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賢者の剣  作者: 陽山純樹
神霊の力

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一時帰郷

 神霊の力を、剣に……それは間違いなく大陸最強の剣となる――確信できるな。


『神霊や精霊の力には一定の親和性がある。それらの力を集め束ねることは難しい作業かもしれないが、もしできれば相乗効果が生まれることになるだろう』

「なるほど、それなら魔王に対する切り札になるな……けど、それに耐えられる素材はあるのか?」

『候補はある』


 それは――と訊こうとした瞬間、ガルクから返答が。


『西の果て……大木があることは知っているな?』

「ああ、もちろん。聖樹コロナレシオンだろ?」


 ――大陸の最西端から海を渡った先に、小さな島がある。そこには多大な魔力が溢れ、その影響を受け聖樹と呼ばれるものが存在している。確かそれもゲーム上名前は出ていたが、直接出てはこなかった。


 魔族や悪魔もその神聖な力を前に近づけなかったという設定があったはず。それほどの場所……言わばもっとも神聖な場所に存在する、聖樹。


『その聖樹を守る精霊がいる。名は聖樹から取りコロナと呼ばれているのだが……その者は聖樹の力を利用し、素材を生み出すことができる』

「素材を……?」

「聖樹は地中に含まれる鉱石や金属すらも取り込む。そうして成長する大木の力を引き出し、様々な特性を持つ融合物質を生み出すことができる。我ら神霊や精霊の魔力と強く結びつく素材を創れば、より強力な物となるはずだ』

「……確認だが、行ってすぐに協力してもらえるのか?」

『わからん。とはいえ屈服させるなどといった条件は必要ないだろう。もっとも――』


 と、ガルクは意味深な笑みを浮かべた。


『屈服など力で対処できない以上、逆に面倒かもしれんが』

「……なら、どうすればいいんだ?」

『まずは直接赴いて話をするしかあるまい』

「わかったよ……なら、今後の方針としては――」

「まずはソフィア様の目的である精霊の契約を行いましょう」


 ここでレーフィンが述べる。


「このまま南へ赴き、ウンディーネの所へ」

「当初の予定通りだな……なら、それでいこう」

『南へ行くのならば、貴殿は水王アズアとの戦いだな』

「……簡単に言ってくれるけど、無茶苦茶面倒だよな?」

『無論だ。しかし大陸の崩壊をさせないためには、他の神霊の力を借りる必要が出てくるのは間違いない』


 それは俺にしかできない以上、やるしかない。


「ガルク、他に決めておくことはあるか?」

『今のところはない』

「なら、話し合いはこれで終了だな……ガルク、頼むよ」

『わかった』


 話し合いが終わり――深夜ということで、俺はガルクの許可を得て少々休むことにした。






 移動を開始したのは陽が出た早朝。最初はすぐにガーナイゼへ帰ろうかと思ったが、ふと寄り道したい衝動に駆られ、方針を変更することにした。


「レーフィン、ちょっと寄りたい場所があるんだが」

「構いませんが、どちらへ?」

「俺の郷里。使い魔とかを用いて観察はしているんだけど、こういう機会もあまりないから直接様子を見ておきたい」

「故郷ですか。構いませんよ」


 なんだか興味津々な様子……俺の故郷だからって特別なものは何もないんだけど。

 というわけで移動を開始。その直後、頭の中でガルクの声がした。子ガルクが体の中にいるためだろう。


『貴殿は元々その町の出身なのか?』

「いや、本来は両親共に貴族で小さい頃は屋敷で暮らしていた。政争に巻き込まれて没落し、故郷である町に落ち着いた」

『物語を把握していても、そうした境遇を修正するのは無理だったか』

「子供だったからな。それに政治闘争なんて、見方によっては魔族との戦いより厄介だと思わないか?」

『ただ倒すだけでは解決しない問題だからな』


 そうした会話を行いつつ、俺は急ぐ。ガルクのいる森から数時間。結構飛ばしたせいもあってか、故郷の町に到着した。


 まず俺は実家へと足を運ぶ。二人は唐突な帰郷に驚きつつ、出迎えてくれた。

 まだ旅をしていると言うと、母は「頑張りなさい」と声を掛ける。ゆっくりしていこうか少し迷ったのだが、結局会話もそこそこに実家を後にした。


「一日くらいゆっくりしても良かったのではありませんか?」


 レーフィンが問い掛けるが、俺は首を左右に振った。


「全て終わってからにするよ……ソフィア達を連れて」

「今はただひたすらに前へと……ということですね」

「そうだ」


 そこで腹が鳴った。そういえば今日はまだ何も食べていないな。ここで俺は馴染みの飯屋へ行こうと歩く。


 途中、住人から「久しぶり」と声を掛けられる。俺は町では腕の立つ人物だと周知されているので、魔物との戦いはどうだと話し掛けてくる人もいる。それに俺は世間話くらいの感じで答えつつ……目的地へ到着。


 まだ店を開けていないかと思ったのだが、やっていた。気分屋な人で朝から始めることもあれば、昼前に開けることもある。そういう風変わりな人だが腕は確かで、町の中でも評判がいい。


 中に入ると、店主が俺のことを見て「久しぶりだな」と声を掛けてきた。


「帰郷していたのか?」

「旅の通り道でね。変わっていなくて安心したよ」

「そうか」


 店主は笑みを浮かべつつ、俺のことを注視する。


「なんだ、少しはたくましくなったかと思いきや、見た目はそんなに変わらねえな」

「どうも」

「それで、注文は?」

「そうだな……いつものを一つ」

「あいよ」


 店主は調理を始め、俺は店内を見回す。朝で開店直後なのか俺以外に人はいない。調理をする音が室内にずいぶんと響く。


「この町の様子はどう?」


 なんとなく俺は問い掛ける。すると店主は調理をしながら返答した。


「周辺の魔物が少しばかり強くなり厄介になったみたいだが、どうにか対応できている。無論、何かしら問題はあるみたいだが……色んな国の首都が魔族によって制圧されたなんて話も聞くからな。ここはずいぶんと平和な方だろ」

「そっか……都を追われた人なんかも多いのか?」

「それなりに見るな。とはいえここから少し南へ行けば大きな町があるだろ? そういう人の目的地はもっぱらその町だから、ここに腰を落ち着かせるという人間は少ないのかもな」


 ひとまず混乱はなしか。使い魔で定期的に情報を収集してはいるが、こうやって現地で色々と事情を知れたのは大きな収穫だ。


「魔物が強くなっているらしいけど、数の方は?」

「以前と比較して多くはなったな。つい先日も魔物の討伐を行ったばかりだ。その中でちょっと強い奴もいたらしくて、その討伐に加わった人物が怪我していたはずだ」

「怪我……討伐に加わったという言い方からすると、外部の人間なのか?」

「そうだ」

「で、怪我をしているということは、今も町に?」

「ああ、いるよ。二人組なんだが、色々助けてもらった」


 俺は少しばかり興味が出た。魔物の討伐に参加してもらったということもあるし、挨拶くらいはしておくか。


「宿はどこ?」

「ミハルさんの宿だ。会いに行くのか?」

「うん。ちなみに名前は?」

「片方しか知らないな。名前を知らない方は別嬪さんで、町の男も色々と噂していた」

「女性……戦士? 魔法使い?」

「両方とも魔法使いだ」

「両方?」


 珍しいな、そういうパーティー構成は。まあゲームでは魔法使いでも武器を持って戦わせることは可能だったので、魔法使いでも前衛後衛とか役割があるのかもしれない。

 俺は名前くらいは聞いておこうかと思い、口を開く。


「で、名前は?」

「ああ……別嬪さんの相方は男で、恋人って感じではなさそうだが、結構よさそうな雰囲気のパートナーって感じだな。名前は――」


 スープをかき混ぜながら、店主は語る。


「――リチャル、という名前だったはずだ」


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