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白砂のシェスタ  作者: kushinokumi
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第7話

 第7話


「さあて。上りますか」

「この上ですと?」

 冗談を否定してほしいのだとフレーレの口調は訴える。

「ちょっと高いし急だけど踊り場が途中に二カ所あるから。そこで休憩を挟もう」

 土と草木と花々の香りが近づいたころ、官者とフレーレラクリマ嬢が進む柱廊の木道は小高い丘の下へと突き当たった。

 柱廊の屋根は丘の急な斜面の麓で一端は途切れている。足元が馬車も通れる幅の木造の廊下から、石で囲われた土の階段へと切り替わる。

 馬車用の緩い坂道が丘の周囲に沿ってあるが、大分遠回りなのだと官者は説明した。

 急な階段を上る。

「ここも、また、風が強いですね」

「そうだね。丘陵の風って、いっていいのかな」

 一カ所目の踊り場に到着。ふたりは草木が間々に生えたひらけた踊り場のベンチへ腰かけた。

「あれから私達けっこう歩いてきたものですね」

「何度か通うと慣れるものだよ」

 フレーレはそうですか? と力なく答えて靴を脱いだ。

「あー涼しい」

 踵の位置の高い靴は宙をかくベンチの下へとほうられる。ついでにつま先が追随しひょいと仕舞われていく。その横では官者が腿をたたく。歩き疲れ棒になった足を風にあてて流れる雲を目で追う。そんな光景が二回続いた。広角な視野に写る空模様は小魚の群れのようである。鱗のように雲の影と空の青が少女の後ろ髪の翻り絡まり波打ち流れる方へと、まるで白い砂時計のような規則性ときめ細やかさを見るものに感じさせ泳いでいく。空を泳ぐ大きな鯨のようなかたちのサカナが税務署の屋敷がたつ丘の一帯を覆う。

「そろそろ出発しましょうかね」

 官者は言うが、あとにフレーレが言う。

「あ。曇った」

 ベンチに腰掛けながら上を伺う。そのまま動く様子はない。

 官者は再び椅子へ腰掛ける。少女の顎先が全く動かないのを見届けて、上を向く。

「……」

 思った通りそちはなんてことはない。見えない影を延ばす白い雲の奥に空の青が透けて見えた。



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