ほつれかけた糸を紡ぎ直す話
今の心境で犬旅を書くときっと良いものが書けない気がするので、今回は少し暗めの話で気持ちを落ち着かせようと思いました。なのではっきり言ってあまり面白いものは出来てはいません。
それでも見てくれる方がいれば幸いです。
悩みに悩んで苦しみ続けると、夢の中で誰か知らない優しい人が助言してくれる、そんな噂を聞いたことがある。
まぁ、そんなことある筈がない、ありえない、というかそもそも今の俺には関係ない、その時はそう思っていた。
楽しかった、すべてが楽しかったし、友人といるのも嬉しかった。
相棒と呼べるほどの親友ができた、
いつも一緒に面白おかしく過ごせる仲間ができた。
そんな仲間達の中心に俺はいた。
そしてその友人達との関係に名前を付けた。ここでは『仲良し組』とでもしておこう。
朝はおはようと言い、別れ際にはじゃあねと言い、ふざけあってバカやって、
休みの日にはカラオケに行ったり、学校帰りにゲーセン行ったり、クリスマスにはパーティなんかもした。
在り来りだけれど、そんな生活が何時までも続くと思っていた。
ある時、友人1人が俺たちの元から去っていった、理由は多分俺たちの場所よりも居心地の良い居場所を見つけたから。その際に俺たちはそいつを止めた。しばらくするとそいつは俺たちの元に戻って許してほしいと言ってきた、けれど別に責めるつもりは無いし、戻ってきてくれたことが何より嬉しかったから「分かった」と言って許した。
しかし問題はそれではなく次に起きたことだ。
そいつがもう一度俺たちの元から去っていった、その時からか、俺たちの間に亀裂が入っていったのは。
結局そいつはまた戻ってきたのだが、俺たちから完全に信頼されることの無いどころか、陰口まで言われるようになった。
それがキッカケで俺たち『仲良し組』の内同士でも信頼というものが薄れて行った。
それに耐えかねたもう1人の友人はいわゆる『メンヘラ』になってしまい、些細なことで孤独感を覚え、終いにはリスカをし始め、痕を見せつける、といった行為を始める。
宥めても宥めてもそれをやめなかった。
今度は友人をそこまで追い詰めてしまったという罪悪感で自分を責め、自問自答を繰り返し、独りで考え込み病んでしまう人や。
現実なんて所詮そんなものと人間関係を半ば諦め始める奴もいた。
そんな友人たちを見て俺は後悔した、そして考えた、どこで間違ったのか、いつ間違ったのか、
そして、何よりも苦しかったのはそこまで深刻な事態になるまで何も出来なかった自分を責めることのできない自分自身、もう誰でもいいから自分を責めて欲しかった。
そしたらいっそ楽になれたのに。
自分はみんなの中心だからせめて自分だけでも明るく、弱みを見せてはいけない、そんな意地が自分にはあったから責めて欲しかった、そしたら少しでも本音を吐けたかもしれない。
仲良し組がほぼ解散状態寸前の時についに親友が病んでしまった、そこで私はもう思考をシャットアウトした、もう俺には関係ない、もう元の関係に戻せるはずがない、手遅れだよ、疲れた──
*
『どうした?随分と酷い顔をしてるな』
「誰だよ…お前……」
『誰だか分からない人にお前だなんて、失礼な奴だなお前は』
「そういうお前だって言ってるじゃないか、考えて発言しろよ」
『まるで人を見下したような言い方だ、酷いやつだな』
「あぁ、酷いやつなんだ、俺は」
『お前、何をそんなに思い詰めてるんだ?』
「お前は壊れた友人関係を元に戻す方法知っているか?」
『随分難しいことを聞くな、そうか、もうその時なのか』
「その時って何だよ、何か知っているみたいな言い方じゃないか」
『知ってるというか、お前が経験してることだからな』
「お前、なんか気持ち悪い奴だな」
『お前、もし時間を巻き戻して好きな頃に戻れるとしたらどうしたい?』
「好きな頃に…戻る…?」
『あぁ、やり直したいことがあるんだろ?その、壊れた友人関係を戻せるかもしれない』
「いや、確かにやり直したいことなんて山ほどある、けどな、どうせ過去を変えたところで結局は未来が必ずしも変わるとは限らない、それなら経験を力にした方が自分の為になる」
『そう思うなら何故君は今悩んでいるんだ?君が諦めかけている問題、それを力に変えればいいじゃないか』
「その問題だけはもう思い出になってさえくれれば…もう俺は二度と人に心を許さないよ」
『ありゃあ、これは思ってたより重症だな、あの時は楽しかったのになぁ』
「楽しかった、なんてのは一時だけだったよ、後は苦いだけだ」
『いつまで逃げる?』
「逃げるよ、面倒事は嫌いだから」
『いつまで嘘をつく?』
「嘘なんてついてないよ、これが本心」
『いつまで泣いている?』
「うるさいな…分かってるよ…!!このままじゃバッドエンドルート直行だってことは!仕方ないじゃん!どうやったってマイナスだよ!」
『まだ間に合うよ、泣き止んで、前を見るんだ』
「前なんてもうお先真っ暗だよ」
『ほんとにそうかな、何も元々自分一人でなんとかなる話じゃないんだ、一人ずつでいいお前からだ、今まで隠してた自分の汚れた薄汚い部分も受け入れてくれる、そんな奴らに本心で向き合え、ほんとにお先真っ暗か?』
「何か…見える気がする……」
『今見えてるのはきっと今の問題が解決してまた最高に楽しい学校生活を送っている未来だ』
「解決、できるかな」
『出来るに決まってんじゃん!お前の好きな言葉はなんだ?』
「出来ない、なんてことは逃げ、当たって砕けよ!」
『そうだ、ほら行ってこい、クソ泣き虫な俺、楽しめよ──』
*
「あのさ!今度の週末久しぶりに皆でカラオケ行かない…!?」
「俺も誘おうと思ってた!」
「マジで?俺も!」
「気が合うな、俺もだ!」
あの日見た夢に出てきたあいつはきっとこの結末を望んでいた俺なんだと思う……
今の学校生活が少し良くないので、少しでも気分を楽にしたくて書いた、70%気晴らし、30%深夜テンションな作品でした。
こんなくだらないものを読んでくれてありがとうございました。




