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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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古代の武具

 朝食はソフィアと一緒にとることになり、俺は昨晩見た夢について話をする。ちなみの他の仲間については……時間が合わなかった。

 というか、研究に没頭という形にした結果、全員が全員同じ時間に起きるということもしないので、必然的にそんな感じになってしまった。廊下ですれ違いはするけど、現状では挨拶程度で会話もあまりないという……大丈夫なのかというツッコミがきそうだが、研究は進んでいるのでよしとしよう。


「復讐、ですか」


 そして俺から一連の話を聞いたソフィアはそう呟いた。


「伝承に残っている範囲では、賢者様……つまり私のご先祖様ですが、その御方は魔王に対し民衆を率いて、という風に語られていました。それはつまり、修行し強くなった以降の話ということですね」

「そうだな……で、この夢を見せた理由だけど」

「まず経緯を先に、ということでしょう。魔王という存在についてどれほど脅威なのかを認識する……それはおそらく、星神を打倒する理由付けになるわけです」


 俺の説明により、夢の意図を理解し始めるソフィア。


「魔王がどれほど強大な存在なのかを明確にし、その上で魔王が打倒しようとしていた星神……それがどういう存在であるかを把握させるわけですね」

「なるほど、魔王ですら倒すのが難しい……なおかつ世界に破滅をもたらす存在。そうであれば、それに立ち向かわなくては……そんな風に考えるというわけだ」

「はい。その、私達は魔王の侵攻を実際に受けたことで、魔王の脅威は身をもって知ることになったわけですが、賢者様がこの世界へ呼び寄せる転生者が全て魔王と戦うわけではありません。だからこそ、わざわざ星神のことを語る上で魔王を引き合いに出すのでしょう」


 なるほどな……賢者の記憶を通して見た魔王の配下……その魔族が兵士や賢者の相棒を倒す光景は、まさしく体を震撼させるものだ。けれど、それよりも遙かに強大な存在がいる……それを認識させることで、星神と戦うという正当性と理由を生み出すと。


「やはりこれは星神と戦うように仕向けるための夢ですね……仕向ける、という表現は少し良くないかもしれませんが」

「賢者としては、そういう風にしかできなかったということだし、仕方がない話なんだろう。彼もまた必死だったということだ」

「そうですね」

「ところでソフィア、戦士についてなんだが」


 俺はここで話を変える。


「俺達は独自の研究で星神に対抗しようとしている……が、賢者が生きていた時代はどうやら、古代の武具があったらしい」

「そうですね。おそらくそれは、ルオン様が所持する剣なども関係していそうですね」

「天使や魔族もまた古代と密接に関係していることを踏まえれば……あながち間違いではないかもしれないな」


 星神との戦いで使うことはないけれど、強力な武具であることは間違いない。よって、


「そういう武具があれば有効活用したいけどな……戦士が身につけていた装備は普通のものとは明らかに違っていた。強大な魔族に対してはどうにもならなかったが、賢者が生きていた時代において、そうした武具が人類の切り札だった……それが戦争兵器だったのか、あるいは星神に対抗するための武器なのかわからないが……」

「私達が戦うべき『星宿る戦士』が持っている可能性もありますね」


 俺はコクリと頷いた。もし活用するなら、彼らから鹵獲するとかそういう形になるだろう。


「私としては、そういう武具が今なお存在し力を発揮できるのであれば……驚異的な技術だと思います。私達の剣は、放置すればボロボロになっていくわけですし」

「俺達の武具でも、強力な力を持つものを残っていたりもするだろ? たぶんだけど、この時代にまで残っていたものは、古代においても相当強力な兵器だったという可能性が高そうだ」

「保有する魔力が強大あるため、残っていたということですか?」

「逆説的だけどな」

「確かにそうですね」


 いわゆる生存性バイアスである。風化し、消えていったものについては評価することはできない。けれど現存しているものは評価できる……この時代にまで残っている兵器であればよほど強力であることは間違いなく、だからこそ古代の時代は驚異的なテクノロジーを持っていたと評価する。

 それは決して間違いではないと思う。実際この世界……現代において数千年の歳月をかけても保つ武具というのは相当なことをしなければ存在できない。だからまあ、古代から残っている物が存在しているというだけでも、俺達の技術と比べて上回っているというのは、ある種正解である。


 そして星神は、そんな技術を保有している者達でも、対抗できなかった……いや、彼らは情報がなかった。打倒するために必要なものがなかったとすれば、俺達の方がチャンスはあると考えるのが妥当だろう。


「ルオン様、今日も鍛錬ですか?」


 ソフィアが話を変える。俺はすぐさま頷き、


「ああ。ガルクは昨日の結果を見てもかなり好感触だったから、一気に進展させるつもりだろうな」

「この調子で進めば、ルオン様のやるべき事はデヴァルス様が帰ってくるよりも前になりそうですね」

「確かにそうかもしれないな」


 ちなみにデヴァルスからは連絡なし。昨日の今日だし、定期報告とかを義務づけているわけでもないから、これでいい。彼の仕事ならば信頼できるし。


「よし、朝食後早速だな」

「はい、お付き合いします」

「……ソフィアの方は退屈じゃないか? 現時点でまだ出番がないわけだけど」

「大丈夫ですよ」


 にこやかに……俺はそれ以上何も言わず、パンをかじることにした。

 ここで俺は今朝の夢を思い起こす。次に見せる夢は、逃げた後なのかそれとも時間が経過したものなのか……確実に言えることは、これから魔王との戦いを見ていくことになる。それはきっと、俺達が行った戦い以上に悲惨なものだっただろう。


 ある意味、覚悟がいるかもしれない……そんな風に思いながら、朝食を済ませることになったのだった。


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