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賢者の剣  作者: 陽山純樹
星の神を求める者

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強すぎた故に

 俺はソフィアを捕まえ、さらに食堂で朝食をとった後、ガルクも交え話をすることに。昨日の違和感に加えて夢について……それでソフィアも察したらしく、


「ルオン様は、夢の中で賢者様になっていたと?」

「そういうこと、なんじゃないかなあと」

『ふむ、昨日の試練によって何か変化があったということか』


 と、ガルクは存外あっさりと俺の言葉を受け入れた。


『あり得ない話ではない。というより、我らがこうして動き出した際に何かを伝えようとした……ということなのかもしれん』

「何かを……?」

『うむ。ただ今の我らにとって有益な情報を得られるかどうかは不明だな……推測ではあるが、賢者は夢を通して自分の過去を伝えることで、星神といった存在を伝えたかったのではないか?』


 ……ふむ、つまりガルクの言いたいこととしては、


「俺が転生する際に、賢者は何か仕込んでいたと?」

『うむ。何かをきっかけにして夢を見せる……それにより、転生者は星神という存在を認知し、戦うように動き出すことを狙った』

「そうなのか……な?」


 俺は首を傾げる。ガルクの言い分としては、元々賢者は転生者に対し星神のことを伝える手段を仕込んでいた。それが何かしらのきっかけによってもたらされる……俺の場合は、昨日の試練がその要因になっていると考えられる。

 ただ、どういうきっかけであれ、昨日の試練……ああいうことをしなければ、というのはずいぶんと条件が厳しいようにも思えるな。


『ルオン殿の言いたいことはわかるぞ。夢を見させるにしても条件が厳しすぎると』

「まあ、そうだな」

『そこについては、ルオン殿が強すぎたということで説明ができるぞ』

「え? どういうことだ?」

『どういう人物に転生するにしても、星神打倒のためには強くならなければならない。つまり騎士や冒険者となった人物が夢を見る可能性がある……そこで、だ。普通強くなるためには武器防具を強化、自らを鍛え直すなどに加え、何かしら外部から魔力を利用するなど考えられるわけだ』

「……俺はそういうことを今までしてこなかったから、夢を見なかったと?」

『どういうきっかけで夢を見るのかわからないため、断定はできないがそういうことなのだろう。ルオン殿は単独でも我ら神霊すらも凌駕する力を保有している。いくら転生者でも、これほどの力を有すとはさすがの賢者も予測できなかった……結果、強くなったが夢を見るきっかけはここまで訪れなかった』


 ……まあ、俺の存在が想定外であるなら、一応説明はつくな。


『これが果たして有益な情報なのかは不明だな。おそらく賢者は星神の存在を認識させるために、仕込みを行ったはず。対する我らは……ルオン殿は星神のことを認識して行動をしていた。つまり、順序が逆になっているわけだ』

「そういう経緯なら、夢の情報は意味がないってことか?」

『かもしれん』

「でも、だからといって夢を見ないようにするというのは無理だろ」

『そうだな……気になることがあれば、相談してくれ』


 ということで会話は終わり。ソフィアも「何かあれば」とガルクに続いて告げたので、俺もこれ以上言うことはなかった。


 で、今日は引き続き昨日と同様に修行を……ということなのだが、ガルクは少し方針転換をするつもりらしく、


『ルオン殿が思いのほか……いや、この場合は賢者の仕込みと言うべきか。それによりずいぶん簡単に馴染んだため、少し作業ペースを早めるとしよう』

「お手柔らかに頼むよ……」


 そんなことを告げつつ、俺は修行に没頭することとなった。






 結果的に言えば、俺の修行ペースは想定よりも早く……このまま順調に進むことができたら、思った以上に星神対策が早くできあがるかもしれない――という結論に至った。うん、こちらについては順調だ。

 で、デヴァルスについては屋敷を離れてまだ一日ほどしか経っていないのだが……連絡が来た。


『敵組織の面々と合流したぞ』

「早いな!?」


 急展開に俺が驚くと、


『何を言う。こういうことはさっさと進めた方がいいだろ?』

「そうかもしれないけど……まだ遺跡調査の期日には達していないよな?」

『現在は組織の人員が集まっているところだ。タイミングを見計らって資料をそちらに送ることにするさ』

「……大丈夫だとは思うけど、怪しまれてはいないよな?」

『問題はない。それと、現時点で敵の戦力は……普通の冒険者ギルドレベルだな。ぱっと見て星神由来の技術を用いている武具もなさそうだ』

「それは手の内を見せないためなのか、それとも彼らにとっては稀少なのか……」

『そこについては今後の調査で調べていく……今のところ友好関係を築けている。少なくとも怪しまれている様子はない』

「それなら良かった……引き続き頼むよ」

『ああ……おっと、それともう一つ』

「まだ何か?」

『有事の際について、だ』

「それは散々話し合っただろ?」

『念のための確認だよ。もし何か……組織の人間にこちらのことがバレてしまった場合、独断で動いていいんだな?』

「それしかない、というのが結論だな……ただ、こっちの作業ペースは早くなっているし、そういう事態になっても対応できそうな可能性は高まっている」

『それは何よりだ』

「もちろん、だからといって当初の方針は変えないからな……頼んだ」

『ああ、任せろ』


 そこで通信が途切れる。うん、ここまでは順調……順調すぎる状況だ。

 で、俺は休むことにする……おそらく今日もまた夢を見るのだろう。ガルクは既に必要のない情報では、と言っていたが……実際に賢者が成したことを追体験する以上、何か感じ取れるものがあるかもしれない。


 それと、夢の中で賢者と共にいた戦士がこっちの反応に対しきちんと応じていたことを踏まえると、俺が何か自分の……つまりルオンとして意見を言えば、何か返ってくる可能性もある。どういう理屈なのか不明だけど……賢者の施した魔法であるとしたら、有益な何かを得られるかもしれない。

 俺の感覚としては、夢というより過去にタイムスリップしているようにも感じられるが……いや、さすがにそれはない。ただ、賢者は俺が自分なりに考えて行動できる余地を夢の中に与えている。どんな魔法なのか興味を抱きつつ……俺は、眠りにつくこととなった。


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