『暗闇の森』
誰もが経験するかも知れない日常の出来事。
舞台は作者の実家の周辺で実在の場所。作中にある事件や事故も実際に起こっています。
だからこそ生まれた作品とも言えます。
いるよ いるよ
後ろにいるよ
深夜の暗いアスファルト
足音鳴らして
寄ってくる
振り返ったら誰もいない
何度かそれを繰り返す
気配がはっきり分かるのに
姿かたちは見えなくて
足音だけが響いてる
バスの最終逃したら
暗い夜道を歩きます
他に歩く人などいない
深夜の小道をひたすらに
歩いて帰る一人旅
背丈よりもずっとある
草葉の畑のその向こう
大きな森が在りまして
それはまるで影絵のよう
墨よりも濃い暗闇で
夜空に浮かぶ雲のよう
大入道か海坊主
ダイダラボッチがいるみたい
巨大な森の笑い声
風に乗ってやってくる
いるよ いるよ
後ろにいるよ
耳をすまして聴いてごらん
足音たったと聞こえるよ
次第に怖くなってきて
やがて自分が走り出す
深夜に足音響かせて
恐怖に駆られて狂いそう
それでも森は憑いて来る
笑いながら追って来る
沿道にある家々は
明りを消して閉じている
シャッターカーテン家の鍵
深夜は危険と知っている
そんな彼らを追い越して
走り続けて曲がり道
そこを曲がれば近道で
曲がりたいけど躊躇する
角には古いアパートが
遮るように建っている
二階の角が空き部屋で
カーテンのない暗い部屋
まるで目のない人のよう
ぽっかりと開いた黒い穴
そこに誰かがいるような
そんな気配を漂わせ
じっと誰かを待っている
見てるよ 見てる
さっきから
暗い部屋から覗いてる
そこから先は危ないよ
同級生が死んだ家
家の隣は墓地がある
その向かいには火事の跡
そこでも人が死んだこと
忘れたはずはあるまいよ
それでも行くのかこの道を
暗い暗いアスファルト
一人で走って何処へ行く
いるよ いるよ
きっといる
前も後ろも迫ってる
早くお家に帰りなさい
そんなに走って何処へ行く
そっちは違うよ
森の道
廃墟に向かって走り去る
暗闇の森が笑ってる
道に迷うな一人旅
どこまでも闇が続いてる
<了>
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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