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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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執着と決着

 おそらく、ローデンが最後に動こうとしたのは、自ら命を絶つためだったのでは……つまりそれだけ、星神降臨に執着していたというわけだ。相当大がかりな作戦までやる以上、その執念は凄まじいものだった。


「さて、残る問題は地下の魔力か……」


 さらに言えば、ローデンを倒してもまだ残党がいないとも限らない。ここはエメナ王女と連絡をとり、どうすべきか考えるとしよう。


「とはいえ、場を離れるにしても……ここは放置できないな」


 その時、後詰めとして駆けつけたオルディアとクウザがやってきた。俺は事情を説明して二人にこの場を任せ、一度城へ戻ることとなった。

 周囲はまだ時を止める魔法が作動している。これについてはどこかで魔力を溜めて継続的に発動しているのだろう。これもどうすれば解除できるか見つけ出さなければならない。


「でもまあ、敵のリーダーを倒した以上、探すのはそう難しくない……か?」


 呟きつつ、俺は城への道を急いだ。






 ――ローデンを打倒してからおよそ一時間後、時を止める魔法を維持する場所を発見し解除。そこからさらに一時間かけて、魔力無効化も解除。町はようやく元通りになった。

 とはいえ、人々からすれば突然意識が消えて気づいたら時間が経過していた……という無茶苦茶な状況になっている。どうするのかと思いつつ、エメナ王女が「任せてください」と明言したため、俺達は介入しなかった。まあ事情説明するにしても俺達は部外者だ。やれることはないし、任せる他ない。


 で、俺達は残党がいないか捜索したのだが……結果的に言えば、何もなかった。まだ鏡の破片とか、星神の縮小版と言っていたもの以外に、ローデンが仕込んでいた何かがあるとは思うのだが、魔力無効化を解除しても発動しないし、町を一通り調査しても何もなかったため、ひとまずは問題ないだろうという結論に達した。

 後は時限爆弾みたいに発動しないかが不安だが……ここはエメナ王女を始め、国側がしっかり対処するとのこと。古代の技術を応用した道具などがあるため、決して不可能ではないだろう。いざとなれば、俺達も協力すればいい


 よって、俺達は星神の縮小版とローデンが言ったものに対しどうすべきか検討し始めたのだが、ガルクが一つ提案をした。


『空間ごと移送するとしよう』

「移送……?」

『うむ。空間系の魔法によって、一定の区画をまるごと移動させることができる』

「そんな魔法いつ開発したんだ?」

『星神の研究を重ねた事による副産物だな。役に立って何よりだ』


 どういう経緯でそんな魔法を生み出すのか疑問だけど……まあとやかく言っても始まらないか。


「それで、どこに移送する?」

『人がよりつかない場所であれば……なおかつ、戦闘になっても迷惑にならない場所が望ましいな』

「……精霊ウィスプを媒介とした魔力だ。相当危険なものだろうな」

『うむ。星神の縮小版……とローデンは言っていたようだが……もしそれが本当であれば、前哨戦ということになりそうだな』


 つまり、星神と戦う前の……無論、本物と比べればその能力は比較にならないかもしれないが、星神を模した存在であるなら、本物との戦いに何か生かせるものがあるかもしれない。


『ルオン殿、いつ何が起こるかわからん以上、早急に実行すべきだな』

「そうだな……ガルク、いけるか?」

『うむ』


 ――そうして、神霊ガルクが代表して魔法を行使。地下に存在していた魔力を空間ごと、確保することに成功した。

 それをまずは、ガルクが責任もって転移する……と、ここでデヴァルスなんかも合流した。戦いということで駆けつけたわけだが……結局、出番はなかったというわけだ。


「悪いな、参戦できなくて」

「そっちはそっちの役目があったから……ガルクに手を貸して欲しい」

「無論だ。移送魔法……異空間を形作り領域を作っている天使の応用技術でもある。任せてくれ」


 神霊と天使が協力し、星神の縮小版は王都を離れた……そうした光景を見ていて俺は、思う。

 ローデンは言っていた。星神を真正面から倒すには、世界の者達が総出で戦わなければならないと。それは紛れもなく事実だろう……ただ俺は、それに近い状況を作り出せている。


 精霊を始め、天使や竜、果ては魔族まで手を結んでいる……おそらく、これが星神を討てる最後のチャンスだろう。結果的にゲームの知識を使い、世界を救い……その結果、星神と戦える状況を得た。

 もっとも、本当に「戦える」のかは、実際に星神と相対しなければわからないわけだが……俺は一度、あてがわれた屋敷へ戻った。後処理をエメナ王女に任せ、ソフィアなどは戦いの後片付けなどをしていたが、俺は動き回っていたため先に休むべきだと言われたのだ。


 疲労感についてはないが、それでも少し頭の中を整理したいのもあったため、俺は戻ってきた。町中はまだまだ混乱が続いているが、国側が動いているし、大丈夫だろう……そう思いながら、俺は自室へ入った。


「人工的な星神……ローデンが作ったそれを破壊すれば、この大陸での騒動は終わりかな」


 ここまでやった以上、星神を目覚めさせるような出来事はもうないだろう……結局、ローデンがどうやって星神を目覚めさせようとしたのかは不明なままだけど……まあ、ここまで来たのだから知る必要はないか。

 あと、人工的に星神を生み出した理由は……最終手段だと語っていたし、これはバックアッププランだったはずだが、具体的にどうするつもりだったのだろうか? やり方そのものはかなり無茶だったのは想像できるが……。


「……これも、考えたって仕方がないか?」


 ただ、モヤモヤ感は残るな……降臨させるプロセスについては、知っておくべきだっただろうか?

 ローデンなんかは捕らえているため、いずれ詳細はわかるかもしれないけど……ここは国側がどう判断するのか任せるしかないか。


「今は、勝てたことを喜ぶとしよう」


 そう言いながら、俺は窓の外を眺める。夕刻に差し掛かろうとしている。空腹ではあったが、少し眠気もある。夜まで仮眠でもとるか……そう思い、俺は椅子に座って眠ることにした――


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