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カオスリレー  作者: 灰色猫と琴音の二重奏
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5 灰色猫のクリストファー

夢オチなんて最低だ……

 ――灰色猫のクリストファー

「あれ、今更だけど玲奈はなんで俺が倒れたことに気が付いたんだ? それに、何で他校に余裕で入り込んで、先生と普通に会話できるんだよ?」

「言ってませんでした? 私、兄さんの携帯情報端末(PDA)に盗聴機能を仕込んでいるのですが」

「は……?」


 絶句した。

 その意味を理解できないでいる俺を置き去りにして玲奈は続ける。


「ちなみに、こんなこともあろうかと、この学校には常に侵入許可を申請、許可を得ていますので。……ほら、こうして通行証も持っていますので」

「いやいやちょっと待て! 通行証のことは分かった! けど何だよ盗聴機能って!?」

「……? 兄を案じる妹として当然のことをしたまでですが」


 その目は『何か変なことを言ましたか?』と言っている。どうやら本気らしい。


「……いいから、その機能を消せ」

「できません。このような不測の事態が発生した際、早急に対処できなくなります。また、兄さんが不純な恋愛をしていないかなどのチェックが不可能に……」

「おい!? そんなことまでしてるのか!?」

「妹として、当然です」

「……そうかよ」


 俺は反論するのもばからしくなって、そう答えた。


(しかし問題だな……こうも監視されてちゃ色々気を付けないと……)


「ちなみに、兄さんが自室にいらっしゃる場合には機能をオフにしていますので、安心して事に当たってくださると……」

「おい、『事』って何だよ!? 『事』って!?」

「え……ご自分がよくご存じなのでは? どうしても言えとおっしゃるなら……」

「いや、言わなくていい! 言わなくていいから!」

「いえいえ、遠慮なさらず」

「遠慮じゃないって!」


 ああもう、なんでうちの妹はこうなんだろう……。

 そんな折、保健室に救世主(メシア)が現れた。


「二人とも、準備できたから来なさい。私の車で送ろう」


 佐藤先生だ。

 俺たちは頷き合うと保健室を、そして学校を後にした。




 その日の夜のことである。

 俺は自室でくつろいでいた。

 頭部の外傷以外は特に異常なく、直ぐに解放された。

 そんな事よりも気になることがあった。


(今日のアレは……何だったんだ?)


 アレというのは本と、夢のこと。


「『フラム=フランム』、『ソル=テーレ』、『ヴァッサー=ロー』、『ヴェント=ウェントス』……」


 いかにも厨二的な名前だ。それもかなり痛い部類の。


(俺はそういうのはもう卒業したはずなんだがなあ……)


 本に関しては存在そのものが怪しい。目覚めたとき手元には無かったし、先生に聞いてもそんなものは無かったという。

 ただ気がかりなのは……『万年筆』だ。

 俺はそれを取り出す。


(見た目は普通だし、機能も普通なんだよなあ……)


 何故か、この万年筆だけは残っている。それはあの出来事のうち、少なくとも万年筆を見つけたことだけでは嘘偽りではないことを物語っている。

 が、何度も確認したがあの時のような奇妙な現象は起こらない。ただの万年筆。


(まだ残ってんのかね……厨二病の妄想癖が……)


 そんなことを考えながら、電気を消し、ベッドに潜った。



 ……夢を見ていた。これは夢だとわかる夢。いわゆる、明晰夢だ。

 ファンタジックなRPGによくあるような、剣と魔法の物語。

 一人の剣を持った若者が、何人かの仲間を従えて、果てが見えない草原やら、灼熱の火山やら、極寒の大地やらを冒険していた。若者の顔は見えない。

 俺は、彼が持つ本に見覚えがあった。


(あの本は……!?)


 赤地に金装飾の、いかにも魔術書然とした本。

 あの時の本で間違いなかった。


(どうして……!?)


 俺が見聞きしたものが夢に影響を与えている……そう考えるのは簡単だった。

 何か釈然としなかったが、とりあえずそういうことにした。万年筆は見当たらなかった。

 

 そのまま夢が進んでいく。

 若者は様々な呼ばれ方をした。

 ――『フラム=フランム』、『ソル=テーレ』、『ヴァッサー=ロー』、『ヴェント=ウェントス』。

 その名には聞き覚えがあった。

 先ほどと同じ解釈をした。


 彼らは旅を、戦いを続けた。何と戦っているのかは分からなかった。

 俺はそれを見ながら、行き場のない不安を感じていた。

 この後何か不吉なことが起こる事を知っているような……そんな不安。


 彼らはやがてあるものと対峙した。

 ファンタジーのお約束。


 ――(ドラゴン)だ。


 彼らは果敢に戦いを挑み、勝利した。

 ……何人もの犠牲者を生みながら。

 最後には彼ともう一人、女性が生き残っただけだった。


 ある者は竜に食われ、またある者は炎に焼かれて死んでいった。


 彼は竜から何かを抜き取った。

 それを手にした途端、彼らに歓喜の色が走る。


『ようやく手に入れた! これで世界は救われる!』


 いかにも主人公然とした台詞を、彼は言った。


 しかし次のシーンにそんな喜びはなかった。

 空は荒れ、空気は汚れ、人々の心もまた……


 彼はその中に立ち尽くし、言った。


『世界とは、何だったんだ……?』


 答えは返ってこない。そんな事、彼もわかっていただろう。


 世界が崩れ始める。彼の顔が見えた。その顔は、俺にそっくりだった――

こんにちは。灰色猫のクリストファーです。


堂々巡りというか、いたちごっこが嫌だったのでこんな展開に。これを琴音氏がどうとらえるかは知りませんが……。


シスコン&ロリコン(仮)の琴音さんの考えに、今は乗って差し上げるとしましょうかね……!

フハハハハ……!


……すみませんでした。少々テンションが異常を訴えているようです……


次回はもう少し早く投稿できるよう、頑張りたいと思います。


※誤字修正しました

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