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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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扉と鍵

 魔王城に、道がある――そう主張するとガルクは『なるほど』と納得した。ソフィアやリチャルについても同様の見解の様子だった。

 シェルジア大陸で魔王が建造した城は現在までまだ存在しているのだが、城内については俺やソフィアが旅をする間に調べたらしく、めぼしい物は何も残っていない……ちなみに、城内に残っていた物品は取るに足らないものであったと報告書には上がっている。


 その中で、俺は自分の推測が正解だという文章を見つけた。魔王城の一角、地下に重厚な扉が一枚存在し、開けられないとのことだった。


「ルオン様、これがおそらく……」

「ああ。たぶん星神がいる場所へ通じる道だ」


 もっとも、鍵については……報告書には城内になかったとのこと。


「無理矢理破壊できるか試してみるか?」

『扉の奥がどのようになっているのかわからない以上、迂闊なことはしない方が良いだろう』


 と、ガルクが自身の見解を述べた。


『推測だが、物理的に星神へ通じる道というわけではないだろう。仮に扉の奥が地底へ続く階段だったとして、そこには星神がいる場所へ通じる転移術式などが存在していることだろう』

「不用意に扉を開けると、星神が出てきてしまうかも、と」

『うむ。鍵についてはこちらで作成するか、あるいは魔界へ赴けばあるのか……』

「一度魔界へ行って確認しないといけないな」


 そういえば、あれからどうなったのか……興味もあるし、一度行ってみるのもよさそうだ。


『鍵の問題については、あっさり解決する可能性もあるため置いておこう。我は星神の動きを観測する魔法を完全なものとする。最終的にはこの場所にいて、状況を観測できるようになるだろう』

「それはありがたいけど……俺達が動けないと対処は難しいよな」

『そこについては、連絡網を構築し、立ち回れるようにしておく……星神降臨を遅らせることができれば、ルオン殿も動けるだろう』


 例えば世界の反対側とかだと、対処方法を考えないといけないかもしれないけど……直接的な降臨のきっかけは潰しているので、おそらく大丈夫なはずだ。

 楽観的な考えではあるにしろ、最善は尽くしている。今はそれで大丈夫だと信じよう。


『ルオン殿は魔王城へ調査へ向かうか?』

「ああ、そうだな。まずは扉がどうなっているのか、それを含め現地調査は必要だろう」

「私もついていきますよ」


 ソフィアが応じる。またオルディアやリチャルについても、さらにロミルダもまた同行する意思を示したのだが、


「……戦闘については必要じゃないし、この場所にサラ以外いなくなるというのもまずいだろうな。俺とソフィア……後はリチャル、この三人で調査しよう。ロミルダ、ソフィアについては帰ってきて早々悪いけど」

「ううん、大丈夫」


 ロミルダは笑顔で応じる……色々な戦いを通して彼女もまた、強くなった。


「それじゃあ、オルディアとロミルダはここに戻ってくる仲間を迎え入れて欲しい……ソフィア、リチャル、二人はすぐに支度をして魔王城へ赴こう」


 俺の指示に仲間達は頷き、速やかに行動を開始した。






 報告書にも記載されていたが、魔王城周辺には魔物もいる……のだが、その数は非常に少なく、今の俺とソフィアならば容易に対処できるくらいのもの。ただレベル的には大陸内でもトップクラスに厄介……まだ魔王や魔族が発していた瘴気が残っているため相応に魔物も強いのだが、俺達の敵ではなかった。


 魔王がここに城を建造する前にも魔物はいたし、レベル的にも強くはなかったけど、瘴気の影響で強力になった……それが今でも残っている故に、生態系が元に戻るようなことはないらしい。全ての魔物を駆除しても瘴気がある限りは……おそらく何十年という歳月を必要とするだろうな。


「見えたな」


 俺は天を突くような魔王城を視界に捉えて呟いた。改めて思うのだが、魔界へ赴き見た魔王城の姿とそれほど変わらない。


「魔界へ赴いたことで、見方も少し違いますね」


 ソフィアも同じ感想を抱いたらしい。こちらは「そうだな」と応じつつ、城の中へ。


 魔物の気配は一切ない。城の周辺には森なども広がっているのだが、そこから来るようなこともないらしい。城の周りは瘴気もあまり存在していないのだが、魔物が本能的に近づくのを避ける何かがあったりするのだろうか?

 明かりの魔法で建物の中を照らしながら、俺達はゆっくりと進んでいく。建造物そのものに魔力や瘴気が存在しているわけではないのだが、それでも硬質な……何か、人の恐怖を煽るような空気感が生まれている。


「地下……あった、ここだ」


 俺は地下へ続く階段に到達し、躊躇なく足を踏み入れる。階段を抜けた先にはさらに通路があり……やがて、俺達は目的の場所へ辿り着いた。


「この扉、ですか」


 ソフィアが小さく呟く。目の前にあるのは、重厚な両開きの扉。触ってみると、わずかながら魔力を感じ取ることができる。


「この向こうに、おそらく星神の本体へ繋がる道がある」

「よくよく考えれば、魔王は魔法を使い自らを強化した後、決戦に臨むつもりでした。とすれば、このような場所があってしかるべき、でしたね」

「まあな……ただ、俺達は星神への道というものを理解していなかった。だからまあ、リズファナ大陸へ行くまではここにこうした場所があるとは想像もできなかったさ」


 そもそも、リズファナ大陸で決戦と考えていたわけだし……で、調べてみるがやはり開かない。鍵が必要らしい。


「問題は鍵をどうするか、だな。最悪無理矢理破壊できそうだけど」

「ルオン様、可能ですか?」

「以前の俺なら、難しいと思うけど……魔力の共有まで果たした今の俺なら、十分できる」

『うむ、魔力の多寡から考え、今のルオン殿ならば可能だろう』


 ガルクが言う。俺はそれに小さく頷き、


「決戦の際、鍵が見つけられていなかったら無理矢理押し入るってことでいいな?」

『そうする他なさそうだな。魔界へ赴くタイミングで魔王城に鍵がないか調べるくらいしか、現状普通に開ける方法はなさそうだ』

「ま、ともあれ道は見つけた……後は、今ある作業を進めて盤石な態勢を築き……決戦の準備をしよう」


 俺の言葉に、ソフィアやリチャル、そしてガルクもまた頷いたのだった。


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