめており、なにかリカルドさんに言っていて困れせているように見えた。
ちなみにこの森の魔物の強さは、“アークウッド森林”と“モルテ山”というこの大陸でも屈指の危険度を誇る地域の入り口だけあって、中級レベルの冒険者がパーティーを組んで挑んでいるほどの強さがあった。
そのことを考えると先程壊滅させた盗賊団たちも上位に位置する強さだったのだろう。
この世界にきて、初めて現地の人との野営をすることになったのだが、いかにコミュニケーションできる相手がいることが、嬉しいことを身に染みて感じた。
最初は警戒されていたので他の人たちが焚き木で暖をとっている場所から少し距離を置いて座っていた。
チラチラとこちらを見るので『あぁ・・・久々の人と会えたからしゃべりたいけど言葉わからないしなぁ・・・はぁ』そんなことを思っていたらリカルドさんが近くまできたので顔を上げると・・・いい笑顔でコップを突き出してくれた。
なかには酒の香りが漂ってくる。そのことに無意識だが――涙が出ていた。
それを見たアルガスやランディ含め皆、笑いながら焚き木の周りに誘ってくれた。言葉は分からなかったがこの世界に飛ばされ、あの地獄の十日間を生き抜いた後だったからかこの時間がとても幸せに感じた。
その後、何事もなく“モルゲン”に到着してブロア家に招待された。
言葉がわかるようになってから分かったのだが、森の中で助けた一行はこの街の領主家であるそうだ。屋敷についた時に男性がリリーの傍に駆け寄り号泣していた。
鑑定で見たのだがこの人が領主の【トム・ブロウ】というそうだ。
号泣した後こちらに頭を下げてきておりお礼にと夕食を共にした。
その際にリリーからの話があったのかトムがメイドから何かの本を受け取り差し出してきた。その本は昔リリーが文字を習う時に使っていたらしくこの世界の言葉で書かれていた。
まさかのお礼が夕食だけではなく言葉を教えてくれることになりこちらとしては嬉しい限りなのだが。こちらが頷くとリリーの喜びがすごかった。
華が咲き誇った笑顔を浮かべ喜んでいた。
――ま、さ、か、先生がリリー先生だとは!
教えてくれるのはリリーであり見た目中学生ぐらいであるので子供に言語を習う事に傍から見れば微笑ましい光景だろう・・・まぁ通常はこちらが教えている側だったらだ。
言葉を覚えようとリリーの口の動きをジーと観察しているのだがよくリリーの顔がゆでだこみたいに真っ赤になる。
・・・俺は地球ではロリ好きではない、ないったらない。
リリーは地球の時と比べても可愛い。将来美人になるだろう。うん。
そんなことでやっと半月ほどでコミュニケーションができるようになり一月経った頃には問題なく話せるようになっていた。
リリー先生は俺が話せる様になってしょぼーんとしてしまったので
『リリー様。次は文字を教えて頂きませんか?』
『えっ! もっ…文字ですか!? はっはい! 喜んで教えます! やったー!』
さっきまでの不安の表情から一変テンションが上がっていくリリー先生の微笑ましい光景をみて俺もブロウ様もほっこりしていた。
当分は戦闘回ではなく街の事、中心に書いていきます。