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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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世界全土

 リズファナ大陸における星神との戦いに勝利した……まがい物ではあるけれど、その事実に俺はここまで来たのだという充足感に包まれながら、消えゆく光へ視線を送り続ける。

 そして完全に消え去る瞬間、ボールくらいの大きさとなった光の中に、気配が生まれた。けれど魔力の大きさから何もできないまま消滅する……その時だった。


『――頼む』


 声が聞こえた。紛れもなくアランからのもの。けれどそれ以上続くことなく、光は完全に消え去った。


「……頼む、か」


 それは星神を倒してくれという意味なのか、それとも他に……ただ少なくとも、星神によってあんなことになってしまった事実に対し、思いはあったようだ。


「別にアランの思いを背負うわけじゃないが……敵はとるさ」

「そうですね」


 ソフィアも同意する。そして俺達は光のあった場所に背を向ける。


「仲間達に報告しないといけないな」

「はい……そして、いよいよですね」

「ああ、今度こそ本当の……決戦になるな」


 もっとも、その前に……胸中で呟きつつ、俺とソフィアはゆっくりと歩き出したのだった。






 その後、戦場となった場所について異常がないかを確認した後、俺達は屋敷へと戻る。ここで勝ったということで宴会でもやろうじゃないか、ということになった。王都を救った時もなんかやっていた気もするけど……ま、いいかと思い俺はその輪の中に加わった。

 そうして戦いが終わった余韻に浸りつつ翌日を迎え、俺とソフィアは戦勝報告をエメナ王女へ行うため城へ赴いた。会議室に通されて顔を合わせた彼女と話をすると、頭を下げられた。


「最後の最後まで、本当にありがとうございます」

「エメナ王女のおかげでもあるさ……ただ、これからが大変じゃないか?」

「はい。賢者様が見た未来と比べれば、大分良いとは思いますが、それでも多大な混乱が存在しています。これを解消するには、年単位の歳月が必要かもしれません」


 今回は王族にまつわる話だったしな……彼女としても肉親と戦ったわけで、複雑な心境であることは間違いないはずだが――


「王家もまた、変わっていく必要性があるでしょう」


 俺の胸中を読んでいたかのように、エメナ王女は話し始める。


「最終的な結末は、きちんとお伝えします……どのような結果になるかはまだわかりませんが、私を含めた王家が納得のいく結末……そのために、尽力していきたいと思います」

「頑張ってください」


 ソフィアが声を上げるとエメナ王女は小さく頷き、


「それで、皆様は今後どうされるのですか?」

「それについて、エメナ王女にも伝えておこうと思う」


 俺はそう前置きをして、語り始めた――






 一連の報告を終えた後、俺とソフィアは屋敷へ戻り仲間達と話をすることに。食堂にここまで戦ってきた面々が集い、俺は口を開いた。


「リズファナ大陸における戦いは、終わりを迎えた……賢者が見た未来を辿ることなく、騒乱は終結した……星神が降臨するのはエメナ王女が新たな女王として即位した後の話になるが、現時点でわかっている情報の上では、彼女の即位と星神の降臨については因果関係がない。騒動に乗じて、星神を降臨させる手順を何者かが施すというのが条件だからな」

「その条件が消えた以上、ここで星神は現れないと」


 口を開いたのはクウザ。俺は首肯し、


「そうだ。あとこの国の将来、エメナ王女が女王となるのかは……この国の話になるし、部外者である俺達が干渉すべきことじゃない。少なくとも王女は納得のいく結末にすると言っていたから、俺達の出番はもうない」

『そして次は、星神との決戦だな』


 俺の右肩にいる子ガルクが言う……いよいよ、というわけだ。全員の顔も引き締まる。


『しかし、現段階で星神へ到達する道は見つかっていないため、まずはその調査から始めることになる。ルオン殿には候補があるようだが』

「まあね。でもそれは一度シェルジア大陸に戻って検証してから言おうと思う」

『なるほど……さて、我々はいよいよ決戦を残すのみとなったが、リズファナ大陸で星神が降臨する可能性がなくなったとはいえ、星神降臨の未来そのものは消えていないだろう。よって、星神が降臨する兆候……その辺りを調べる魔法を、今から構築しようと思う』

「それは、私達の力が必要?」


 問い掛けたのはカティ。それに対しガルクは小さく首を振った。


『いや、これについては既に別に動いている。一ヶ月……その程度あれば、世界各地で観測ができるはずだ』

「世界全土を、か」


 俺は改めてガルクの言葉に驚く。そんなことができるようになったのは、このリズファナ大陸で得られた星神に関する情報や、賢者の真実……それらによるものだが、だとしてもやはり世界全てをというのは驚嘆に値する。


『これも、核心的な情報を得たが故に、だ……現在急ピッチで作業を進めている。完成した際にはルオン殿にも報告するし、常に状況がわかるようにしておく』

「ああ、そうだな……これで、星神との決戦までに、必要な対策は全て完了したと言っていいだろう」

『うむ……ならば次の話、だな』


 ガルクは俺に言う。こっちは小さく頷いて……みんなに話し出す。


「いよいよ決戦……なわけだが、ここで一度休息をとりたいと思う」


 仲間の顔に休息? と疑問符が浮かぶのがわかった。


「具体的に言うと、一度組織を解散する……といっても、別に俺だけで戦うとか、そういうわけじゃない。本来ならばリズファナ大陸の騒動を解決した後、決戦だと思っていたが時間が生まれた。この余裕の間に星神の居所を探り、決戦準備を整える……けれど、星神と戦うこの場にいる仲間には、今一度見つめ直して欲しい……死ぬかもしれない、この世界最大の脅威である星神と戦うのかどうかを」


 俺の言葉に、仲間達は全員沈黙する。


「俺の本心としては、共に戦って欲しい。けれど強制するつもりはない。この場で解散し、郷里へ戻り……星神と戦える算段がついたら、改めて確認へ向かう。だから、この時間を、大切にして欲しい――」


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