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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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降臨に必要な手順

「さて……見つかったからには、戦うしかなさそうだな」


 あくまで悠長な態度で男性は告げる……魔力無効化という状況下であるため、俺の能力については看破されることはない……魔力で露見しないということを考慮に入れると逃げられる可能性が低くなるので、ある意味メリットでもある。


 俺は黙ったまま剣を構えた……俺の姿はゲームなどに基づいたルオンに近しい。よって、俺を見て記憶にないのならば転生者である可能性は低い……まあ、なんというか俺は本来ネタキャラだし、ゲームのような多数の登場人物が出現するような媒体でない限りは出番そのものがなさそうだけど――


「一撃で――終わらせてやるよ」


 男性は告げ、こちらへ攻撃する。これまでのように名は名乗らない。どういうメカニズムなのか不明ではあるが、名を告げることで能力が強化されることを考えると、その必要性すらない……という風に考えているようだ。

 建物の中であるため、槍というのは不便なはずだが――その動きは鋭く、また同時に戦うには不便な状況であるからこそ、放たれた槍をかわすのが難しい……本来ならば。


 俺は相手の動きを完璧に把握し、鋭い刺突を避けることに成功。相手が目を見開き驚く間に、こちらは反撃に転じた。

 剣を一閃し、その刃は――相手へしかと入る。するとうめき声を発し、後退しようとした。


 だが俺はすかさず追撃を仕掛け、その脳天へ一撃決める……無論、峰打ちである。ただ魔力を込めて一撃で気絶するように調整はしてある……魔力を噴出せずとも、俺ならばある程度魔力を利用して立ち回ることができる。

 で、気絶した男性については……少し思案した後、外にエントランス近くに拘束魔法を掛けて置いておくことにする。騎士を見つけたら連絡をして……ひとまず外へ出た。


 周囲を索敵し、他に敵がいないかを確認する。この調子ならばローデンを見つけることも――


「……ん?」


 新たな気配を感じ取る。しかも今度は複数人。さらに俺は町を進む騎士の姿を発見する。

 そこで俺はまず騎士を呼びかけた。図書館に気絶する人間がいると知らせ、なおかつ索敵により敵を見つけたと報告。


「俺が対処するので、気絶した人を捕まえてもらえますか」

「わかりました……が」


 俺と話をする騎士は周囲を見回す。ここにいるのが俺一人であることを気にしているらしい。


 エメナ王女から俺達のことは聞いているはずだし、実力についても多少なりともわかっている……というか、ここまでの戦いぶりを見ればローデン達に十分対抗できると理解はできるが、それでも単独で戦うのは……と、気にしている様子。


「大丈夫です」


 俺はひとまずそう応じた。騎士はなおも逡巡した様子ではあったのだが……やがて小さく頷き、


「援護が必要であれば、すぐに連絡を」

「はい」


 返事と共に、俺は当該の場所へ踏み込む……そこは冒険者ギルドだった。王都に存在するためか、かなり建物が大きく、広いエントランスが俺を出迎えてくれた。

 そして、建物に入ったことで魔法を使わずとも気配を察することができた。人数は全部で五人。これだけの人数ギルドにいたということは、元々この場所で待っていたのか、あるいは戦況を見て集まったのか――


「……当てずっぽうで踏み込んだわけじゃない、か」


 物陰から男性が姿を現す。スキンヘッドの三十代くらいの見た目をした人物で、俺を見て目を細めた。


「一人、か……とはいえ、こんなところまで来る以上は、勝つための手段は持っているということだな」

「そうだな」


 俺が応じると男性はやれやれといった様子で肩をすくめる。


「舐められたものだな……戦況的に一人で十分などと考えているようだが……」

「油断しているわけではないさ」


 俺の言葉に男性は何も答えない。ただ何かを感じ取ったようで、


「……こちらもやられっぱなしというわけにはいかん。ここで反撃開始といこう」


 奥から、冒険者の姿をした面々が現れる。装備は統一性がなくバラバラだが、スキンヘッドの男を含め全員剣を腰に差している。

 その中で、注目したのは二階から現れた男性。二十代半ばくらいで、なおかつ金髪を持つ……その容姿は冒険者というよりどこかの貴族、という風にも見える。


 その男性は俺を見ると、眉をひそめた。


「……貴様」


 ん、何か知っているのか? 疑問が口を突いて出そうになったが、相手はそれ以上何も語らず黙って剣を抜き放つ。


「援軍を呼ぶのならば今のうちだが?」


 質問が来たのだが、俺は黙ったまま剣を抜く。それでこちらの意思は伝わったようで、スキンヘッドの男はどこか呆れた顔をした。


「いいだろう……とはいえ、状況を覆すには色々と手を打たねばならん。人質にでもなってもらうとするか」

「確認だが、あんたがここのリーダーってことか?」


 問い掛けてみるが相手は答えない……その間にも五人の剣士はじりじりと俺へにじり寄ってくる。


 ――とりあえず、ここにいる面々がそれなりの戦力であることはおぼろげに理解した。それと同時に、なぜこうした戦力を隠しておいたのかもわかった。


 ローデンがどういう目的で時を止める魔法を行使したのかわからないが、この状況を利用して何か事を起こす……星神を降臨させようとしていたのは間違いない。ただそれは、おそらく段階を踏むものだった。


 まず町全体の時を止め、続いて冒険者達を操り重要施設を攻撃する。公園に集中していたということは、そこに何かしらローデンにとって……星神の降臨にとって必要なことがあったのだと推測できる。しかし、それで終わりではない。俺の目の前には、明らかに操られた冒険者ではない人間がいる。それを踏まえると、町の重要な場所を制圧し、さらにどこかへ攻撃しようとしていたのではないだろうか。


 最終目標は、間違いなく王城……ここにいる面々は王城を制圧するための人員だとしたら、一応説明はつく。

 ならば、俺は……胸中で考える間に敵が迫る。そこで思考を切り替え――俺は、先んじて足を踏み出した。


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