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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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精霊に対する疑問

 俺達は領主フォルナの言葉の後、話し合いを行い――俺とソフィア、そしてリーゼの三人で、精霊ウィスプの下へ向かうこととなった。

 居場所を調べたところで、いけると判断。同行者としてソフィアに加えリーゼという、遺跡探索メンバーが一緒についていくことになったわけだが……今回は精霊に会いに行くということで、そもそも話を聞いてもらえるのかも不明であり、最悪無駄足になる可能性を考慮しての強行軍だった。


 俺達は即座に移動を開始……なんだか移動ばっかりだが、まあこれは仕方がないと割り切ることにする。


「しかも今回は徒歩だからな……」


 森の中を突っ切りながら俺は一つ呟く。場所が場所なので、馬を利用するというわけにもいかない。むしろそれだったら野や山を駆け抜けた方が早いという結論に達したわけである。情報集めなんかもあまり必要なくなったし。


「リーゼは大丈夫か? ここまであまりまとまった休みもないし」


 そんなことを尋ねてみたのだが、


「一緒に迷宮へ潜り込んだことを忘れたの?」

「まあそうだけど……」

「ま、こうして野を走り山を登り……なんて移動は初めてだけど、どうにか二人についていけているわね」


 障害物がなければ移動魔法である『バードソア』を用いるのだが、森の中だと体は問題なくとも木々が無茶苦茶になったりするのでそういう場所は足を強化してひたすら走っている。まあそれでも俺やソフィアのレベルなら魔力強化だけで結構な速度になるのだが、リーゼは魔王との戦いから鍛練を積んできたわけでもないし、そういう移動手段を用いたこともないので、ついてこれるか不安だったのだが、


「とりあえず、足手まといにならないことは良かったわ」


 そんな感想がリーゼから漏れた。一方でソフィアはリーゼを気遣いつつも、並んでいることについては良いと思っているらしく、少し笑顔も混ざっている。

 そういうわけで、俺達は目的地をひたすら目指して突っ走る……後は道に迷わないことだけを心配すればいい。


「ルオン様、今のうちにウィスプと出会った時のことを考えておきましょうか」


 道中でソフィアが提言をする。俺は頷き、


「ああ、そうだな……何か案はあるか?」

「直感的に思ったのは、ウィスプは古代人の情報を持っている。ということは、星神のことも把握しているはずです。このままでは精霊もまるごと消える……そういう風に話を持って行くのが良いかと思ったのですが」


 まあ星神のことを把握しているのであれば、通用するかもしれない話ではあるのだが……微妙だな。


「ただその言及は、ウィスプが星神を敵であると認識していることが前提だな」

「……星神の味方であると?」


 難しい顔をしてソフィアは聞き返す――移動を重ねる間に疑問に思ったのがそこだった。


 そもそもウィスプ……リーベイト聖王国に手を貸した精霊は、なぜそんなことをしたのか明瞭でない。単なる気まぐれという可能性もあるにはあるが、ウィスプ達は星神の降臨を望んでいるため、聖王国に協力すればそれが近づく……なんて思惑があったなんて可能性もゼロではない。

 一応領主フォルナからウィスプに関しての情報は受け取っていて、基本的に星神とは何ら関わりがない……なおかつ、人間に対して友好的な種族であることは確認している。だからまあ、俺の考える懸念は取り越し苦労である可能性も高いのだが……、


「人間のように派閥があって、星神と積極的に関わっている者がリーベイト聖王国に荷担した……とかならまあ、俺達としては良いかもしれないけど」

「そこまで考える必要はあるかしら?」


 首を傾げながらリーゼが問う。


「確かに星神に関わっている……歴史を持っているのであれば、そういう精霊がいてもおかしくはないけれど、仮に星神に好意的で降臨するのを待っているとするなら、ウィスプが今回の騒動に対して表立って行動していないのは変じゃないかしら?」

「まあ、確かに……ウィスプがそういう精霊だとしたら星神が関与していないはずはないだろうしなあ」


 俺の考えはあくまで用心に用心を重ねた上、という感じではあるのだが……まあ初めて顔を合わせる精霊だ。あらゆる可能性を考慮した方がいい。


「とりあえず無難なのは、俺達は聖王国の関係者で、新たな翻訳をお願いしたいから……でもこれ、王国側と関わっている精霊の立場によっては話がこじれるよな?」

「精霊を派遣しているのだとしたら、私達の来訪に違和感は生まれるわね」

「別件で資料を手に入れたから、独自に動いているなんて好意的に解釈をしてもらうのが良いかしら」

「そんな簡単にいくか?」


 俺は足を止めない中で疑問府を頭の上に浮かべた。

 移動している以上はこんなことを話していても今更って感じではあるのだが……最悪なのは俺達の来訪がリーベイト聖王国側に伝わってしまうことだが、エメナ王女とリヴィナ王子の決戦はそれほど遠くない。それを考えれば、ここで露見しても話は賢者の未来通りに進む……とは思うのだが――


「あと、候補に挙がるとすれば……賢者様でしょうか」


 ソフィアが言う。賢者……つまり彼を引き合いに出して精霊を説得しようということか。

 世界を巡っていた彼からすれば、精霊ウィスプと顔を合わせていてもおかしくはない。ただ彼の威光が通用するのかどうか……。


「……とりあえず、まずは自分達の素性は旅人だとして、遺跡から発掘した物を見てもらいたい、みたいな感じで話を持ちかけるか?」


 それで聞き入れてくれるかは微妙ではあるのだが……、


「とりあえず精霊の反応がどうかよね。地理的に考えて、人間が偶然訪れることはない。私達を見て警戒するのか、それとも好意的なのか……土着精霊で人間と交流があるにしても、すみかまで訪れた相手をどう応じるのか……そこで、こっちの動きも変わってくる」


 リーゼの言葉に俺は「そうだな」と同意する。結局は出たとこ勝負というわけだが……シェルジア大陸の精霊は人に好意的だったが、こちらはどうか。不安と期待が胸に存在する中、俺達は目的地へ向け足を止めることはなかった。


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