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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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屋敷へ招く者

「進捗はどう? 進んでいるかしら?」


 扉を閉めながらリーゼは俺へ問い掛けてくる。 


「ああ、思った以上に」

「それは良かった……こちらも、一つ策を思いついたから、ルオンに相談しようかと」

「相談……?」

「ええ、といっても策と呼べるものでもないけどね。単純に、領主フォルナが見知った学者……つまり、遺跡調査に入った学者をここへ呼び出し、聞き取りをしよう、って話よ」


 聞き取り、か……まずはフォルナの友人経由で、遺跡調査の際に怪しい挙動をしていた人物とかを探そうってわけか。


「でもそれ、国王側がやっているんじゃ?」

「そこについては確認したわ。結論から言うと、全部に手が回っていないそうよ。なら、国王がリヴィナ王子関連という名目で調べるより前に、領主フォルナを介して情報を上手く取れないかなと」


 なるほど……国王からの言明で聞き取りをするという場合より、何か情報がポロッと漏れる可能性もあるな。


「わかった。俺の方は作業を進めるから、頼んでいいか? 一応、聞き取りをする際には使い魔何かを使って話を聞くことにするけど」

「ええ、それでいいわ」


 リーゼが主導で動くことに……俺はひたすら作業を進めることにしよう。


 と、いうけでひとまず何事もなく時間が経過していく……ブレッジから得た情報による効果か、ガルク達も一定の成果を上げ始めた。この調子ならば、想定より星神降臨が早まっても……いや、負けたら世界が終わる戦いだ。可能な限り準備の時間を確保するに限るか。

 そうしてなおも研究を続けていた時、リーゼから聞き取りについて日取りが決まったと報告を受けた。しかも遺跡調査において初期から関わっていた教授らしい。


 よって、俺は使い魔でフォルナ達の会話を聞くことにする。フォルナから許可は得ているし、彼女の方も情報を取ろうとやる気満々なので、これで……と、期待が掛かる状況であった。






 その日、フォルナの屋敷に一人の人物が訪れる。初老の男性で、白髪混じりに髪を持つ人物……名はゴードン。領主フォルナとは何かと縁があり、話をする機会があったようだ。

 ただ、基本的に友人関係であるだけで、互いに何を研究しているのかなどについては、あまり触れてこなかったらしい……単なる友人というわけだが、今回調査員の一人だったのを知り、フォルナが指名したわけだ。


「よく来たな」

「ああ、久しぶりだな」


 まずは挨拶を交わす。ゴードンの格好は白いローブ姿で、学者っぽい雰囲気である。


「遺跡調査に関することで聞きたいことがあると言われ、訪れたが……」

「ああ。互いに研究内容をロクに語っていなかったわけだが、私の研究テーマも古代に関するものでね。もし何かしら有益な情報があれば、と」

「なるほど……とはいえ、私としてもタダで、というわけにはいかんな。あの遺跡調査にはそれなりの投資もしている。それを報酬もなしで、というのはさすがに難しいぞ」

「対価は何だ? 私は研究してはいるが、そちらの方が情報量は多いだろう。私が有益な情報を提供できるかは……」

「ああ、いや。そういうことではないさ。私と君の大きな違いは、領主であり領民を持っているか否かだ。次の研究……少し期間は空くが、別の遺跡調査をする予定だ。そこに少しばかり出資してもらえるとありがたい」

「なるほど……まあいいだろう。私としても研究テーマに進展があるのなら、喜んで協力しよう。ただ、私は表立って動くのは嫌だぞ。こんな研究をしていると公になれば、道楽にかまけているなどと言われ評判を落としかねない」


 そういう風に説明するんだな……と思っていると、ゴードンは笑った。


「なるほど、ロクに語っていなかったのはそういう理由か。領主も大変だな」

「資金については私個人のものから出すため、領民に関係性はないが……世間はそんな見方をしないわけだ。使ってもいないのに税金で道楽を……などと語られるのは癪だからな」

「ああ、わかった。ひとまずここでの会話はあくまでここだけの話に留めておこう……だが、立場の違いにより歴史的発見に立ち会えていないというのは、いささか領主というのは大変な立場だな」

「まったくだ。今回ゴードンに連絡したのは、後になって色々知ったからだ……とはいえ、根掘り葉掘り聞こうというわけではない。対価として払うものを聞いて、そちらがその内容分情報をくれればいい」

「それで良いのか?」

「内容を聞いて追加料金を支払うかは決める」

「わかった」

「ただ、その前に一つ」


 と、フォルナは身を乗り出して問い掛ける。


「そもそも、遺跡を見つけたことや調べようとした経緯などから聞きたい。これは研究テーマと関連はないため、無料でよいだろ?」


 ――そこが俺達にとってもっとも知りたい部分なのだが、フォルナは上手いこと話をもっていったな。

 実際、星神に関連する情報についてはブレッジの動画など、多くの情報を現時点で保有している。ゴードンから話を聞いてその情報をさらに増やすのもいいが、それよりも先に、一番大事な部分を解決しようというわけだ。


「ああ、いいだろう……まずは、どこから話すか……そうだな、リヴィナ王子のことから語ろうか」


 そう言いながらゴードンは息をついた。


「当然、王子の一件は知っているな?」

「無論だ。遺跡調査にはリヴィナ王子が関わっていたとなれば……何かしら、調査が入ったのか?」

「私の方にはまだ、だな。とはいえ時間の問題だろう。ただ私は王子がなぜ……という部分は推測できるが、詳しくは知らない。というより、深く立ち入ると危ない気がしたからな」

「それは……何故だ?」

「リヴィナ王子の周辺に色々と人が集まっていた。それを踏まえるに、深追いすると面倒なことになると考えたわけだ」


 あくまでこの人は遺跡調査を軸に活動していたため、王子の一件とは無縁に近い立場らしい。最初はそのくらいのレベルからで問題ないだろう。いきなり組織関係者とかを招いたら面倒な展開になりかねないし。


「まあ私はリヴィナ王子とそれほど繋がりもないため、もし騎士がしてもすぐに退散はしてくれるだろう……ふむ、振り返ると王子が事件を引き起こすような兆候はあったかもしれん」

「どういうことだ?」

「リヴィナ王子は従者とは別に何やら人材を保有していた……外部の人間らしく、大丈夫なのか疑問に思ったが……結局、あまり話はしなかった。その辺りの経緯から、語るとしようか――」


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