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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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プログラム

 ノヴァからもらった資料には、今回の騒動に関わった貴族などの人物リストが上がっていた。エメナ王女ではなく俺に提供したのは、まだローデンに結びつく人間が城内にいるかもしれないとのことで、警戒したためらしい。

 その中には、ローデンが私的に関わっていて、行方不明になっている人物のリストが入っていた。その中の一人は、修行中に調べていたオルゾという人物についての詳細もあった。


「ローデンという明確な敵が出現したことで、捨て置いたけど……行方不明になっているのか……」


 ただ、それなりに地位があって突然いなくなれば騒動になるけど……少なくともエメナ王女からこうした話は聞いていない。


「王都在住であればすぐに気付くでしょうから、地方の貴族でしょうか」


 ソフィアが推測する。確かにそれなら、いなくなってもすぐには気付かない……か?

 で、問題はこの資料の書き方。どうやらこれ、ローデンは懇意にしている貴族と会おうとしたらいなくなっていて、その調査をした結果、みたいな書き方だ。


「これは、単なる記録ではありませんね」


 ソフィアが感想を述べると、俺は小さく肩をすくめる。


「さっきノヴァはローデンが自分に罪をなすりつけ……ということを言っていただろ。おそらくこれは、そういう関係で用意されていた物だ」

「なるほど、ノヴァが一連の事件を主導していて、それに対し情報を集めていたら、行方不明者が……ということでしょうか」

「そういうこと。ローデンが関わってた人間がということだから、証拠隠滅の思惑なのか、それとも他に……この辺りについてはエメナ王女に資料を提出して、調べてもらおう」

「私達は動かないと?」

「貴族の捜索は国が行うべきだし、俺達としてはエメナ王女から助力を請われたら、助ける……という感じになるだろうな」


 俺は結論を出してから、資料を読み進める。


「この中で俺達に役立つ情報は……貴族が所有していた道具などが組織の手に渡ったと書かれている。無論、これは嘘で本当はローデンが独占したんだろ」

「それを用いて星神のまがい物を……」

「可能性は高そうだ。もしかすると使用した道具を割り出すことができれば、何かしら役立つかもしれない」


 そう語った後、俺は子ガルクへ話しかける。


「そちらにとって有益な情報はあるか?」

『うむ……行方不明となった者達についてだが、どう考える?』

「既に消されている可能性もありそうだが……」

『だとすれば……』


 ガルクは沈黙した。何事かと思い見守っていると、


『いや、ここについてはその状況を想定した上で、作戦を組むとするか』

「どういうことだ?」

『我の早合点かもしれないため、詳細は語らない。とはいえ』


 ガルクは一拍間を置いて、俺とソフィアへ告げる。


『星神のまがい物……それは。ともすれば我らにとって予想以上の難敵になるかもしれん――』






 そうして瞬く間に準備期間は過ぎ、俺達は星神のまがい物を破壊するべく動き出す。事前に打ち合わせた通り、俺とソフィアの二人が攻撃を行い、残る仲間達は全員で周辺の被害を防ぐべく援護に回る。ガルク他、神霊が中心となって、可能な限り対策を施した形だ。

 俺とソフィアについては……賢者に関する夢を見た後、練り上げた星神対抗の技術は形の上では完成した。王都での戦いなど、色々とゴタゴタしていたが、その間も欠かさず訓練はしてきた。


 ガルクは詳細を語っていないが、もし彼が推測している通りならば想定以上の力を持っているかもしれない星神のまがい物だが……俺達の能力なら、破壊は十分可能というのがガルク達の見立て。ここまで培ってきた鍛錬の成果を、ここで出すというわけだ。


 ガルク達が移送した場所は、王都から一番近い山の中……近い、といっても結構な距離はあるのだが、星神の使徒との戦いを振り返れば、距離があるからといって油断はできない。だからこそ、俺とソフィア以外は援護に回るわけだ。


『ルオン殿、準備はできた』


 ガルクが言う。俺は小さく頷くと、


「仲間達は?」

『既に配置についている。後は、まがい物を破壊するだけだ』


 俺は真正面を見据える。そこに移送した星神のまがい物があった。

 言ってみればそれは、白い光を放つ球体。大きさは人間……大人の平均身長くらいの高さと幅を持っている。しかもそれは不気味に光を発しながら浮いている。気味が悪いことこの上ない。


 ガルクによると、浮いているのは元々だったらしいのだが……そもそも、魔力の塊であるため重さなどはあまり意味がない。感じられる魔力は非常に濃く、本当にこれをローデンが作成したのか……と、首を傾げるほどだ。

 むしろこの力を利用した方が、目的を達成できたのでは……などと考えたが、道を生み出すために残していたものと考えると、もしかしたら星神降臨の際に何かしら別の用途で使うつもりだったのかもしれない。


 その辺りの詳細も尋ねておくべきだっただろうか……まあ、これについては話の本筋とは関係ないし、蛇足になるので今更か。


「……ソフィア」

「はい」


 返事と共に彼女は剣を抜く。俺もまた既に準備は万端……刹那、俺とソフィアは魔力を共有。さらに、ガルク達の補助をもってさらなる魔力を上乗せする。

 俺とソフィアの連携に加えて、さらなる魔力……それにより、かつてないほどの魔力の高まりを感じる。高揚感が全身を包み、戦意を高めていく。


 それはソフィアも同じだったようで、感触を確かめつつ星神を倒すという強い決意を感じ取れた。現時点でやれることはやった……後はこの技術が通用するのか、目前の相手にぶつけるだけ。


「……ガルク」


 俺は肩に乗る子ガルクへ呼びかける。


「この距離からでも間合いを詰めて切り込めるが……移送途中に反応などはあったか?」

『いや、まったく。ただ、一つだけ……周囲の魔力を探査しているようだ』

「探査?」

『この場合、外部に何があるのかを光自身が調べているといったところだろうな。つまりそれは、星神のまがい物が意思を持つ……いや、これは少し違うな。予めローデンが仕込んでいた命令がそうさせているのか』


 機械みたいなものだろうか? プログラム通りに動く存在……そこで光を注視。確かに、何かを探るような魔力を周辺にばらまいている。


『現時点では、何もしてこないが……』


 そうガルクが告げた直後、俺はさらに一歩前に足を出すと……明確な、変化があった。


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