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賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

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迷路と合流

 連携で魔物を撃破しつつ辿り着いたのは地下への道。上へと続く階段もあるが、ここでラディが口を開いた。


「砦の大きさから考えて、メインは地下なんだろうな」

「それは俺も同意するぞ」


 ネストルが地下への階段を見据えながら同調。


「瘴気の濃さも、下の方が明らかに強いぜ」

「なら、決まりだな」


 俺が言うと全員一度頷き、下り始める。


 さて、迷宮としてはここからが本番である。ここまでの道中で戦闘音がしなかった以上、フィリ達は先に進んでいる可能性が高い。上へ進んでいる可能性もあるが、それならそれで構わない。

 下に辿り着くと、早速五本の道と出くわした。扉など存在しない、人を惑わせる通路。ここにおける正解の道は真ん中。どうやって誘導するか。


「ここからは勘みたいだな……どうする?」


 ラディが言う。彼は一度俺達を見回した後、語る。


「悩んでいても仕方がない。どの道に行くか多数決にするか?」


 提案した直後――どこからか、キィンという金属音が響いた。即座に顔を向ける俺達。どの通路からの音か判別できなかったが、間違いなく――


「先行している人物だな」

「そのようだ」


 俺は同意しつつ……ここで真ん中の通路を見据えながら呟いた。


「俺は中央の道から聞こえたような気がした」

「本当か?」

「耳はそれなりにいい方でね」

「なら、それを信用するか。他もそれでいいのか?」


 肯定の沈黙。俺とラディは一度視線を合わせ互いに頷くと、進み出した。

 迷路に入ると、途端に瘴気が一層濃くなった。道中魔物も出現し、俺達は都度対処する。


 ベルーナ討伐が始まる前の状況に加え、ここまでの戦い……ソフィアのレベルは確実に上がっているはず。フィリを観察できなくなってしまったことは悔やまれるが……フィリとソフィアどちらが強いかは、まだ判断ができない。ただ一つ言えるのは、先行し戦っているフィリの方が得られる経験値も多いだろうということ。


 賢者の魔力が宿る基準がレベルだとしたら、フィリが力を手に入れる可能性も……レドラスを倒した時、賢者の力はアルトではなくソフィアに宿ったわけだが、その根拠はいまだに不明瞭だ。もしレベルによって選ばれるとしたら、フィリが力を手に入れることになるかもしれない。


 なのでできるだけレベルを上げたいところだが、かといって長時間さまよって戦い続けた場合フィリ達に追いつけない可能性や、ソフィア自身疲労して戦いどころではなくなる状況にもなる……思考しつつ、俺達は四つの道が繋がる空間に出た。


「これは難儀だな」


 ラディが呟く。俺は通路に目を凝らしてみるが、ここはゲームに登場しなかった場所。なので助言も難しい。

 先ほどのように金属音などが聞こえないか耳を澄ませてみるが……聞こえない。これは勘で動くしかないだろう、と思った。






 以後、俺達は迷いつつ魔物を倒し先へと進んでいく。迷路ということでソフィア達も節制を開始し、極力魔力を温存するような動きが目立つ。とはいえ俺の強化魔法などの援護もあって、連携で上手く対処できている。ここまでは順調だ。


「悪いな、ルオンさん」


 ラディが俺に感謝を述べる。シルヴィなども俺が戦えない中で最善を尽くしていると認識したのか、ラディと同様ありがたそうな顔つきを見せる。


 長期戦の場合、仲間の負担を軽くするサポートの比重を高くする方がいいみたいだな……考える間にまたもいくつも通路が伸びる空間。だがここは見たことがある。正解は俺達から見て左の道だ。


「……左側の道に進もう」


 仲間からすれば根拠もない勘だが、ラディ達はこちらの言葉に従って動く。その先に『ブラッドファイター』が出現したが、俺達は難なく対処した。レベルが上がったというより、戦い続けて魔物の動きに慣れたという感じだ。


「しかし、どこまでも続くな……後戻りする気はないが、どこか休憩できるような空間でもあればいいとは思うな」


 ラディが言う。俺もそれには内心同意だったが、さすがに魔族側がそうした余裕を与えるとは思えない。

 その時、進む方向からバリバリ、という何かが弾ける音が聞こえた。俺達は互いに目を合わせ――戦っている人物がいると断じ、走った。


 それなりに音が明瞭に聞こえたので、遠くはない――予想通りすぐさま広間に出た。迷路の終着点なのか、真正面に奥へと進む通路だけが存在している。そこに――


「――フィリ!」


 俺が声を上げた。すると彼は魔物と距離を置いて首を向け、


「――ルオンさん!?」

「知り合いか」


 ラディが杖を構えながら言う。俺は小さく頷きつつ、


「ひとまず、目の前の敵を倒そう!」


 言いながらフィリ達が戦っていた魔物を見据える。中ボス、という区分の『ガーネットウルフ』という、人間の体を持つワーウルフ系の魔物。こいつはベルーナと同じく成長する魔物で、確かベルーナの手駒の中でも精鋭という設定のはずだ。

 名前の通り宝石のガーネットのように全身が赤みを帯びている。俺達が来たことによりガーネットウルフは吠え――ネストルが走る。


「うおおおっ!」


 盾を構えながらの突撃。それに合わせソフィアやシルヴィも動き出す。次いでフィリの仲間――青い全身鎧を身にまとう以前共に戦ったことのあるコーリと、フィリが剣を握り直し突撃する。


 俺とラディは後衛……そしてフィリの仲間である魔法使いが隣までやってくる。その人物は茶褐色の外套を着る眼鏡を掛けた男性。顔つきは地味の一言に尽きるのだが……彼は序盤に仲間にすることができる魔法使い、バシリー=スラスノスというアカデミア出身の人物だ。


 初期に仲間にできる割にそこそこ使いやすく、最後まで戦い抜ける最低限のパラメーターを所持している。フィリは彼とコーリと共に戦っているわけだ。


 俺は魔物へ視線を移す。先陣を切ったネストルが魔物の攻撃を受け止めていた――加え『ブラストカウンター』を使用して反撃に移る。

 斬撃が魔物の体に入る。同時にソフィアが『ライトニング』を放ち、ダメージを与えた。次いでシルヴィが『天衝烈波』を決める。


 見事な連携……考える間にフィリが動く。彼が放ったのは魔導下級技の『アースクラッシュ』。使い魔からの報告だと地属性と水属性の精霊と契約していたはずなので、その恩恵だろう。


 このまま一気に――そう誰もが思った状況でラディが魔法を放とうとした瞬間、突如後方から魔力を感じた。

 振り返る。そこに俺達を追ってきたと思しき一団が見え、先頭にいる人物が風魔法である『エアリアルソード』を放ったところだった。


 風の刃がさらなる追撃となって、魔物は大きくのけぞった。好機――誰もが判断し、ソフィア達は一斉に畳み掛け、撃破した。

 魔物が崩れ落ちる中で、俺は後方からやって来た人物を見据える。そこでラディが声を発した。


「城に入ったパーティー、三組目か」


 ラディが杖を肩に置きつつ語る。その人物達は――魔法使い一人と騎士二人。


「さすがに、冒険者の方々だけに手を煩わせるわけにはいかないからな」


 騎士が応じる……白銀で統一された装いはそこそこ迫力があり、精鋭なのだと察することができる。

 ふむ、騎士の一行か……見覚えが無いのでゲームで仲間になる人物達ではない。しかしここまで到達できたということは、他の騎士達よりも一歩上をいく実力の持ち主だと考えていいだろう。


「後続が来ている様子はあるのか?」


 さらにラディが問うと、騎士が前に出て返答した。


「いや、おそらくない……国の正規軍で入り込んだのは私達だけだろう」

「……まだ先があるようだが、覚悟はいいか?」


 ラディが問う。騎士達は「無論」という表情で頷くと、彼らと共に進むことにした。


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