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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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力の自覚

 その日の訓練についてだが、ガルクの予想以上に進展が見られた。最初、体が無茶苦茶重かったのが嘘みたいな感じであり、この日の午後には次のステップへ進むことができた。


「なあガルク、初めて数日でこれほどっていうのは……」

『今までルオン殿が他の力に頼るケースがなかったことを鑑みるに、ここまで容易く馴染むのは……理由としては一つしかなさそうだな』

「賢者の夢、か?」

『うむ』

「どういう理屈で? 俺は単に賢者が残した夢を見ているだけだが……」

『夢そのものではなく、賢者の夢を見る権利を有していることが重要なのだろう。おそらくそうした資格を得た人物は、何かしら賢者による恩恵を受けられる。そしてその恩恵は、夢を見始めることによって日の目を見る』

「恩恵……それによって、簡単に訓練が進んでいる?」

『おそらくな』


 まあそれなら……無理矢理理由を見いだしているような気がしないでもないけど、現状他に候補が浮かばないしなあ。


『これであればソフィア王女の出番もありそうだ』


 そんな予言をガルクは行い……夕方前、それは現実のものとなった。


『うむ、ルオン殿については十分だな。想定していた魔力にきちんと耐えられた。よって次は、ソフィア王女との連携訓練だ』

「連携か」


 俺はソフィアを見る。彼女は見返し……堕天使との戦いを思い出す。


『以前ルオン殿とソフィア王女は互いに手を取り、堕天使を打倒したわけだが……その後、二人以上の連係攻撃も我らは行ったな』

「共鳴のことだな」

『うむ。星神相手にそれでさえも通用するかどうか怪しいというのが我らの見解であり、色々な手法を模索してきた。結果として情報を得た今では、共鳴も一つの選択肢ではあるが、まずはルオン殿とソフィア王女の連携を確固たるものにするのが優先だろう』

「ガルク達の計画では、俺とソフィアの連携……これが現時点で最終目標だよな?」

『うむ。星神は強大であり力比べで勝利するのは厳しい。よって、方法を変えているわけだが……その手法を利用し攻撃できるのは二人くらいが限界だという判断だ』

「共鳴は使えないってことでいいんだな?」

『というより、この手法は共鳴効果とは根本的に仕組みが違う。そうだな……例えるなら、共鳴が巨大な存在を打ち砕く大質量の攻撃。一方、これからやるのは巨大な存在に対し急所を一刺しして倒すような仕組みだ』


 うん、その表現はわかりやすいな。


『星神全てを相手取る必要性はない。我らはあくまで星神の核を砕くだけの力を得ればいい。よって核を貫くだけの技術と能力を開発しているのが今だ』

「解説ありがとう。で、俺とソフィアがやるのは……」

『ソフィア王女はソフィア王女で、星神を討つための術を見いだす……無論、そういう役割を得るに足る人物は他にもいる。竜の力を集結させたロミルダなどはそうだな。とはいえ、候補者全員に全てを伝えるには時間もリソースも足りない。よって、ルオン殿とソフィア王女に絞ったわけだ』


 と、ガルクはここでソフィアへ目を向けた。


『ソフィア王女を選んだ理由は、ルオン殿に近しい存在であることと、何よりルオン殿の力量についてこれる最有力候補だからだ』

「緊張しますね……」

「そう肩に力を入れなくても……」


 苦笑しつつ俺が言うとソフィアは俺へ体を向け、


「ルオン様はもう少し、ご自身のお力を自覚された方が良いかと」

「そ、そうか……?」

『異例の能力であることは確かだからな』


 ガルクはソフィアに同意見みたいだな。


『ふむ、我からもアドバイスをしておくか。ソフィア王女、ルオン殿と肩を並べられる……かどうかはわからん。しかし、場合によっては自身が持つ力でルオン殿にはできない何かを達成できるかもしれん』

「私が……?」

『星神との戦いは異例づくしだ。ルオン殿でさえ、どのように転ぶか予測は困難。その中で、相手の力を打破するためには……予想外の能力を発揮しなければならないだろう。我らの中で、そうした力を得る可能性が高いのはソフィア王女だと考えている』

「そう……ですか」


 どこか釈然としない様子のソフィア。そこで俺は、


「ソフィアも俺と同じく、もっと自分の力を自覚した方がいいな」

「……言い返されてしまいましたね」

「まったくだ」

『つまり双方、力量をまだまだ把握できていないと』


 ここで互いに笑い合う……俺もそうだが、ソフィアもまた自身がどんなことをやってきたか、自覚がない。

 俺は彼女の目を見張る活躍をそばで見続けてきた。それを踏まえた上で断言できる。ガルクの言うとおり、星神との戦いで予想外のことをもたらすのは、彼女であると。


『ふむ、話はここまでにしよう。では具体的な説明に入るのだが……とはいえやることは堕天使との戦いで行ったものの延長線だ』

「つまり、手を取って魔法を使う?」


 俺の意見に対し、ガルクは首を左右に振った。


『そうではない。そもそも、星神がルオン殿達の行動を見逃すことはないだろう? 堕天使との戦いのように仲間が……という状況にもっていけるかもわからない』

「確かに、そうだな」

『そうだな、例えるなら……魔力の共有だ』

「共有?」

『離れていようとも、互いがどこにいるのかを認識し、なおかつ魔力の供給もできるというものだ』

「……物理的に離れていても、可能なのか?」


 そんな手法、見たことも聞いたこともないんだけど。


『可能だ』


 けれどガルクは即答した。


『精霊においてはそう難しいことではない……先にやり方を説明する前に、この鍛錬を行う理由を説明しよう。わかりやすく言えば、双方の魔力を融通し合い、能力を上昇させる……これについては共鳴に近い』

「つまり他者の魔力と自分の魔力を掛け合わせ、なおかつ外部からの魔力で武具を……この三つで共鳴効果を引き出すと?」

『そのようなものと考えてもらっていい』


 なるほど……星神の使徒と戦った際、共鳴効果を利用した際は俺達はほとんど動けなかった。けれど、今回の手法を習得すれば、戦いながらやれると。


『ただ先ほども言ったとおり、これは共鳴とは手法が大きく異なる。よって修行の難易度は上がるが、得られる効果は非常に大きいものだと確信している。では、早速始めるとしようか――』


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