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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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悲劇回避の道

 一人に的を絞ることで、オルゾという人物に関しての情報がどんどんと入ってくる……夢の内容も少しずつ進み、いよいよ魔王へ挑もうかという段階に至った時、オルゾについて重要な情報が舞い込んできため、部屋でソフィアと話をする。


「王城にいる人間と内通しているという証拠が見つかったらしい。書類なども暗号化していて、見つからないように……しかも現在進行形でやりとりをしている」

「ということは、彼は国側へ謀略を仕掛ける人員と考えた良いのですね」

「彼だけかどうかは一考の余地はあるけどな……もう少し調べれば、芋づる式に情報が舞い込んでくるかもしれない」


 敵組織の内情に加え、どの程度リーベイト聖王国に人間を送り込んでいるのか……その辺りを丸裸にできれば、彼らの強行を止めることはできるかもしれない。


「賢者が見た未来を考慮すると……おおよそ、全体像がつかめてきましたね」

「そうだな」


 俺は頷く……リヴィナ王子が表舞台から退場して以降の話はこうだ。まず、大きな政変により国内は混乱するが、一般の人達にそれほど影響はない。問題は国の政治に携わっている人達。王位継承者がいなくなってしまったことで、エメナ王女かレノ王子か、どちらかにつかなければならなくなった。

 この国は女王を据えたこともあるため、年齢のことを含めてエメナ王女が王位についてもおかしくないのだが、それをよしとしない勢力があった。その中にどうやら『星宿る戦士』もいた。


「エメナ王女が星神の技術にネガティブなことから、排斥しようとしたと」

「たぶん、星神の技術を利用して利益を得ようとしたんだろうな。エメナ王女が即位しようとも、説得すればいいだけの話だと思うんだが……」

「何か不都合があった、ということでしょうか?」

「多くの貴族は、リヴィナ王子に取り入るばかりで、あまりエメナ王女に関心を向けなかったことも大きいだろう。言ってみればエメナ王女に近しい人達が、利益を得る可能性が出てきてしまった。ここで王女を担ぎ上げても、自分達がうまい汁を吸うことができるかはわからない……だから、彼らはレノ王子に取り入った」


 論理的に微妙なところではあるのだが……俺達が観測できていない場所で、何かしらしがらみがあるのかもしれない。


「そして、エメナ王女はレノ王子と対立することになる……双方とも争いは望んでいなかった。けれど、半ば強制的に勢力を分断させられる」


 賢者の資料によれば、色々と理由をつけられてエメナ王女は王城を出ることに。そこにはリヴィナ王子との戦いで手を貸してくれた仲間達もいる。不安はなかったはずだが、その旅路でまたも襲撃を受ける。

 ただこれは、レノ王子を支持する人間が率先したわけではない……どうやらここに『星宿る戦士』という組織が関わっている。


「最終的にエメナ王女は星神についてさらに調べ上げ、レノ王子を擁立する人間達が相当危険なことをしていると察し、再び王都へ舞い戻る……ただ、その中でとうとう貴族達が暴走を始め、レノ王子を救うために王女は戦う……というのが、賢者が見た未来の筋書きだが……」

「組織の名称は出てこないんですよね?」

「ああ。なんというか、黒幕を残したままというのは消化不良だが、エメナ王女も調べるだけの余裕がなかったという話なんだろ。あるいは戦いが終わった後、調べるつもりだったがそれよりも先に星神が降臨した」

「かもしれないですね……話を聞く限り、現在はレノ王子に多くの人が取り入っている状態でしょうか」

「たぶんそうだろうな。これを無理矢理止めても反発を招くだけだろうから、王様達も放置している感じだな」

「肝心のエメナ王女は……」

「味方の数だけを言えば、賢者が見た未来とほとんど変わっていない。大きな違いは俺達がいることだけど、おおっぴらに活動するのは難しいからな」


 政争的に、彼女は非常に苦しいと言ってもいい……ただまあ、王ときちんと話ができる今ならば、そう心配する必要性はないだろう。


「現状、レノ王子と貴族とをつなげる場所に、組織がいるという解釈でいいとは思う。それを防ぎレノ王子へ寄ってくる人間をストップできれば、悲劇を回避できるとは思うんだが……」

「問題は相手があきらめるか、ですけれど」

「そこは微妙だよな。それに、転生者が組織にいるとしたら、さすがにおかしいと気づくだろう。となったら、俺達の予想とはかけ離れた展開になる危険性がある。あまりやりたくはないな」

「基本的には予測しやすい現状を維持し、確実に組織を潰せば事態が解決する……そう確信した段階で攻撃する、と」

「それが無難だろう。ただ『星宿る戦士』については、取りこぼしがないように動かないと、誰かが星神を目覚めさせる……場合によっては俺達が予測するよりも早く、降臨する可能性もある。動くにしても、さらに情報を集めてからだ」


 現状、デヴァルスについてはいよいよ遺跡探索を始めたと報告を受けた。あちらに動きがあれば……有益な情報が手に入れば、あるいは――


「まだ、待つ時間だな」

「焦燥感はありますが、それしかなさそうです」

「エメナ王女が王都を出るような段階になってしまったら、俺達も相応に動く必要性が出てくる……そこに至ったら戦いを止めることも難しいだろう。もし、未来を変えるなら……賢者が見た未来を回避するなら、旅に出る前にこちらが動かないと」

「まだ、時間はありますよね?」

「場合によっては、流れは変えられないにしろ時間を稼ぐことはできるかもしれないが……万全を期するなら、エメナ王女が旅立つ前に準備は整えていなければならないな」


 貴族側としては、リヴィナ王子の二の舞にならぬよう慎重になるだろう。それだけ時間を消費する……後は俺達がどれだけ準備を進められるか。

 俺とソフィアの修行については、ガルクは「あと一ヶ月で形になる」とは言われている。とはいえ改めて状況を認識すると、それほど余裕があるとは感じられない。今以上に精進を重ね……そんな風に思いながら、ソフィアと議論を続けることとなった。


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