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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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時が止まる

 騎士に応じようとした男性は、一歩前に進み出た後――地面をダン! と勢いよく踏みしめた。明らかにおかしい行動。それと同時、魔力が足下から拡散する……!

 攻撃――とはいえ、それに対して準備はある。国側は敵が大通りで魔法を使用した場合に備え、強制的に無効化する術式を仕込んでいる。これは古代に関する技術……その応用だ。


 敵がどのような動きをするかわからない。だからこそ、利用できるものは全て使う――そうエメナ王女は告げた。無論、星神に関わるものとは違い、ちゃんと安全性も確認している。強制的に無効であるため味方にも影響がでるのだが、一般の人が巻き添えになる可能性を考慮すれば、当然やるべきだと判断したわけだ。

 その結果だが……魔力は、消え去ることはなかった。無効化の魔法をすり抜け、魔力が周囲を駆け巡る。


「通用していない……!?」

『攻撃と認識していないな』


 ふいにガルクが発言した。


『魔力無効化効果は、明確に魔力が大気中に現れてから発動するのだが……全てを無効化していたら、人は常日頃発する魔力すらも強制的に無効にしてしまい、日常生活に問題が生じる危険性がある。よって害のあるものを消すという形にしたわけだが……』

「ということは、魔力を発するだけでは無効化は発動しない……」

『うむ。相手はこちらの準備を読んだ上で実行したのだろう。情報をもらっていたのか、星神に技術についてどう使うか推測できたか……後者であっても別におかしくはない。リヴィナ王子と共同で遺跡を探索していたのだ。そこで得られた情報から、作戦を割り出すことは十分可能だ』

「そうかもしれないが……さすがにもう悠長に語っている場合じゃ――」

『とはいえ、あくまで魔力を拡散させているだけだ。あれに攻撃的な効果が付与されていない以上、周囲の人々に怪我などはないはずだ』


 そして魔力が途切れた。使い魔については何も異常はないのだが……話をしていた騎士は動きが止まっていた。それだけではなく、周囲にいる人々も一様に動きを止めていた。

 まるで、時が止まったかのように……異様な光景だと思いながら使い魔を通し注視していると、足音が聞こえてきた。


 おそらくそれは、彼らを囲もうとしていた騎士……だが、ここで騎士と話をしていた男性が動く。


「――いけ」


 指示と共に冒険者達が散開する。それは立ち尽くす住民を狙うものではなく、路地裏から向かってくる騎士を迎え撃とうとするような……何をするのか理解した時、騎士達がとうとう冒険者達の近くに到達し、彼らに阻まれた。


「何……!?」

「読めているさ、そちらのやり方は」


 男性は腰の剣を抜くと――地面に突き立てた。ブン、と羽音のようなものが聞こえると同時に魔力が拡散。取り囲もうとしていた騎士達が、全員動きを止めた。


「これは……動きを止めて人質にでもするのか?」

『いや、そうではないだろう』


 俺の発言に対し、ガルクは答えた。


『魔法の解析が完了した。あれは文字通り、時を止める魔法だ』

「時を……?」

『魔力を浴びた人間の時間を停止させる……体を覆う結界のように、その空間だけ強制的に時間を経過させなくするといった感じか。攻撃魔法のように相手を傷つけるものではなく、あくまで人間の体を魔力で覆うだけであるため、攻撃だと認識されない』

「ついに時を操る魔法か……人間相手に限定するとはいえ、いよいよ無茶苦茶だな……」

『とはいえ、制約は多いだろう』

「何かわかるのか?」


 問い返した時、騎士に応対していた男性とは別の冒険者……杖を持つ小柄な女性が、進み出て、地面に杖を突き立てる。

 さらに魔力が膨れ上がる……もしや、町から城をこの魔法で覆う気か――


『心配するな、問題はない』


 ガルクが言う。刹那、魔力が城壁に触れるが……その魔力は霧散した。


『魔力そのものは非常に弱い。結界の類いによりあっさりと弾かれる程度……常に結界を体に張っておけば大丈夫だ』


 ガルクが語る間に魔力はさらに拡散する。それはまるで霧のよう広がり、あっという間に王都全体に広がった。それと共に、住民達の動きが完全に停止する。

 とはいえ騎士が常駐する施設を始め、結界などを張っていた場所は無事だ。俺達の拠点である屋敷も問題はない。


『まずは混乱の下になる騎士達を住民ごと排除したか』

「排除……」

『とはいえ剣を向けたりはしない……というよりはできないな。あの魔法、時を止めるというものだがそれは空間ごと保護する効果……斬ろうとしても固い金属に阻まれるような感触が返ってくるだけだろう』

「ガルク、ずいぶん詳しいな」

『距離はあっても、特性くらいは理解できる……さらに言えば、誰かが触れるなどすればあっさり解ける程度の魔法だ。でなければ、王都を覆うほどの規模にまで拡大はできないし、維持もできない』


 確かに……と、ここで騎士と相対していた男性が声を上げる。


「周囲の人間に触れるな。このまま作戦行動に入る」


 声が聞こえると同時に、ガルクが一つ考察した。


『町や城にいる騎士達を魔法で封じ込めるのが目的だな。つまり、住民はオマケだ』

「とはいえ、人質にする可能性は残っている――」


 その時だった。路地裏から騎士が現れる。結界を用いて魔力を防いでいる、精鋭騎士。


「貴様ら……!」

「さすがに、動きを縛れない人間も出てくるか――戦闘準備」


 冒険者達が一斉に剣を抜く。次いで大通りに出てきた騎士達も剣を構え臨戦態勢に入った。とはいえ、まだ魔力無効化の魔法は発動している。


「現状、味方も魔法無効化の対象になっている……」

『もし戦うとすれば、身の内にある魔力を筋力強化などに当てて戦うくらいか……人数も多いため、さすがに騎士だけでは厳しいかもしれないが――』


 さらに騎士の数が増える。一方で冒険者達は剣を抜いて応じる構えを見せただけで攻撃まではしない。


「……作戦を、開始する」


 そこで、男性が告げた。同時、周囲にいた冒険者達の多くが、散開した。


「何……!?」


 即座に騎士は反応した。散り散りになった冒険者達は騎士を狙うわけでもなく、大通りから離れようとする様子だった。よって、散った冒険者の分だけ騎士もまた人数が減る。


『これはおそらく、戦力を分散させる目的だな』

「時間停止魔法を防いだ騎士……それを少しでも減らして突破するってことか」


 実際、かなり良い手だ。このまま放置すれば、騎士がさらに減ってしまい冒険者達が……ローデンがあっさりと城へ到達するだろう。

 では、どうすべきか……騎士が減っていく中、冒険者達に相対するべく、近づく存在がいた。


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