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賢者の剣  作者: 陽山純樹
神霊の力

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対抗策

 森に到着した時点で、夜を迎えていた。下手すると深夜を超えたくらいだろうかと思いつつ、森へと入る。魔物は眠っているのか、気配もずいぶん少ない。ガルクが以前言っていた通りなら、起きていても襲ってくるようなことはないはずだけど。


 問題は、どこに行けばガルクに会えるのかということだが……ひとまず真っ直ぐ進むかと思った時、突如進行方向から魔力が漂ってきた。


「俺達の存在に気付いたようだな」

「そのようですね。緊張してきました」


 レーフィンが言う。俺は魔力が漂う方向へと歩を進め――やがて、以前ここを訪れた時ガルクと戦った、山道が見える開けた場所に出た。


 魔力はここで途切れているので、ここで待てということだろう。なんとなく周囲を見回してみるが、月明かりしかないためずいぶんと暗い。俺は明かりの魔法を使用し少し待っていると、山道の横手にある森の奥から、ガルクが出現した。


『ここを再び訪れたということは、我の力が必要か?』

「相談をしにきた。今回は同行者もいる」

『シルフの女王だな』


 言葉と共にレーフィンが前に出る。


「初めまして、ガルク様」

『うむ、以前忍びでここに来たことは特に咎めはせん。事情を説明してもらおうか』

「はい……ルオン様、ガルク様はどれほどご理解を?」

「魔王を倒すには条件がいるってくらいだ」

「ならば、私と同じ情報を話しても?」

「そうだな」


 同意し、レーフィンが話し出す。俺が喋るより円滑に物事が進むだろうということで任せたのだが……彼女が話し終えると、ガルクは俺に視線を向ける。


『以前は全て情報を話さなかったということか』

「まあ、転生したなんて話、すんなり受け入れてくれるとは思えなかったし」

『なるほどな。確かにそんな突拍子もないことを言えば、我も疑いの目を向けていたかもしれん……しかし、魔王の魔法か』


 ガルクは目を細め、俺に問い掛ける。


『魔王の目的はなんだ?』

「物語の中では魔王が大陸を征服したなんてシナリオは存在していなかったからわからないけど……この大陸を崩壊させ、魔族達の楽園を創るとか言っている魔族もいたな。けど、魔王が直接目的を言及したことはない」

『なるほどな。だが我らが黙っていると思っているのだろうか?』

「最終目標はたぶん、神霊だと思う。むしろ、ガルク達をどうにかするために色々立ち回っているなんて可能性もある」

『ふむ、そうか……今はその準備段階というわけか』

「おそらくね」


 返答するとガルクは、何やら考えつつ俺へと問い掛ける。


『対処しなければならない問題が二つあるということだな?』

「ああ。魔法に対する対策と、魔王をどう倒すかってことだけど……魔王を倒す手段は、一応考えている」


 俺の言葉に、ガルクとレーフィンは驚いた様子を見せた。


『そのやり方は?』

「――まず、強大な魔法を使う場合、魔王自身も大きく強化され、賢者の血筋以外の攻撃がほとんど通用しなくなる。ソフィアへ力を集中させていれば魔王が発する結界をどうにかすれば俺にも対応できたが、これはもうできない」

「ソフィア様のような人物が必須ということですね」


 レーフィンが言う。俺は小さく頷き、


「ああ。その上で……魔王を倒せる力を持つ武器を創り出し、血筋に渡す」

『武器だと?』


 俺は頷く――ゲームには賢者の血筋という重要なファクターが存在するわけだが、その代わりに魔王を滅ぼした伝説の剣とか、武器については存在していない。一応とある国で退魔の力を持つ宝剣とかは存在するのだが、ゲームで手に入ることはなかった。

 魔王を倒すのに必要な武器がないということは武器を作成、利用して戦力差の穴埋めができる。もっとも、現実となった今ではそれだけの力を持った武器を扱うには相応の技量が必要なので、強くなってもらう必要はある。


「魔王を一撃で倒せるくらいの物が理想だけど、そこまでは難しいかもしれないな」


 俺は肩をすくめつつ、レーフィンとガルクに説明を行う。


「修行時代俺は武器作成なんかも行っていて、色々試行錯誤した結果……理論的には魔王を一気に滅することができる武器を創り出すことは可能だという結論に至った。ただそれはあくまで理論。魔王を倒せるだけの力……つまりそれだけ魔力を抱える必要が出てくる。それに耐えうる素材があるのかという疑問がある」


 ゲーム上ではどんな素材でも最強武器にできたのだが、現実となった今では素材によって抱えられる魔力に限界がある。


『素材、か』

「ああ。膨大な魔力を抱えられる素材があれば、達成できる」


 まあ最悪所持している素材でどうにかしなければならないだろう……するとガルクは『わかった』と応じた。何か考えがあるようだが――ここで突如話を変えた。


『――強大な魔法に対する策はあるのか?』

「少なくとも、俺一人じゃ抑えきれないだろうとは思っているよ」

『……なるほど。そちらについては、我の方で案がある』

「それは?」


 聞き返すと、ガルクは笑った。


『――それを言う前に一つ確認だが、地底に存在する魔力の検証はしたのか?』

「ノームの王様が」

『ならば我も少し調べてみよう』

「本当か?」

『ああ。手はそれなりに思いつくため、対処はできるだろう』


 心強い言葉。だがガルクの話には続きがあった。


『しかし、だ。我単独では対処できない可能性が高い』

「どういうことだ?」

『魔王は腹心である五大魔族の力を利用し、魔法を発動させている。そうした魔族達に対抗するためには、こちらも我単独では対応できないかもしれん』

「――なら、答えは一つしかありませんね」


 レーフィンが言う。そこで俺も理解できた。


「つまり……他の神霊に協力を?」

『うむ。だが我が説得のために直接動くとなると騒動となるため、魔王側も警戒するだろう。そもそも、我が説得して素直に頷くような者達でもない』

「……つまり、それは」


 俺の言葉にガルクは再度笑う。先ほどの笑みは、そういうことか。


『貴殿の力を用いて屈服させればいい。我と同じように』

「簡単に言ってくれるけど……かなりしんどいよな?」

『だが我だけでは対処に限界がある』

「……わかったよ。神霊を説得するってことでいいのか?」

『我と比べ他の神霊は気性が荒いからな。説得ではなく従属させた方が話は早いだろう』


 大層だなあ……いやまあ、仕方のない話なんだろうけど。


「そうか……で、魔王の魔法の対策について他に必要なものは?」

『他の神霊の協力さえ得られれば大丈夫だ。対処の手法については任せておけ。魔王側に露見されるような馬鹿な真似はせん。信用してもらおう』

「もし問題があったら、すぐに連絡して欲しいけど……」

『いいだろう。ならば分身を貴殿に預けておく』


 と言った瞬間、ガルクの目の前でボン、と音がして何かが出現。

 手のひらサイズの子犬だった。


「え……なにこれ」

『我の分身だ。戦闘能力は皆無だが、これで我と話もできる』


 近寄って来るので手のひらに乗せてみる。見た目ガルクを小さくしたような感じだが、つぶらな瞳がずいぶんと愛嬌ある……なんか可愛いぞ。


『普段は契約する精霊と同様、貴殿の体の中に入ることができる。邪魔になるようなことはないはずだ』

「わかった。ありがとう」


 その瞬間、子ガルクが消えた。ここで俺はガルクに言う。


「魔法については、ひとまずガルクにお願いするとして……次に、魔王を倒すための手段だが、俺の案でいいのか?」

『貴殿の方法でいいだろう。素材面については候補がある。そして、注入する魔力はより強力なものがいいだろう』


 ……何が言いたいのかわかった。言葉を待っていると、ガルクはさらに語った。


『貴殿が神霊を従えることができれば、我らの力を剣に注ごう。賢者の末裔の力に加え、精霊や我ら神霊の力……まさしく、魔王に対する最高の切り札となるだろう』


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