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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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もっとも強い存在

 話し合いの後、俺はフォルナへ一連の事情を説明。すると、


「場合によっては屋敷を拡張するか?」

「いやいや……」


 なんだかやる気を見せる彼女であったが、さすがにこれ以上は迷惑をかけられないということでご遠慮願った。では具体的にどうするのか……これについてはエメナ王女と連絡をとることによって解決した。


「いくつか存在する別荘の一つを提供いたします。その場所も、見つかりにくい屋敷を選びましょう」


 ――そういうわけで、俺達は紹介された別荘という名の屋敷へ赴くことに。下見に行くと規模もなかなかで、海に近い場所だ。

 わざわざ海に近しい屋敷を選んでくれたのは、おそらく組織の人員を迎え入れやすくするためだろう……とはいえ王都などから人員を使って屋敷を研究仕様に変えるのは無理なので、人員がこっちに来てから本格的に準備をしようということになった。


 ただ領主フォルナとも連絡は取りたいので、彼女の屋敷にも人員を配置することに。ここにカティとフィリを置いて、動いてもらうことに決めた。



『こちらは急ピッチで準備を進めている。無論、研究も並行して、だ』


 そう通信魔法でガルクは述べた……話によると、一ヶ月ほどでこちらへ向かうことができる様子だった。

 着々と準備をする中で、エメナ王女から組織に関する情報も入ってくる。概要レベルではあるが、俺達の話を聞いて調べ方を変えたことにより、あっさりと捕捉できたらしい。


 深入りはしないということで、俺達とどうすべきかを相談したいらしい。そこで俺は密かに王女と顔を合わせ……結果的に言えば、もらった情報で俺達が独自に動くことになった。これ以上国側が動けば敵に露見する可能性がある……それを考慮すれば、まだ敵方に見つかっていない俺達が動くのが理に適っているというわけだ。

 しかしすぐにというわけではない。組織名もわかっているし、情報ももらったので……彼らの動向を少し調べる程度で、本格的な調査は間を置くことにする。少なくとも現段階で俺達の存在が露見していない以上、時間的な余裕はある……組織の人員が来てからの方が、調べるのも早いだろうし、それからにしようと決めた。


 行動方針が決定したので、一ヶ月……その間はかなり大変だった。今までも忙しなかったわけだが、それに拍車がかかったような感じだった。

 俺は平気なのだが、ソフィア達は……と思ったのだが、


「旅も長いですし、鍛えられていますから」

「そうよ。色々と修羅場もくぐってきたわけだし」


 と、ソフィアとリーゼが相次いで告げた。とりあえず疲労で倒れるような人はいない……というより、そんな柔な人間であればとっくに倒れている、というわけだ。

 これから決戦というわけだし、士気も高いので俺としては心強い……と、色々と準備をする間にも星神の対策については進めていく。ガルクと協議をして、おおよその形も、戦い方も構築できた。もちろん未知の相手である以上、厳しい戦いが待っているのは確実だが、それに対抗しうるだけの材料を俺達は得ているし、応戦できる構えはできた……この大陸を訪れる前と比べて大きな進歩だ。


 残る問題としては……俺はふと散歩がてらフォルナの屋敷周辺を散策していた。人の気配はなく鳥の鳴き声が聞こえてくる。

 頭を空っぽにして、リフレッシュするのもたまにはいい……と思っていたら、ソフィアが近づいてきた。


「ルオン様、休憩ですか?」

「ああ。とりあえず一段落したから歩き回ってる。やっぱり室内でずっと仕事をしていると体が固まって良くない」


 答えながら肩を回す。一方でソフィアは色々動き回っているせいか、俺とは違い体の方はいつもの調子みたいだ。


「私と訓練でもしましょうか?」

「それもいいけど……今は遠慮しておくよ。決戦までに勘は取り戻しておかないといけないな」


 そう言いながら空を見上げる……残る問題は、俺のこと。星神がこちらに対抗する手段はいくつも想定できる。それに応じるための方法も考えている。ただ、


「……ソフィア、率直の意見を聞きたい」

「はい」


 彼女は言葉を待つ構え。そこで、


「俺は……星神に勝てると思うか?」

「……ルオン様?」

「別に自信がないと言いたいわけじゃない。今回の相手は、この世界そのもの……それと同義だと言っても差し支えない巨大な敵だ。おそらく、今まで以上……というより、この世界においてもっとも強い存在と戦うことになる」


 俺は自分の手のひらを見据える。無類の強さを得た。賢者の見た未来……その情報を基にして、俺は力を得て魔王との戦いをくぐり抜け、竜の大陸を救い、堕天使を打倒し、魔界に手を貸し――世界を救ってきた。

 けれど、そんな戦歴すら無にできるほどの存在が、星神だ。


「人間の手によって倒せるのか不明だ。別に怖いわけじゃないし、どんなに絶望的な状況でも戦う気でいる……でも、それと同時に漠然と本当に倒せるのかという疑問がある」

「……人間では、どうにもならない敵なのかもしれません」


 と、ソフィアは俺の言葉を肯定した。


「けれどルオン様は、それがわかった上で戦いに挑もうとしている……勝つために尽力している。後はそれが報われるように、頑張るだけだと思いますよ」

「……ソフィア、一応聞くけど」

「もちろん、私もお付き合いします」


 即答だった。わかりきった答えだ。


「バールクス王国の代表として、ルオン様に支援することは決まっています。もちろん、私の個人的な理由もあります」

「そっか……もちろん俺も最終決戦においていくとかはしないから、覚悟してくれよ」

「もちろんです」


 ――彼女との関係も、旅を経て色々とあった。彼女といずれ……などと考えるのがなんだか人ごとのように感じてしまうのは、きっと目前に決戦が控えているからだろう。

 今はまだ……俺はソフィアに散歩をしないかと提案する。即座に彼女は頷き、俺達は並んで歩き始める。


 数日中に、新たな報告が入る予定になっている。バールクス王国側で準備が整いつつあるため、俺達も本格的に動き出す……組織が全員集った時、今以上にめまぐるしく動くことになるが……大丈夫だと確信している。最後までやりきれるという、強い自信が今の俺の胸中にはあった――


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