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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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とある研究者の話

「ならば、質問を変えようか……この世界の崩壊。ゴールはどこにある? 全ての国家が消滅したのなら、それで終わりか?」

「そこは一つの指標だろうね。僕としては、逆に訊きたいくらいだ」

「何?」

「僕は確かに背中を押した。星神という存在の力を利用し、国々は戦争を行っている。けれど、現段階で僕はそこまで関わっているわけじゃない。降臨したという事実はあるけれど、僕はまだ何もしていない」


 肩をすくめる星神。相も変わらず笑みを伴うその表情は、不気味を通り越して恐怖しか感じられないものになっている。


「人間達にとって、どこがゴールなんだい?」

「……それは」


 わからない、というのが答えだろう。ブレッジは星神に対する真実に近いが、政治のことを把握しているわけじゃない。この動画が撮影された時の権力者達……つまり戦争を引き起こしている存在がどう考えているなんて、想像することもできないだろう。


「まあこれについては君に尋ねるのは酷か」


 と、星神は質問したにも関わらず、答えを聞くことは止めた。


「そうだね、君にわかりやすい答えを提示しようか。世界の崩壊……君がそれをどこまで想像しているのかはわからない。けれど、おそらく君の予想以上の展開が待っている。それは保証しよう」

「……何?」

「さっきも言った通り、現在は僕が背中を押して人間同士が戦争しているような状態だ。でも、僕は願いを告げた人間の望みをまだ叶えていない。だからまあ、人間同士の争いが一段落したら、動き出すつもりでいる」


 ブレッジの動きが停止した。ここで彼は認識したのだ――今はまだ、序章でしかないと。


「そうだね、僕に願った存在について話そうか。その人物は男性で、君の友人と同じく研究者だった。幻想樹に関する調査を行っている時、彼は気付いたことがあったそうだ」

「気付いた……こと?」

「文明が大いに発達し、人間が幻想樹から吸い出す力は年々増え続けていた。人口が増え続けたのだから当然の帰結だが……その限界を彼は知ったんだよ。つまり、資源限界が差し迫っていると」


 ……俺の前世でもエネルギー問題は存在していた。つまり、古代の時代はそれと同じ事が起こっていたわけだ。


「彼はそれをどうにかしようと研究していた。間違いなく彼は、人類のために……多くの人を助けるために活動していた。それは紛れもない事実だ。その中で彼は、僕の力に気付いた」


 一個人が星神に気付く……それは間違いなく偉業だろう。


「けれどその時の彼は、僕の存在に気付いても利用しようとはしなかった。地底に眠る莫大な魔力……もしかすると彼は、それについて危うい物だと感じたのかもしれない。まあ実際その通りだ。意思を宿す魔力なんて、扱いにくいことこの上ない。だから彼は、僕の存在を黙殺することにした」


 ……ここまで聞いていると、星神に滅びを願うなんて理由は見当たらないが……星神が続きを話す。


「やがて彼は幻想樹について結論をまとめた。あの樹は太陽の光や水を吸収して魔力に変える。しかし、いずれ限界が来る。もしそれを超えてしまったら、最悪幻想樹そのものが崩壊してしまうと」

「それは……事実なのか?」


 ブレッジが問う。星神に尋ねて答えが返ってくるか不明瞭だったが、


「ああ、間違いない。あれはあくまで植物だ。どれだけ巨大だろうと限度というものがある……遅かれ早かれ、君達は限界に辿り着いた。もっとも、それがどのくらい先の話かはわからないけどね。ただまあ、君達の所業を見ていれば……下手すれば数年、長くとも数十年といったくらいじゃないかな?」


 ブレッジは沈黙した……とはいえ、彼も心のどこかではわかっていたのではないかと思う。


「そして、彼に悲劇が訪れる」


 星神はなおも語り続ける。


「彼は国の上層部に警告したんだ。現状よりも魔力を取ろうとすれば、場合によっては幻想樹そのものが崩壊するかもしれないと。彼自身、悩みに悩んだ結果だったみたいだね。ここでもし、彼の意見が採用されたなら、悲劇を遅らせることができたかもしれない」

「……何が起こった?」

「国は彼を幻想樹の秘密を知る者として、殺そうとした」


 そこまで……いや、権力者からすれば、その事実を公表されればとんでもないことになる。ならば口封じに……ということなのか。


「彼はどうにか逃げることはできた。けれど、国はどこまでも追いかけてくる。しかもなお悪いことに、国は他国にも彼の情報を伝えた。さすがに幻想樹に限界があるなんて説明はしなかったようだけど、たぶん幻想樹から魔力を奪おうとした、なんて説明をしたのかもしれないね」

「彼は世界中のお尋ね者になったと」


 その言葉で、ブレッジは俯いた。


「そのニュースは、なんとなく聞いたことがある。国際指名手配された人間……幻想樹の機密を盗み、それを悪用しようとした……なおかつ、研究に関わっていた人間を殺したと」

「その事実はほとんどが捏造だね」


 星神の言葉に、ブレッジは何も答えなかった。関わりのなかった彼でさえ知っているのだから、星神の語った人物は古代の世界において有名になってしまった人、ということなのだろう。


「彼が捕まったなんて話はなかった……逃げおおせたのか?」

「少なくとも国には捕まらなかったよ。もし見つかったら殺される以上、彼はひたすら逃げるしかない。顔も知られ、全世界の人間が敵に回った時、彼は思った。なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか。自分は、世界を救おうとした人間ではないのか」


 そこから先は聞かなくても理解できた。そして星神は、俺の思っていた言葉を口にする。


「彼の中に憎悪が芽生え始めた……やがて彼は、星神の下へと向かう。そして彼は願った。自分に痛みしか寄越さない世界であれば、もはや必要ない。警告を無駄にして、あまつさえ自分を殺そうとするのであれば、自分もまた思い知らせてやると……そして僕は願いを叶えた。幻想樹は消え果て、人間同士が戦争を始めた。最初は、とある人間の憎悪から始まった……いずれ限界が来る文明であったとしても、まさかこんな風に終わるなんて、誰も予想できなかっただろうね――」


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