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騎士との邂逅


目の前で起きた出来事に私は驚愕した。


二頭いた馬の内、一頭の足が折れ馬車が横転し御者が投げ飛ばされる。

中にいた御方のご無事を願ったが直ぐ後ろに盗賊共が迫っていた。

馬車を囲う様に陣営を組んだが……盗賊の数が多い。

直ぐに手が塞がり残り三人の盗賊が馬車へと向かう。


「リリー様お逃げくださいっ!」


私が三人の盗賊の相手をしながら何とか声を掛ける。


馬車に乗っていたのは【リリー・ブロム】。

辺境領<モルゲン>の領主トム・ヘイセンのご息女である

『こいつらにかまっている暇はない!』

馬上から剣を、槍を捌くが……盗賊は時間稼ぎのためか殺せる間合いを外してくる。


――もうだめか!


盗賊の三人は間もなく馬車に近づきお嬢様に危害を加えるだろう。

騎士カーネルはお嬢様を守りきれなかった悔しさの為きつく唇を噛み血が出る。



「――――。――――――――――――――」



直後、この戦場を覆うような濃密な死の匂い、体に圧し掛かる重圧を感じた。

いつも間にか馬車と盗賊達の間には一人のみすぼらしい恰好の男が立っていた。

右手には黒い剣を、装備は赤黒い装備を纏っている。


全身を泥や汚れなどで汚れているため一瞬みすぼらしい格好にしか見えなかったが所々から発せられる力から明らかに只の装備ではないのだろう。

そして泥だけではなく……血が身体中に何重もかかているのだろう赤黒くなっている。


あれは……自分の血だろうか?いや、もう乾いているがあれは返り血であろう。

男は笑顔でいるつもりではいるだろうが鋭い眼光と刺すような潰れそうな殺気を放っている。

男は先程何かを呟いたようだが、ないか聞きなれない言葉を発していた。


いつも間にか、他の二人の騎士も相手の盗賊も

戦闘をピタっと止め、すべての視線がその男に向かう。



「―――――――――――――」



また聞きなれない言葉を発し頭を掻きながら邪悪な笑みを浮かべる。

『これは……まずい!!』

全身の穴という穴から汗が吹き出し今まで感じた事のないような、そんな生存本能が全力で逃げろ!と警笛を鳴らす。


「なんだこいつは?死ね!」

「ぶっ殺してやる!!」

「邪魔すんじゃねぇ!」


馬車に一番近くにいた盗賊三人が突然現れた男に襲いかかっていった。

三人とも顔が引きつっているあたりを見ると恐怖は感じているようだ。

生存本能に従って襲いかかったのだろう。


瞬く間に盗賊どもを斬り伏せ、矢を投げ返した時は戦いの最中だというのに驚愕に染まった。

だが戦いを忘れていた訳ではない。

直ぐに切り替え唖然としている盗賊を無力化していく。




盗賊の内、二人を生け捕りにし部下の無事を確かめる。


「アルガス!ランディ!大丈夫か!」

「はっ!隊長こそ大丈夫でしたか?」

「私も重傷は負っておりません!それより……あいつはなんですか?」

「それは私にも分からない……っつ!リリー様!!」



先程の戦い……いやあれは戦いでもないのだろう。それは見て騎士として高揚したのは間違いない。ただ直ぐに守るべきお嬢様の安否を心配し馬車に駆け寄る。

その男は側を通る際何か言っていたが今はお嬢様の身が第一だ。


「お嬢様ご無事ですか!」

「……うっ…リカ…ルド」


横転した馬車の扉を開け声をかける。

聞こえたのは散乱し窓があった場所に横たわって弱々しく声を出す姿だった。


「リリー様っ!」


直ぐに入り込み外に連れ出し横に寝かせる。

とてもぐったりとしており所々服が赤く滲んんでいる。

脈を確認するがギリギリの状態であると言っていい。

直ぐ様回復薬を探すが……先程の戦闘で少ししかなかった薬も割れてしまったらしい。

部下に目を向ければ同じくないようだ。首を横に振っている。


「隊長……くっ」

「ああっ俺たちのせいで……」


二人共力なく項垂れておりここでは応急処置もできない。

街までは二日かかる場所におり到底街で治療など見込めるはずもなかった。


「――――――――――?」


いつの間にか得体の知れない男が側におり赤色の液体を差し出してくる。


「なんだっ!きさまっ!」

「リリー様から離れろ!」


部下二人が男に気づき剣を抜いて警戒しているが剣と足が震えている。


先程当てられた殺気と戦闘を思い出しているからだろう。

私も部下の事は言えず足が震えている。


だが今目の前にいる男からは先程感じた濃密な死の匂いを感じない。

むしろ少しおどおどしている様に見える――目の錯覚?同一人物だろうか?


「二人共剣を収めろ。悔しいがどうやっても敵う相手じゃない」


実量の差は雲泥の差だろう。いやそれ以上開いているといっていい。


「お前は……これを使えと言うのか?」


怪しげな薬を差し出す男は首を傾げ身振り手振りで伝えようとしてくる。

『こいつは言葉を喋れない……いや通じないのか?』

リカルドは思いながら一挙一動に目を光らせる。



そこの子、この薬、飲ませる



「貴様!その怪しげな薬を飲ますと言うのか!」

「ふざけるな!そんな回復薬見たことないぞ!」

「まて……『『隊長!』』……ホントに大丈夫なんだろうな?おかしな事になったら…」



少し慣れてきたか鋭く睨みつけ確認をとる。

これは伝わったか引きつった笑みを浮かべてコクコクと何度も頷く。

……威圧感無くなったぞ?


リカルドは怪しげな赤い薬を受け取りじっと薬を見る。

少し自分の手の甲に垂らし口に含んでみる。

部下たちは不安げな目でこちらを見るが、


―――少し含んだだけで切って出血していた頬の傷が瞬く間に治っていった。


これは!?


直ぐ様横たわっているリリー様に飲ませるべく後頭部に手を添え上体を起こす。


「リリー様!こちらをお飲みください!」

「リカ…ルド……こくっ」


頷くとゆっくりとだが喉を鳴らし飲んでいく。

全て飲み終わる頃には表情にも苦痛の色も無くなり安心したのか寝息を立て始めた。



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