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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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組織の可能性

 休憩を終えた後、俺達は同じ部屋で話し合いをすることに。


「現状、賢者が見た未来通りに進んでいる……エメナ王女に全てを伝えたことで、事態が美味い方向に進んでいるのは間違いない。そして国王も事情を知っており、俺達と話がしたいらしい」

「ただし、王宮は現在混乱の最中ですし、現状では近づけないですね」


 ソフィアの提言。俺は首肯し、


「だから国王との話し合いがあるまでは、星神に関する研究を進める段階だ。俺達は幸運にも古代の人物から貴重な情報を得られた。それを基にして作業を進める……半年という時間があるにはあるが、可能な限り早い方がいい。よって、遠隔魔法などを駆使してやれることは全てやる」

「それについては協力を約束しよう」


 と、領主フォルナが明言した。


「資材が必要であれば、私に言ってくれ。ああ、金のことなどは気にしなくていい。歴史の転換点にいる……その事実だけで、私が動く理由には十分だ」

「いずれ、何か礼はするよ」

「ああ」


 俺の言葉に返事はそれだけ。俺達の人となりもわかっているし、最後まで付き合う気のようだった。


「さて、星神の研究についてはもう外に出て情報を集めるという段階は過ぎつつある……あえて言うなら、王宮側が持っている星神の資料を手に入れることだが、ここに一つ問題がある」

「裏組織、ですね」


 再びソフィアの言葉。俺は頷きつつ、


「とはいえそんなものが本当にあるのかどうか不明だが……もし星神の研究をしながら何かやるとしたら、それだろうな」


 この部屋には精霊ウィスプの長であるエルアがいる。けれど彼はあくまで一つの群れの長であり、ウィスプは他の群れを形成し、と独自のコミュニティを築いている。その中の一つが人間と接触しているわけだが、


「フォルナ、そちらの私見でいいんだが……裏組織なんてものが存在すると思うか?」

「私は、アリという意見を出させてもらおう」

「根拠は?」

「根拠と言うには脆弱だが、星神の研究がここまで進んでいることに違和感がある。精霊ウィスプが翻訳して、と言えばわかりやすいが、そもそもウィスプがなぜ関わったのか、というのも疑問が残る。偶然にしては出来過ぎているが……」


 と、彼女は頭をかき、


「単純に遺跡を発見したため、プロジェクトチームを組んだというのが一番わかりやすいし、むしろそちらが妥当だとは思う。元々この国では遺跡調査は行われていた。学者の中に精霊ウィスプと親交があった人物もいるだろう。大規模な遺跡を発見したため、ウィスプと協力した……これが一番納得できる話ではあるのだが……」

「そうではないと?」

「遺跡、精霊、技術……それらの情報を統合すると、遺跡調査までは良いとしても技術開発がずいぶん早いように思える。古代の技術というベースがあってそれを応用……となれば、古代技術について精通している人がいなければ、成り立たないように思えるのだが」

「学者さんに詳しい人がいた、と一応説明はできるけど……」


 俺達はうーん、と唸り始める。違和感はある。とはいえそれはほんの少しだけ。蓋を開けてみたら偶然の産物であった、という状況でもおかしくはない。


「俺達が変に警戒して、動きが制限されるのもどうかと思うんだよな……かといって使い魔などで観察しても、さすがに捕捉するのは無理だろ」

「王女からの情報は期待できないのか?」

「そうした組織がいるかもしれない、なんてことを告げてはいるけど、聡明なエメナ王女なら深追いしたらまずいと判断しているだろうし、あんまり期待するのも酷じゃないかな」

「……国王と話ができれば、事態は進展しそうよね」


 リーゼからの言葉。うん、それは間違いない。


「ならまずは、国王との話し合いがもたれるまでは慎重に行動するか……まあ今からやる星神対策は基本内にこもってやるようなタイプだ。それでどこまで進めるか……話し合いの時期がいつになるのかわからないけど、そう遠くない話だとすれば、連絡が来るまでが勝負だな」

「寝れない日々が続くかしらね」


 カティが言う。さすがに不眠不休で働けなどと言うつもりはないけど、かなり作業量は多くなる……仕事が深夜にまで及ぶとか、確かにありそうだな。


「仮に裏組織なんてものがあった場合は、どうしましょうか?」


 ソフィアからの疑問。それについては考えがあり、


「相手の目的などを知らないとどうとも言えないけど……もし星神を降臨させることが目的であるとしたら、倒すしかないな」

「……仮にそうだとしたら、どうしてそのような……」

「わからないな。でもまあ、破壊神を崇めるような宗教だって存在するわけで、過去に存在していた巨大な力……それを信奉する勢力があっても何ら不思議じゃない」


 肩をすくめながら俺は話す。


「少なくとも、今回の一連の騒動が裏組織関与であることが確定されれば、その影響は王族にまで及んでいることになる……放置はできないし、ましてリーベイト聖王国にとっても有害だろ。国側が認可しているような組織とは言いがたい」


 俺の言葉に仲間達は一斉に頷く……とりあえず方針は決まったかな。


「よって、今から急ピッチで星神対策を行っていく。その中で国王と話す機会があれば、俺とソフィアとリーゼで対応、ってところかな。肝心の組織については、国側と連携しなければ動けないし、外で活動する場合は注意をするってことで」


 敵に俺達の存在が露見されていなければ、いくらでもやりようはある……問題はバレた時、それが物語にも大きな変化を与えるだろう、ということだ。

 さすがにここまで上手く事が運んでいる以上、これを崩したくはない……というより、俺達の存在が認知されると相手の動きも急進的になる可能性がある。


「とにかくこれまでと一緒で露見しないよう警戒を」

「わかりました。そしてもう一つですが」


 と、ソフィアはさらに言葉を進める。


「リヴィナ王子についてですが……」

「ああ、それについては……こっちも国王と話をする際にこっちの考えを伝えよう」


 ただ、病ということを考えるとこっちが当初思い描いていた形にはならないだろうな……と、思っていたのだが――それは予想外な形で覆されることとなる。


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