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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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道のありか

 組織解散を言い渡した後――仲間達はそれに従って次々とリズファナ大陸を後にした。最後に残ったのは俺とソフィアと子ガルクだけ。

 デヴァルスなんかは「選りすぐりの精鋭を集めてくる」と明言していたので、少なくとも天使については手を貸してもらえる雰囲気ではある……まあ、今の状況だと仲間達は共に戦ってくれるとは思うけれど。


 そうして残った俺達だが……最後までいたのには理由があって、ガルクに頼まれていくつか調べ物をするつもりだったのだ。


「カティとか残ってた方が良かったか?」

『いや、問題ない』


 そうガルクは言う……場所は王城の宝物庫。リーベイト聖王国が遺跡から発掘した古代の道具……それは武具であったり、星神に関する情報であったりと色々あるのだが、ここからも情報をとろうとしたわけだ。

 といっても宝物庫にある物品の検証はほぼ終わっているとのことで、現状手に入れた情報以上のものはなさそうなのだが、それでも念のためというわけだ。


『道具などの精査については我が魔力を探れば終わる。資料についてはそれほど情報は必要ないため、あっという間に終わるな』

「……何か必要があれば、提供しますが」


 と、宝物庫へ案内したエメナ王女が告げる。だがガルクは、


『情報だけで十分……さて、ルオン殿』

「ああ」

『星神のまがい物であっても、打倒することはできた……が、懸念はあるな?』

「まあ、仮にも星神の力が宿っていた以上、こちらの手の内を明かしたことになる。もちろん全てではないし、打開策はあるが……何か、懸念を解消する案があるのか?」

『それについては今後の鍛錬次第だな……ふむ』


 俺と会話をしながらガルクは宝物庫を見回す。


『少しだけ時間をくれ』

「ああ、もちろん」


 ――それからいくらか作業をして、俺達はエメナ王女と改めて挨拶をする。もし何かあればすぐに駆けつけると告げたら、彼女は小さく笑みを浮かべた。


「ありがとうございます。皆様との縁については、是非維持したいと考えていますので、よろしくお願いします」

「ああ、こちらこそ……大変だろうけど、頑張ってくれ」


 そしてソフィアとエメナ王女は挨拶を交わし、俺達は城を出た。既に屋敷は引き払っているので、後は帰るだけ……と言いたいところなのだが、


「領主フォルナにもちゃんと言わないと」

「そうですね」


 場合によっては今後の戦いに協力してくれるだろうか……などと思いつつ俺達は領主フォルナの屋敷へ赴く。ちなみに移動は高速移動の魔法。もう隠れる必要もないし、移動時間が大幅に短縮できるためだ。

 そこで一連の事件について、顛末を語る……彼女は星神の降臨が遠のいたことについては喜び、


「この国の混乱も、想定以上の成果によって非常に小さくなった。それについても喜ばしい」

「そうだな……俺達は決戦準備に入るけど、もし情報が欲しくなったら頼っても?」

「ああ、当然だ。どんなことでも手伝おう」


 そんな会話を成して、俺達は別れた。ガルクが何やら連絡を取り合うために作業をしたので、決戦前に話をする機会だってあるかもしれない。

 そして俺達は、仲間達と遅れる形でリズファナ大陸を離れた……その間にも、ガルクは作業を行い俺とソフィアは鍛錬を行う。結果から言えばバールクス王国へ辿り着いた時、俺達は星神のまがい物と戦闘した時と比べいくらかレベルアップできた。


 確実に、星神との決戦に際し、体が対応し始めている……これは最大の脅威に対し本能的に体が覚醒しているのだろうか? ともあれ、自分自身がまだ成長できることについては、良かった。

 そして俺とソフィアは王と話を行い、組織のある建物へ。もちろん人気はほとんどない。基本的に全員暇を出したわけだが、当然そこには例外もいて、


「やっほー」


 その内に一人である、サラが俺に声を掛けてきた。


「お疲れ、お茶でも飲む?」

「……ここにいるだろうな、という推測はしていたけど、一応確認するぞ。何でいる?」

「今更郷里に帰ってもやることはないしねー。それに、事務方がゼロ人になったらかなり大変よ?」

「仕事をしているのか?」

「まあね。自分にできる範囲で頑張っているから、その辺りはよろしく。残業はしないからね」


 俺はわかったと答えつつ……、


「サラ」

「うん?」

「ありがとう」

「ルオンに礼を言われるなんてね……ま、私はやりたいようにやってるだけだから、気にしなくていいよ」


 そう言い残して事務室へ彼女は引っ込んだ。で、残っているのは、


「おかえりなさい」


 告げたのはロミルダ。ソフィアが近寄り、二人は会話を始める。

 ロミルダがここにいるのもある意味当然……彼女としても故郷はもうここになっているのだろう。


 そんな彼女達が会話を成す中で、俺は残っている人物達へ近寄る。今度は男性二名。オルディアと、リチャルだ。


「二人は、いいのか?」

「俺はそもそもここへ戻ってくるつもりだった」


 と、リチャルが先んじて答える。


「もっとも戦力としては微妙だ。後方支援としても役立てるかどうか」

「いや、俺としてはありがたいよ」

「そう言ってもらえると、ここに残った価値があるな……他の仲間が戻ってくるまでに、最善は尽くすよ」


 リチャルの言葉を受け俺は頷き……もう一人、オルディアへ顔を向ける。


「そちらも魔界に一度帰る選択肢は……ないか」

「そうだな。俺もリチャルと同じだ。ここで剣を振り、決戦に備えておく」


 ――これで、ここにいた人物は全員だ。あれだけ騒いでいた空間が寂しく思えたが、なんだか新たな始まり、という気もしてくる。


「よし、それじゃあ星神と戦うための道について確認しようか」

『ルオン殿、改めて問うがどこにある?』


 子ガルクが俺の右肩に出現。それに対しこっちは、


「そもそもガルクがいまだ考察できていないのが意外なんだけど」

『む、ということは我も知っている場所か』

「ああ、思えばなぜあの場所に……という疑問点はあった。でも星神打倒を考えていることを踏まえたら、確かにあの場所が正解だったんだ」


 そこで俺は、ガルクへ……ソフィアやロミルダが近づく中で、告げた。


「魔王城……あの魔王が決戦を行おうとしていた以上、間違いなくあの場所に星神の道が存在する――」


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