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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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まがい物

 最後の最後までローデンは協力的であり、エメナ王女から頼まれていた質問についてもあっさりと回答を得た。時間も想定していたより短く、俺は部屋を出ようとする。


「最後に、一ついいか?」


 扉を開ける寸前、ローデンは俺の背中へ向け言葉を投げた。


「仮に、星神との戦いに勝ったとしても、それで終わりではないはずだ」

「そうだな……でも、ローデンのやり方だってそこは同じじゃないか?」

「打開する術はあった……というより、世界を創生できるほどの力があれば、星神の性質を利用して……」

「なるほど、な。もしかすると遙か未来は、それを成し遂げた世界だったのかもしれないな」


 ローデンではない誰かが、壊れた世界を創生したのかもしれない……そんな風に未来へ思いを馳せつつ、


「それに対する答えは一つだ……俺は、その点についてもわかっている。だから、戦いが終われば……それを解決するために動くつもりだ」

「できると思うか?」

「わからない。単純に敵と戦うのとは違う……でも、きっと――この世界に知識を持って転生し、力を得たのはそれを成し遂げるためかもしれない」


 別に賢者からそう言われたわけではないけれど……それこそ、俺の――いや、転生者の役目かもしれないと考えながら、部屋を後にした。

 そしてガルク達に手に入れた情報を提供する。星神の縮小版……人工的な星神については、ローデンが星神から得た情報を用いて、地底から力の塊を引き出し、それを利用したと語っていた。その力の塊と、精霊ウィスプの性質……二つを利用し、人工的に星神の性質を持ったものが生まれたとのこと。


 問題はその力の塊が何なのか……星神が教えたということは、何やら企んでいるのは確定だろう。ローデンにそれを教えた意図は何なのか? そして、どういった性質を持っているのか――


「ガルク、破壊できそうか?」


 屋敷の一室、資料を一読した子ガルクへ問い掛けると、


『少なくとも、ローデンによる情報では可能だろう……しかし、星神が直接情報提供したとのことだ。ローデンも把握していない何かが眠っていてもおかしくない』

「まあ、そうだろうな……」

『問題は、どういう意図を持って力を渡したのか、だな』

「ガルクもそこを懸念しているか……俺も同じだ」

『最悪のパターンは……』


 ガルクの言葉が止まる。どうしたのかと眉をひそめていると、


『……正直、これが一番可能性が高い』

「それは何だ?」


 ガルクは詳細を語る。俺としては星神がやりそうだと思いつつ、


「ただ、もしそれを実行していたとしたら……星神は、俺達がこの大陸を訪れ、彼の計略を破るというのを確信していたということにならないか?」

『星神からすれば、別にタネが明かされようが、明かされまいがどちらでも良いのだろう。おそらくだが、事が露見した際の我らの反応に期待するのと同時に、ローデンの策が失敗に終わり、どう反応するのか見たいということかもしれん』

「前者はわかるが、後者はどういうことだ?」

『我らが想定している通りだと考えれば、人工的な星神は生み出した時点で失敗作だ。どうあがいても暴走するだろう……少なくとも、ローデンの手に負えるものではない。つまり、これを用いての星神降臨は……どのような形であれ、ローデン自身が想定するものとはかけ離れていることだろう』

「それを見て、ローデンがどう反応するのか……本当に、星神は趣味が悪いな」

『うむ、違いない』


 まあ、これは俺達の予測が当たっていればの話だが……ただガルクの想定については、おそらく正解だと俺も心の中で確信する。

 なぜなら――夢などで相まみえてきた星神の姿を思い浮かべる。そういうことをやりそうだと思ったのだ。


「もし、ガルクの考えの通りだったとすれば、どうやって戦う?」

『正面突破が基本だろうな』

「……つまり、策はなし?」

『無論ゼロというわけではない……が、我々は星神に関して知らないことが多い。よって、真正面から激突することが、もっとも効率的で効果的という話だ』


 なるほど……まあここは俺達がやってきたことを、信じるしかなさそうだな。


「よし、それなら準備を……」

『うむ。ルオン殿はソフィア王女と連携の確認をしてくれ。こちらが相応の準備をする』

「どういう布陣だ?」

『人工星神の迎撃はルオン殿に任せ、他の者達は被害が及ばぬようにサポートする……魔力量などを考えても、ルオン殿達だけで対処は十分可能だと考える。我はローデンが知り得ない何かがあるのを警戒し、いざという時に対応できるよう備えておく』


 段取りが決まっていく……まがい物とはいえ、星神と戦うことになる。例えそれが人の手によって創り出されたとしても、星神本体の力を有しているのは間違いない。

 戦い方を間違えれば、星神の使徒と交戦した時と同等の過酷さになるかもしれない。しかも今回は人々が暮らす大陸の中だ。絶対に、被害を生み出してはいけない。


『ルオン殿もわかっているとは思うが、星神の使徒と戦ったのと似た状況だが、大陸の中であることや、その力の質についても異なる点が多い。同一視はしないことだ』

「わかっているさ……俺とソフィアはいつでもいけるようにしておくよ」

『うむ、数日後には交戦に入ろう……それとルオン殿。一つ聞きたいことがあるのだが』

「何だ?」

『夢の中で星神が語ったことについて……現状、我らは星神降臨そのものを防いだと考えていい。この王都に眠る道については、封鎖されたままでそれを切り開く手段を敵側は失ったと考えられる……つまり、我々も星神と戦う手段がなくなった』

「ああ、それについては考えがある」

『考え?』

「あくまで俺の推測だから、確実とは言えないけど……これが正しければ、俺達は道を見つけられるはずだ」

『具体的な候補があるというわけか……それは?』


 問い掛けに俺が答えるとガルクは『なるほど』と告げる。


『仮にそうでなかったとしても、ルオン殿の推測を利用して、しらみつぶしに探してもよさそうだな』

「ノーヒントよりは、ずっとか良さそうだな……そういうわけで、俺は心配していない。だから遠慮なく星神のまがい物を壊して、この大陸の事件を終わらせよう――」


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