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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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救うべきは

「まず、お礼を申し上げます。私の近くにいた刺客を、退治して頂いたようで」

「それについては……俺達が動いたせいというのもあるから、礼は要らないさ。ひとまず当該の貴族は動いていない。おそらくエメナ王女がリヴィナ王子と対峙する時まで、動きを止めたままだと思う」

「そうですか……近い内に、兄上と決着をつけることになると思います……その時の障害が一つ消えたとして、幸いだと思いましょう」


 どこか物憂げな表情で語るエメナ王女。仕方がない。何しろ相手はリヴィナ王子なのだから。


「ここを訪れ貴重な情報を得ました。やはり兄上が手を出している技術は、止めなければなりません」

「そうだな……そこについては同意する」

「詳しい説明はしていませんでしたが、もしやあなた方の目的であったものはここで見つかったのですか?」

「ああ、完璧に近い形で……その上で、王女に話をしたい」

「それは?」


 俺は一度ソフィアを見た。彼女は小さく頷き、それを見て話し始める。


「ここで話をすること自体、俺達にとってもかなり異例のことだ……実のところ、王女の旅路は援護しているとはいえ、深追いをしないというのを最初は考えていた」

「国同士の交渉を行った後です。それは仕方がないことでは?」

「そういう理由もある……が、大きな理由は別にあるんだ」

「どういうことですか?」

「……ここからの話は、王女には到底信じられない内容も含まれている。あなただけに話をすることについても、あなたの仲間に聞かれたくないということでもある。今回、俺達と深く関わった関係者であり、また同時にこの戦いにおける最重要人物であるからこそ、話をしたい」

「……どうやら、かなり重要な内容みたいですね。それは間違いなく星神に関わることであると予想できます。ただ、私がどこまで協力できるかは――」

「それもまた、話を聞いてから判断して欲しい……ここからの話は、ひとまず他言無用で頼む」


 エメナ王女は頷く。そして俺は意を決するような気持ちを伴いながら、口を開いた。






 正直、どこまで信用してもらえるかわからない話ではあったけれど……エメナ王女はどうやら俺達の説明を聞いて、信用してくれたらしい。


「星神の技術……そして、この戦いの結末ですか……」


 さすがにエメナ王女が即位するとまでは言わなかったのだが、王子二人が――ということを説明したらどうなるかは必然とわかるので、彼女もどうやら物語の結末は理解している様子だった。


「話はわかりました。その中でルオン様達は、星神との決戦に備えてこの大陸へやって来た」

「結果としてこの屋敷で情報を得た……賢者のことを含めて。それについては現在早急に対策をとりまとめている。どこまでやれるかわからないが……負ければ世界が滅亡だ。俺達は全力を尽くすことだけは約束する」

「わかりました。その中で私は……どういう役目を?」


 尋ね、エメナ王女は俺のことを真っ直ぐ見据えた。


「こうして話した以上、もう賢者様が見た枠の外に出てしまったはずです。どれだけ私が同じように行動をしても結末を知っているならば齟齬が出るでしょう」

「そうだな。俺達も、どうすべきか考えた。最優先すべきこととしては、星神との決戦に備え時間を確保することだ。今すぐに降臨してしまったら何もかも間に合わない。だから可能な限り時間を稼ぐ。そして賢者が見た未来の通りに時間を進め、決戦に挑む」

「星神との決戦を思えば、当然の判断だと思います。もちろんそれは、リーベイト聖王国に多大な痛みをもたらしますが」


 理解はしているようだし、なおかつ俺達が悩んでいることも察している。二律背反の問題であるように感じられるし、だとしたら星神のことを優先しようというのは、エメナもわかっている。


「しかし、ルオン様達は本来の目的を達成すべく動くべきでは?」

「ああ、そうだな……ただし、俺達は相談した結果、一つだけ両方とも救える可能性のある選択肢を見つけた」

「両方?」


 首を傾げるエメナ。ここだ、と俺は思う。


「先も言ったとおり、時間を稼げばリヴィナ王子を始め、王族に大きな傷が生まれる。それを止めようとすれば、星神の降臨が早まる危険性がある……現時点で俺達がこの大陸へ来たことによって、貴族の私兵が王女の近くにいたということもある。それを踏まえれば、俺達が表立って行動する事によってどれだけの影響が出るかは想像できる」

「そうですね。しかしそれを理解した上で両方救う?」

「そうだ……俺は、魔王との戦いで破滅の未来を止めた。もちろんそれはソフィアという存在によるものが大きいけれど……道筋を作ることはできたんじゃないかと思う」

「私はそう確信しています」


 ソフィアが続く。エメナ王女を見据え、堂々と語る。


「だからこそ、未来がわかっていること……それを利用し、二者択一のようなこの問題を解決しようと思ったわけです。賢者様の未来は多くの情報をもたらしました。私達にとっては非常に有益で、今後の方針を立てることが容易になった。その中でエメナ王女……あなたのことについても」

「……賢者様の未来によれば、この屋敷を訪れた後、私は兄上と直接対決をする。私自身そう決めていましたし、そうなるのが必然でしょう。それを止めると?」

「いや、ここからの動き方は変えない。エメナ王女はこのまま、王都へ戻ってもらう。そしてリヴィナ王子と対峙してもらう」


 その言葉にエメナ王女は少し戸惑った表情を示し、


「なら、どうやって――」

「その作戦を話す前に、エメナ王女自身どう考えているのかを聞きたい」

「私?」

「ここまで話したのは前提だ。きちんと俺達のことを話さなければ作戦の説明もできないから……問題はここからだ。他ならぬエメナ王女。あなたがリヴィナ王子をどうしたいのか、それを確認したい」


 こうして殺そうとした以上、極刑を望むのか、それとも許すのか……ここを確かめなければ、詳細は話せない。


「リヴィナ王子は捕まれば、この国の法に照らし合わせ裁かれるとは思う。やったことが大きい以上、王も無罪放免とはいかないだろうし、何らかの処罰は下される。しかしそれ以前に……エメナ王女はどう考えているのか。それを聞きたいんだ」


 エメナ王女はどう応じるのか……沈黙が生じる。彼女はしばし考え……数分ほどだろうか。ずいぶんと長い時間だと思った矢先、王女は口を開いた。


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