4 琴音
※感想省略
「どういうことだ?」
「さあ、どういうことだろうね」
そう聞こえたとたん、立っていた場所に穴が開き、俺は落ちた。
「・・・ん、・いさ・、兄さん!」
玲奈の声が聞こえた。
「起きてください! 兄さん!」
どうやら俺は、どこかに寝ているようだ。
「うぅ」
「っ!! 兄さん! 先生! 兄さんが目を覚ましたみたいです!」
俺が動くと、玲奈が慌てたように誰かを呼んだ。
目を開けると、玲奈の顔と教室の天井が見えた。
「れ・・な・・・?」
「ああ、よかった。起きましたね」
「夢か・・・」
「? なにがですか?」
どうやら、あれは夢だったらしい。
まだ俺のなかには、中二的要素が残っているのか?
そして、意識がはっきりしてくると、どうして俺がここにいるのか疑問に思った。
場所の検討は大体つく。教室と同じような天井があるということは、保健室のベッドの上だろう。
ただ、なにが起きたのかよくわからなかったので、玲奈に聞いた。
「私は兄さんが突然倒れたって連絡をもらい、ついたときにはもうここに兄さんが寝ていました。だから、詳しいことは私もまだなにも聞いていないんです」
「そうだったのか」
俺が返事をすると、ほぼ同時に、カーテンの開く音がした。
「ああ、相原君。目を覚ましたか」
「先生、ありがとうございました」
玲奈がそう言った。
どうやら、先生が入ってきたようだ。
俺は体を起こした。
「佐藤先生」
「よかった、よかった。佐々木先生から君が転んで意識を失ったって言う連絡を受けて、私もビックリしていたからね。頭も怪我をしていたし、大丈夫なのかと心配になっていたんだよ。今日は帰って病院で診てもらうといい」
「はい。ありがとうございます。ご心配をおかけしました」
俺は頭を下げると、すこしだけ頭がズキリと痛んだ。
痛んだところに手を伸ばそうとすると、
「ああ、そこは触らない方がいい。怪我をしていた場所だからね。応急処置だけはしてある」
佐藤先生に止められた。
その時だった。
「相原くん! 大丈夫!?」
ここのドアが勢いよく開かれる音がした。
声から推測すると、鵜方 瑠奈先輩だろう。
瑠奈先輩はここの生徒会長をやっている人で、大抵の時間は生徒会室にいる。
なぜ知っているかと言うと、先生からの頼まれ事で、よく生徒会室に行くからだった。
この人は優しい人で、よく他の生徒の相談事に乗ったりしている。そのため、みんなから慕われる良い生徒会長なのだ。
ちなみに、この先輩は背が低く、容姿が小学生のように思えるほどだ。
「鵜方、保健室で大きな声を出すな。相原はここのベッドにいる」
「あ、佐藤先生。ありがとうございます」
瑠奈先輩はそういうと、こっちに向かって歩いてきた。
「瑠奈先輩」
「相原くん、大丈夫?」
「はい。まだ少し痛みますが、大丈夫です」
「よかった~」
「ご心配をお掛け致しました」
「うん。本当に心配したよ~」
ああ、先輩を見てると、ホッコリするなぁ~
ニッコリと普通に立った状態で目の前で笑う先輩を見ると、心が軽くなるようだった。
「ロリコン?」
玲奈が後ろからボソッとそう言った。
失礼な! 俺はロリコンじゃない!
そう反論したかったが、残念ながら、現状では無理だろう。
キーンコーンカーンコーン
チャイムがなった。
「ほら、鵜方さん。早く戻らないと、授業が始まりますよ」
「はーい。じゃあ、相原くんまたね~。また生徒会室に来るんだよ?」
「はい。また行かせてもらいます」
俺が返事をすると、瑠奈先輩はトテトテと走って自分の教室へ戻っていった。
「あれ? そういえば、玲奈は大丈夫なのか?」
俺はまだここにいる玲奈が不思議になり、そう聞いてみた。
「兄さんが倒れたと聞いて、早退しましたよ。なので、今日はもう休みます」
「そうだったのか。改めて、ごめん」
「はい。これからは気を付けてくださいね?」
「ああ」
その時、また、保健室のドアが開く音がした。
なかに入ってきた人は、こっちに向かって歩いてきた。
「おお、相原、大丈夫か」
そこにいたのは生徒会室にもいた佐々木先生だった。
「はい。大丈夫です」
「なら、よかった。それじゃあ私は職員室に戻るよ」
「ありがとうございました」
佐々木先生は佐藤先生と二言三言話すと、保健室から出た。
「相原君はもう立てるかい?」
「はい。たぶん、立てると思います」
「立てるのなら、近くの病院まで送ろう。一度診察してもらいなさい。妹さんもそれでいいね?」
「はい。大丈夫です」
「少し待っていなさい。いろいろと用意してくるから」
佐藤先生はそういうと、カーテンを閉めて立ち去った。
「兄さん、本当に大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だよ。そんなに心配しなくてもいいのに。玲奈みたいに体が弱いとかじゃないんだしさ」
「心配します。それに、もう体は弱くないです」
玲奈は少し、触れ腐れたように言った。
そう。玲奈は小さい頃、体が弱かった。だが、小学校6年生になってから運動を始め、今ではテニス部のエースだった。
最後の大会では優勝まで一歩届かなかったものの、それでも準優勝という素晴らしい成績を残していた。
こんにちは琴音です。
夢オチって便利ですね。そう思った今回でした。
さて、今回もこんな感じで繋げてみました。
次回の『灰色猫のクリストファー』さんはどのように繋げるのでしょう。
やっぱり強引に展開を変えるのでしょうか。
このままどちらも妥協することがないと、いたちごっこになりそうですねww
今後の展開に期待が高まる琴音でした。
それでは次は第6回でお会いしましょう。