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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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人の心

「……どのような作戦なのかは明瞭にわかりました。ならば、私も皆様の策に従いたいと思います」


 エメナ王女の言葉は同意……ひとまず、大きな山は越えたという感じだな。

 とはいえ、これで全てが決まったわけではない。そもそもリヴィナ王子がどのように考えているのか……それについて確認しなければならないためだ。


「確認だが、リヴィナ王子の心情次第では――」

「ええ、わかっています。その場合は……覚悟は既にできています。星神との戦いを考慮して、動くことを優先しましょう」


 ――俺達の作戦は、人の心に踏み込むものだ。単なる戦いの事実だけを利用するのではなく、王子や王女の心情を利用する。ただこれは非常に曖昧で、どう動くかわからない。それ故に、果たして作戦通りいくのか不明瞭だ。

 とはいえ、十分勝算はある……まず第一にエメナ王女を味方につけることができた。しかも星神のことなどを完璧に把握した上で、だ。これならばやりようはいくらでもある。


 事情を話せば俺達は動かず王様を説得することも可能かもしれない……まあこの辺りについてはまずリヴィナ王子のことを確認しなければ始まらない。


「確認だけど、これからリヴィナ王子との直接対決……で、いいんだな?」

「はい」


 俺の質問に頷くエメナ王女。


「王都へ戻り、そこで対決を」


 この状況で王都へ戻って大丈夫なのか――とは問わなかった。俺達は賢者の予言により問題ないことは知っているし、何よりそれが成功することはわかっているためだ。


「なら、俺達はそれに追随して動くことにする……とはいえ、だ。先にも説明したけど精霊ウィスプからの情報……何かしら組織がいる可能性が否定できない。よって、俺達は動くべきなのか……その判断が難しい」

「ひとまず、まだ身を隠しているべきでしょう」


 俺の言葉にエメナ王女はそう答えた。


「懸念があるのであれば、それで構わないと思います。露見すれば終わりですし、警戒はすべきかと」

「そうか……俺達が出張らなくとも大丈夫か?」

「現状では。もし何かあれば改めて相談します。ただ、私と兄上との対決……そこについては、注意すべきだと思います」

「確かにな」


 実際、現状は表層的には一緒でも貴族の私兵が動いたように、異なる事例がある。それを観測するために、俺達も動く必要がある。

 現状では、少なくとも見つからなければ問題はない……はずだ。貴族の私兵についても、俺達がこの大陸に来訪したから反応したのであって、俺達が密かに動いていたから、という理由ではないためだ。


 よって、エメナ王女の言う通り俺達は今まで通り密かに活動していく……ただ、


「エメナ王女の進言に従って、俺達は隠れている……が、最大の問題はやっぱり王様かな」

「父上ですか?」

「俺達の作戦を遂行しようとなったら、当然ながら王様の力を借りないといけないわけだ。けれど、俺達は裏組織なんてものがあるのか判明するまでは動けない」

「なるほど、そういうことですか……ならば私が話をしてみましょう」

「まあそれしかないよな」


 そこから俺達は色々と協議を行う。といってもここからの話し合いはエメナ王女が作戦に加わったことで円滑に進んだ。


「よし、それなら明日以降の方針は決まったな」


 作戦についてまとめ、俺が言うとエメナ王女もまた頷いた。


「よって、俺達も明日から動くことになる……けど、あくまで密かにだ。あ、そういえばもう一つ重要なことを確認していなかった」

「私の仲間に話すかどうかですね」


 俺は頷く。王女の返答は、


「そこについては、ひとまず置いておいて構わないかと思います」

「話さないってことか?」

「内容も内容ですからね」


 さすがに王女としても、仲間には話しにくいとという判断か。


「信頼できる仲間ではありますが、さすがに今回の一件……星神が降臨するという点については、荷が重いかと思います」

「そうだな……」

「もし話すに足る状況が来れば私の判断で……ということでよろしいでしょうか?」


 俺は「ならそれで」と答え頷いた。エメナ王女の意見も尊重しなければいけないし、俺達は彼女の仲間については詳しく知らない。判断は王女に任せるべきだろう。


「あと残る懸念は……何かありますか?」

「とりあえずはこんなところかな……そちらは何か質問は?」

「今は何も……というより、スケールが大きくてルオン様達が語った内容を飲み込むだけで精一杯というか」


 無理もない。むしろ俺達の話をちゃんと信じてくれただけでもすごい。


「なら、今日はこんなところで終わろう。あ、今回話し合ったことについても適当に誤魔化しておいてくれ」

「はい、わかっています」


 そうしてエメナ王女は部屋から出た。それを見送り、俺は息をつく。


「ひとまず、作戦は成功……というか、作戦を行う条件は整ったと言うべきか」

「お疲れ様でした」

「俺よりもソフィアやリーゼがいたことで、エメナ王女は信じたと思うけどな……さて、ここからが大変だ。俺達は裏方として……そして、この戦いの見届け人として、立ち回らないといけないな」

「今まで以上に忙しくなりそうね」


 リーゼが言う。ここからはエメナ王女の動向を追う形になるからな。今まで以上に忙しなくなるかもしれない。


「ま、それはそれで仕方がないさ……さて、エメナ王女は明日から移動を始めるだろうし、俺達も準備を始めないと」


 一応、すぐに出立できるように準備はしてあったのだが、今後の方針が決まったので、荷物の整理とかもしたいところ。


「私達はルオンに追随する……ってことで、いいのかしら?」


 リーゼの問い掛けに俺は頷き、


「ここからは全員で動くことになるかな……シルヴィとラディについては相変わらず密かに動向を観察してもらいつつ……に、なるけど」


 あの二人には悪いけど、そういう役回りも必要だしな……ということで、俺達は改めて相談。そして、明日以降の動き方なども確認して……休むことに。

 これからは、俺達が能動的に動くのではなく、王女の動向に際して動く形になるので、色々と大変だが……作戦がいよいよ始動する以上、気を引き締めないと……そんな風に思いながら、俺は就寝することとなった。


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