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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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最大の山場

「ソフィアが懸念した者達……仮に組織だって動いているとすれば、裏組織って感じか。そういう勢力があるかについてはまだ推測の域を出ないとしても……聖王国がここまで急速に発展できたのは、何かしら理由があると考えて良いかもしれないな」

「ルオン様としては、どうすべきとお考えですか?」

「微妙だな。俺達が目指しているのは、この戦いを賢者が見た予知通りに進めることだ。精霊ウィスプの件を始め、俺達という存在が介入してくるのを見越して賢者は色々と策を施していたみたいだけど……俺達の方針は変わらない」

「賢者はどのように考えていたのだろうか?」


 疑問は精霊エルアからのものだった。


「詳しいことを彼は語ろうとしなかったが……」

「そこは不明瞭だな。ただ、俺達がいずれ来ることを考慮して打てるだけの策は打っていたのは間違いない……それが予知した未来を守るためなのか、それとも予知を打破するためのきっかけかは、資料からも読み解けない」

「そこは自分で考えろってことでしょうね」


 リーゼが腕組みをしながら考察した。


「私達が来ることで、状況は刻一刻と変わっていく……賢者様としては、何かしらの介入によって未来が大きく変わることは確定的であり、余計な情報を与えないようにしていたのかもしれないわ」

「あくまで情報は重要な部分、最低限ってことか……ともあれ、俺達はここに来て選択に迫られたわけだが……そこについて行動するより前に、先にやっておくべきことがある」

「エメナ王女のことですね」


 ソフィアの指摘に俺は深々と頷いた。


「元々、翻訳作業をお願いしようとしていたわけで、それは果たされた。今回出た懸念については、エメナ王女との話し合いが終わった後にやるってことにしよう」

「まずは調査かしらね」


 リーゼが言うと口元に手を当て、


「それはエメナ王女の騒動が一定の決着がついてから、かしら」

「そうだな……ただ、城へ踏み込む段階となった時、俺達の存在をどうするかだけど」

「当初の予定では国王に話を持ちかけるつもりでしたが……」

「少し段取りを変えないといけないかもしれないな」


 むしろ裏組織なんてものが存在しうる可能性をここで検討できたことは収穫かもしれない。


「それでは、話し合いはこのくらいにして……一度屋敷へ戻るとしようか」

「良い報告ができてなによりです」

「そうだな……精霊エルア、頼んだ。できればすぐにやり取りできるような態勢が望ましいんだが……使い魔とか近くに置いておいてもいいか?」


 監視と捉えられかねない感じなので、ダメだと言われたらすぐに引き下がるつもりなのだが……精霊エルアは頷いた。


「ああ、それで構わない」

「わかった。使い魔の特徴は――」


 そうして俺はいくつかやり取りをした後、精霊のすみかを後にしたのだった。






 屋敷へ戻り、俺達は報告をして後は待機という形になった。もうすぐエメナ王女がここへやってくる……いよいよ俺達の作戦が始動する。

 とはいえ、まずはエメナ王女の説得からだ……まあ王族としてもそう悪い話ではないと思うので、彼女は納得するとは思うのだが。


 ただ、リヴィナ王子のこと……ここについては多少気になる。現在彼女を王子は目の敵にして殺めようとしている。そうした状況に晒されて、他ならぬ王女はどう考えているのか。

 その辺りのことを考慮して、俺はエメナ王女とどう向き合うかを仲間達へ相談する。交流をしたことを踏まえ、なおかつエメナ王女は俺達に狙われているとまで表明した。多少なりとも信用してくれているのは間違いないし、話は聞いてもらえるはずだ。


「ねえルオン。エメナ王女の仲間には事情を説明するのかしら?」

「仲間達か……そこは正直、微妙なところではあるな」


 俺達としては、エメナ王女の仲間についてもある程度把握しているわけだが……こちらの事情を全て伝えていいかと言われると……。


「資料を読む限り、考えなければいけないな」

「あくまでエメナ王女に対してだけ、ということね?」

「今のところはそう考えている……そもそも王女以外の人間は俺達のことを見ても誰? という感じだろうしな……」


 変に混乱させないためにも、出ない方がいいだろう。


「それに、王女の仲間達も重要人物だし、変に刺激すると……という可能性もある」


 賢者が残した資料を読む限り、結構波瀾万丈な旅路らしいし……俺達が出しゃばることで、その辺りに問題が出たら旅にも支障が出る。


「まず王女とだけ話をして、その辺りのことも確認をとろう。元々、王女がこの屋敷を訪れた場合でも、最初は領主フォルナだけで話をして、俺達は隠れているというつもりだったしな」

「そうね……果たして上手くいくかしら?」

「いくかいかないか、じゃないな……やらなければいけない。絶対に」

「そうね……」


 リーゼとしても不安があるらしい……まあ、俺としても同じだ。最大の問題というより、この作戦の要は間違いなく、エメナ王女との交渉だ。そこが成功しなければ全てが破綻する。つまり、この屋敷にエメナ王女が訪れたところが最大の山場というわけだ。

 多少なりとも親交がある以上は、俺達の言説をきちんと信用してくれる……とは思う……のだが、さすがに作戦のことを話す以上は、俺達のことを全て伝えなければならない。


 それによりエメナ王女がどういう反応をするかも気になるのだが、何より星神という存在を知ったことにより、どういう反応をするのか……責任感が強い人物なので、何かしら心を痛めたりするかもしれない。


「まずは話を聞いてくれるかどうか。そして次に、作戦に協力してくれるかどうかだよな」

「事情を知れば、国のことを考えている王女である以上、手を貸してくれるとは思うわ」

「ま、そうか……ということは何より重要なのは、最初の部分か。護衛を出したとはいえ、全てを知った上で送り出しているんだ。不信感とかもたれたら交渉どころじゃないな」

「そこは上手く理由を説明するしかないわね」

「星神のことを絡めて、か」


 それで反応を窺うしかないか……色々と不安が入り混じりつつも、作戦を決行するための日取りは、近づきつつあった。


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