第2話
第2話
私が脇目にした街の広場では、木剣を片手にした若い青年たちが、稽古を行っていた。
みた感じ、上は半袖に手拭いを首からさげているだけ。精が出る。
それにしても、随分と薄着をしているようだ。見ている方が寒くなるわと言って、少し照れたふうの少女は、道の先へと視線を逸らした。
幅広の大通りを歩いていると、朝霧とともに冷たい北風が吹きつけてくる。
「私も、聞き齧っただけだが……」
身震いを起こした官者の声が萎んでいく。
空は、中天まで白み始めた。今日は休日であった。けれど、官者が役場に用があるとかで、少女と官者の二人は先を急いでいた。
淡い紅や白をしたツツジの街路樹がひとりでに揺れる。
それを垣根にしゃがみ込むことで、風除けにした官者に気づき、私 少女も咄嗟に立ち止まる。何か、と少女が訪ねる前に、官者はいつの間にか懐からとりだしていた手袋をいそいそとはめ始めた。
高官ともあろうに少女の前で、両手いっぱいに己れの赤らめた頬を揉み揉み。官者はこう見えても、キャリアを、積んだいい年したおじさまなのがまた、少女視線からすれば、直視を堪えないものとまで見做されてしまっていた原因となっていた。
「寒いね。いや、まったく」
「ほんとにそうですね」
相槌を打つ。
「……臆、そうだ。ここ迄聞いてそれが、どうしてか、君。判りますかね?」
「えっと、わかりません」
そんな軽い受け答えをしてから、少女は相手に目線を合わせようとその場にしゃがむ。
自分のスカーフの位置を端を数回摘み直しながら官者が話しこむ。
「簡単にいうと、屋敷の守りが固いからだ。シェスタの街はね、要塞なんだよ」
官者は立ち上がり歩み出す。
「屋敷のある領民の居住地まで垣根がないんだ……」
折悪く腰をあげさせられ、尚且つ、話を中断されたことで少女は怒り、のらりくらりと雑踏を躱して前を歩いた年老いた丸い背中を、じろり、と強めに睨むのだった。