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恋は指先からはじまった  作者: かーりー
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バレンタインの空の下

 山田さんと連れだって表に出る。すると背の高い人影が目に飛び込んできた。ーーあれは、もしかしなくても橘さんだ。

 なんかドキドキしてきた。胸よ、勝手にときめくな。

「知り合い?」

「あ、えっと、用事を思い出しちゃった。ごめんなさい、わたしはここで・・・」

 わたしはあっけにとられている山田さんにおじぎをし、バイバイと手を振った。いざ、橘さんのもとに駆け寄ろうとすると、彼がいなくなっている。あれ、どうして? どこに行ったの? 一瞬目を離しただけなのに。

 わたしに会いに来てくれたの? それとも偶然? どうしてわたしがいる場所を知っていたの? そもそもわたしがあそこにいることに気がつかなかったの?

 頭の中が、グルグルしてる。

 橘さんの行きそうな方向に走ってみたけれど見つかるわけもなく、いっそ彼のアパートに行こうかとも考えたけれど、そんな勇気は出なかった。だって仮に彼と会ったとして、何を話せばいいのだろう。気まずくなるのがオチじゃない。

 気がつくと、わたしは人混みの真ん中で途方にくれていた。


 帰って典子に電話した。

「今日、橘さんがお菓子教室の前にいたの。典子、なんでか知ってる?」

「お菓子教室のことは、わたしが橘さんに教えたんだよ。最近みゆきどうしてる? って聞かれたから」

「・・・典子、橘さんと会っているの?」

「会ったっていうか、この前またみんなで海に行ったけど。でも、よかったじゃない、橘さんがみゆきに会いに来たんでしょ」

「それが、たまたま一緒にお菓子を習ってる男の人と一緒にいたの」

「みゆきその人とつきあってるの?」

「ただの友だち」

「これは花音から聞いたんだけど、橘さんも花音とデートしているみたいだよ。だからみゆきも男の人といたぐらいで気にすることないんじゃない? それにさ、もう橘さんと終わったみたいなこと、前に言ってなかったっけ」

「あきらめるって言っただけ」

「だから山田さんだっけ? その人とつきあっちゃえば?」

「そんな簡単につきあったりできるわけじゃないよ」

 あくびをしながら典子は言う。

「いいなあ、みゆきはモテて。それより、今度みゆきが作ったお菓子食べさせてよ。よろしくね」

 プツンと電話が切れた。わたしは床に突っ伏す。やっぱり橘さんは花音さんとつきあっているんだ。

じゃあどうしてわたしに会いに来たのだろう。

 

 バレンタイン前の講習ではガトーショコラを作った。部屋に甘い匂いが満ちてくる。ちゃんと膨らむのか気になって、わたしはオーブンをのぞきこむ。山田さんもわたしの隣にやってきて、一緒にオーブンをのぞく。

「膨らんできたね」

「ああ、よかった」

 肩を寄せ合ってオーブンの中を見つめる。

「うらやましいな、バレンタインにみゆきちゃんからチョコもらえる人が」

 一瞬橘さんのことを思い出したけど、かぶりをふった。

「そんな人、いませんよ」

「いるでしょ。こっち見てよ」

 ココ、ココと、山田さんが自分を指さしている。

「義理でなら、あげてもいいですよ」

「なんで義理なんだよ。俺、絶対みゆきちゃんを大切にするよ」

 大切という言葉に、つい、ときめいてしまう。

「バレンタイン、マジで予定ないなら、俺とデートしない?」

「でも、バレンタインは女子からの告白じゃ?」

「だってこっちから誘わなかったら、みゆきちゃんは俺のこと一生誘いそうにないでしょ。だからさ、予定がないんだったら、俺とデートしようよ」

「うーん」

「今、うん、って言ったよね?」

「えっと、そういう意味じゃなくて」

「どこ行こっか? やっぱりデザートが充実してるところがいいよね」

 強引すぎると思ったけれど、ただいまわたしは、傷心中なのだ。だからやさしくされるとすがりつきたくなってしまう。山田さんはすごくいい人。これは新たな第一歩なのかもしれない。

「わたし、お店とかよく分からないから、お任せしちゃっていいですか?」

「やった、オッケーしてくれるんだ。じゃ、いいところ見つけて、予約入れとくよ」

 そうだよ、橘さんは花音さんと付き合ってるんだもん。わたしも橘さんのこと忘れなきゃね。


 二月十四日。最寄り駅の改札で待ち合わせした。着いたところは民家を改造したような、こじんまりとしたフレンチビストロだった。ラズベリー色の壁にアンティーク風の家具。デザートがワゴンサービスされるのが売りだという。

「こんなかわいいお店に来たの、初めて」

「気に入った?」

「うん」

 メニューを選ぶ。

「ワインはいかがですか」

「わたしはけっこうです」

「そんなこと言わないで、少しぐらい付き合ってよ」

「じゃあ一杯だけ」 

 乾杯しながら、山田さんの顔を眺める。一度でいいから橘さんとこういうところに来てみたかったな。

「みゆきちゃん、なに考えてるの?」

「いざ向かい合ってみると、何を話していいのかわからないなって」

「なんだよ、いろいろあるだろ」

 そうこうしているうちに、前菜がきた。

 わたしは「野菜畑のゴロゴロスープ」で、山田さんは「海の幸のスペシャルサラダ」だ。

 暖かいものを胃の中に入れると、やっと落ち着いてきた。

「おいしい! フランスのお母さんの味って感じ」

「じゃ、こっちは港町の頑固おやじ穴場レストラン、だな」

「うわあ、そっちも気になる。真弓さんのカフェのメニューにもこういうのがあったらいいな」

「そうだね」

「わたし、お菓子教室に行ってよかったです。あこがれている人がいて・・・実は真弓さんなんです。真弓さんって、ホントすてきですよね」

「真弓さんか」

 山田さんは苦笑しながら言った。

「真弓さんはいい人だし、別にルックスも悪くないんだけど、異性としてはなあ。ぼくはみゆきちゃんのほうがいい」

 真顔で言われて、顔が赤くなる。

「そんなこと言ったら、真弓さんに失礼ですっ。本当に真弓さんは本当に美人ですてきな人だから。それに、山田さんはアパレルにお勤めだから、職場にきれいな人もいっぱいいるでしょうに」

「女の園だからねえ、みんな怖いんだよ。みゆきちゃんみたいに守ってあげたいタイプはいないよね」

「守ってあげたいなんて。わたし結構たくましいですよ。それより職場の人ってそんなに怖いんですか? お店に一回行ってみようかな」

「来なくていいよ」

 山田さんは自社ブランドの服を好んで着る女の子には、あまり魅力を感じないらしい。ちょっと鈍くさいくらいのほうが落ち着く、とつぶやいた。まあ、確かにアパレルの店員さんを見ていると、怖い人が多そうだし、人間関係も大変そうだ。でも自分のことを鈍くさいと言われるといくら遠まわしにほめられているとしてもちょっと傷つく。

「やっぱりわたしって鈍くさいですよね。職場に典子っていう友だちがいるんですが・・・」

 わたしは典子が何でもできる美人だということ、典子と一緒にスキューバダイビングを習いにいったこと、一緒に海に行った花音さんにバカにされたこと、鈍くささから脱却するためにお菓子を習おうと思ったことを一気に話した。

「で、一応、わたしなりに努力しているわけなんです。全然進歩はないんですが」

 わたしは、小さくためいきをついた。あわてて山田さんがフォローする。

「ごめんね、鈍くさくないよ。そういうけなげな感じがいいと思う」

「全然けなげなんかじゃないです」

 花音さんに対抗してもかなわない。いつも典子のことをうらやましいと思う。すぐにうじうじしてしまうダメな女なのですと、心の中でつぶやく。

 

 メインディッシュが運ばれてくる。

 マッシュポテトと白身魚のポワレとグリルした野菜がミルフィーユ状になっている。この美しい盛り付けを崩さないようにして食べるにはどうすればいいのだろう。

「どうやって食べたらいいと思う?」

「別にふつうに食べたら?」

 山田さんは、何に悩んでいるのか訳がわからんといった様子で、大きく切った分厚い牛フィレ肉をほおばっている。

 わたしは散々迷った挙句、えいっと真上から魚にナイフを入れた。ブロッコリーが転がり、グシャリとミルフィーユの形が崩れる。せっかくの魚が押しつぶされて汚ならしい。それにしてもいつも以上にナイフとフォークが上手く扱えないのはどうしてなのだろう。

山田さんがわたしをじっと見つめている。

「やっぱりわたしってドンくさいね」

「俺はそんなこと気にしないよ」

 山田さんが真顔で答える。

「そんなふうに言っていただいて、なんか、ありがとうございます」

 わたしは下を向いて、つぶやくように言った。


 デザートがやってきた。

「どちらになさいますか」

 五種類のケーキが並べられているワゴンを前にして、言うことはただ一つ。

「全部お願いします」「わたしも」

「承知しました」

 少しずつ切り分けたケーキが白いお皿に上に並ぶ。

「どうやって作るのかな」

「もしかして、俺のために作ってくれるとか?」

「こんな難しそうなのは、絶対無理です」

「そんなことないって」

「いや、無理です」

 何度言っても山田さんは「絶対作れる」の一点張りだから、こっちもムキになった。

「もうっ、じゃあ山田さんがわたしに作ってくださいよ」

 自分の言葉が思ったより荒くて、ハッとする。でも山田さんはにこやかだ。

「いいよ。俺みゆきちゃんのためにケーキ作るよ」

 顔が火照るのが分かる。

「やっぱりいいですって! 山田さんにお手数かけさせたら申し訳ないので」

「全然申し訳なくないよ。俺、みゆきちゃんのために作ってあげたい」

 山田さんは私の顔を見てニコニコしている。どうしてそんなに見つめるの? なんだかもう、目を合わせられない。


 店を出る。山田さんがスマートに会計を済ませてくれて、ちょっと感動。

 歩きながら、山田さんが話し始める。

「実は急に大阪に転勤することになったんだ」

「えっ、じゃあお菓子教室やめちゃうんですか」

「まあ、そうなるだろうね」

 そっか、だから今日私を誘ってくれたんだ。

「ちょっとさびしいです」

「ちょっとだけなんてひどいな。俺はものすごくさびしいのに」

 そう言うと、山田さんはわたしと手をつないだ。わたしはそのまま山田さんにされるままになって、無言で歩いた。山田さんの手のひらは湿り気を帯びていて、不思議な感触だった。

 ふとわたしは、山田さんが優しくしてくれたから、橘さんのことを冷静に受け止めることができたのだなあと思った。なのになぜ今、彼に掛けてあげるべきよい言葉が見つからないのだろうか。このまま黙ったままでいいわけなんてない。駅はもうすぐそこなのに。

 急に山田さんが立ち止まる。

「俺と付き合ってくれませんか。遠距離恋愛になるけれど、頻繁には会えないかもしれないけど、出張でこっちにくることもあると思うし。みゆきに寂しい思いをさせないように努力する」

 山田さんが、わたしの腰に腕を回した。山田さんの手にぎゅっと力が入って、わたしは身動きがどれなくなった。

本当は、山田さんがわたしに告白をするんじゃないかって、うすうす気づいていたのだ。それなのにわたしは彼の気持ちを受け止める決心がないまま、たださびしかったからデートしてしまったのかもしれない。

 なるべく山田さんを傷つけたくなかった。彼の肩に両手を当て、そっと押し出すように距離を取った。

「ごめんなさい」

「好きな人がいるの?」

「――好きっていうより、忘れようと思ったっていうか」


 忘れられないというか・・・。


「この前、お菓子教室の前にいた人?」

「知ってたんですか?」

「だってみゆきちゃん、アイツのこと見たら急に、うれしそうにソワソワしだしたから」

 恥ずかしくて、まともに山田さんの顔が見れない。

「山田さんのことは大好きなんですけど、やっぱり今、あの人とのことをなかったことにして、山田さんと付き合うことは、わたしにはできないんです」

 山田さんは小さくため息をつくと、わたしの髪をなでた。

「ちゃんと言ってくれて、ありがとう」

「こちらこそ本当にありがとうございました」


 わたしは山田さんと別れて、電車に乗った。

 山田さんを振ってしまったのに、なぜかわたしのほうが振られたような喪失感を感じる。山田さんは優しくて、いい人で、せっかくわたしを好きだと言ってくれたのに。では、わたしはどうして橘さんが好きなのかというと、それもよく分からないのだった。冷たいし、家まで送ってもくれないし、女好きだし。でも、橘さんに話しかけられると、触られると、ものすごくドキドキしてしまうのだ。

「結局、山田さんにチョコレート渡さなかったな」

 山田さんのために用意していたのは、とあるメーカーのアマンドショコラだった。飴がけしたアーモンドにチョコレートをコーティングしたチョコは、カリッとした食感とほろ苦い味がおいしいのだが、バレンタイン用としては少々華やかさに欠けるとは思っていた。でもそれは、山田さんを愛していなかったから、無意識に選んだのかもしれなかった。

 ではもしわたしが橘さんにチョコを贈るとしたら、何にするのだろう。やっぱり手作りのガトーショコラだろうか。いくつも作ってその中で一番上手にできたのを、一生懸命作ったので食べてくださいって、渡すような気がした。

 ものすごく橘さんに会いたいと思った。

自然と足がダイビングスクールに向かう。時計はすでに十時を回っている。きっと今頃橘さんは花音さんと甘い夜を過ごしているのだろう。それでもわたしは橘さんがさっきまでいた場所にいたかった。

 スクール前の階段に座り夜空を見上げる。深い青に無数の星が浮かんでいる。吐く息が真っ白で、耳がキンと冷たくて、勝手に涙が出た。

この涙は悲しいから出たんじゃない。橘さんが好きだとわかって流しているうれし涙なの。いまさら、彼とどうこうなりたいわけじゃない。でももしもう一度橘さんと話ができたら、わたしはそれだけで幸せ。


 ガチャリと扉の開く音がした。驚いて振り向くと、橘さんが立っていた。

「みゆき? こんなところで何してるの?」

「橘さんこそ! どうしてこんな時間までいるんですか?」

「いろいろ仕事があるの。みゆきのほうこそどうしたの?」

「えっと、星空を見に」

 橘さんがわたしの隣にストンと腰を下ろした。

「なんだよ、チョコでも持ってきてくれたのかと思ったのに」

「橘さんは花音さんとデートだったんじゃないんですか?」

「そんなことしねーし。そっちこそ、ケーキ教室の彼とデートだったんじゃないの?」

「わたしだってそんなこと」

 橘さんが空を見ながら言った。

「今度ケーキ食わせてよ」

「・・・はい」


 わたしは真弓さんという素敵な女性に出会ったことや、山田さんが職場の女性に負けないためにお菓子教室に修行しに来ていたことを話した。なぜか山田さんの修行話が非常に受けて、橘さんは大笑いした。

「その、山田さんだっけ? 彼の気持ちがよく理解できるなあ」

「ええっ、なんでですか?」

「いやあ、女の人相手にものを教えるって結構気を使うんだよね。俺も試行錯誤の繰り返しだよ」

「・・・意外。橘さんって、女の扱いには天性の才能があるのかと思っていました」

「そんなわけないだろう」

と、また橘さんは笑った。

 その笑顔を見て、わたしはやっぱり橘さんが好きだと思った。不覚にも涙がこぼれた。

「ちょっと、何で泣いてるの?」

「だって、橘さんと会って話せたから」

 橘さんが「バーカ」と言って、わたしのおでこを指で軽くこずいた。

「バカなんて、ひどい」

 涙が止まらなくなったわたしを、橘さんが抱き寄せていった。

「やっぱ俺、みゆきじゃなきゃ、だめみたい」

「わたしダイビング下手だし、鈍くさいのに・・・」

「でもいつも一生懸命で、好きだよ」

 顔を見られるのが恥ずかしくて、わたしは橘さんの左腕に顔を埋めた。彼は右手をわたしの背中に回し、わたしを抱きしめた。

「好き」

 橘さんが、耳元でささやく。

「わたしも、橘さんじゃなきゃ、だめなの」


 口づけは甘くて苦しかった。酸欠になって頭の中が真っ白になる。こらえきれず大きく吸い込んだ空気が甘い吐息に変わった。寒さが地面の下からジンジンと伝わってくる。でも寒ければ寒いほど、橘さんの体温を感じることができるみたい。

 橘さんが服の内側に手を差し込んだ。冷たい指が素肌に触れる。刺激的な冷たさがいつのまにか肌になじんでいく。

――ずっとこのままこうしていたい。でも・・・。

「もう、だめ」

「どうして?」

「帰らなきゃ」

「もう少し一緒にいたい」

「でも、親が心配してると思うから」

 橘さんが名残惜しそうにわたしを抱きしめる。

「じゃあ、送っていくよ」

 ずっとずっと送っていってほしかったんだよ。ほんの少しでいいから、わたしのことを気にかけてほしかったの。

「うれしい」

 

 バレンタインの空の下、わたしたちは、くっつきながら歩く。

「また一緒に海に行こうよ」

「うん・・・」

 海という言葉を聞くと、また自信がない自分が顔を覗かせる。でももう一度ぐらい挑戦してもいいかな。

「あのね、ふと思ったの。わたしが真弓さんを見ていて発見した、ゆっくりしているところはてきぱきと、あわてるところは丁寧にという法則は、スクーバダイビングにも応用できると思う?」

「うん、そういうのがダイブでは一番大事なんだ。みゆきはさすが、えらいなあ」

 橘さんがわたしのことを、小学生にするみたいにほめるから、わたしもちょっと調子に乗ってしまうよ。

「なんか、試したい気持ちになってきた」

「やった! じゃあさっそく次の日曜に行こう!」

 そのとき北風がビューと吹いてきて、わたしは思わず「うっ」とうめいた。

「いやでも、もう少し暖かくなってからにしませんか?」

「どうして? みゆきとすぐにでも潜りたいのに」

「だって、寒いもん」

「大丈夫、俺が暖めてあげるから」

 抱きついてくる橘さんにわたしは「なんか、恥ずかしい」というと、

「なんで? 俺たち今までもっと恥ずかしいこと、いっぱいしてんじゃん」

 もう、どうしてわたしを赤面させることを言うの? 

 それにしてもこんなふうに橘さんとまた話せる日が来るなんて、わたしは今の今まで思ってなかった。

 わたしはうれしくて、クスクスと笑った。橘さんはそんなわたしを見つめて言った。

「ねえ、どうして今までそんな風に笑ってくれなかったの? いつもみゆきが不機嫌だから、みゆきは俺と一緒にいるのが楽しくないんだって、ずっと思っていたんだよ」


 今はこうして笑っていられるけど、わたしは橘さんといることがずっと苦しくて、でもすごく一緒にいたくて、ダメな自分が悲しくて。でも、もしみんなと海に行ったら、前と同じようにわたしは橘さんの前で不機嫌な女の子に戻ってしまうかもしれない。

 それでもきっと橘さんを、きっと、ずーっと愛し続けるから、もう少しだけ自分に自信が持てますように、どうかわたしに自信をください。


何年も放置していたアカウントを「「いい加減消そうか」と本日ログインしました。

でももう誰も読む人なんて誰もいないと思っていたら、私の小説をひと月に一人ぐらいは読んでくれたる人がいたので、もう少しだけアカウントを残しておこうと思った次第です。


取り敢えず、書きかけの小説は完成させました。

偶然読んでくれた読者の方、ありがとうございました。


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