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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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小屋内の戦い

 猛然と突き進んでくる男は、右手に短剣を握りながら左手を後ろに隠した。何かある――そう直感した俺は一歩だけ後退する。

 敵の出方を見極めたかったのだが、さすがにそれで相手がボロを出すこともなく、なおも迫る。とはいえ両腕が扱える俺に対し片腕だけでは応じることはできないはず。どうするのか。


 頭の中で予測を立てつつ俺は再び剣を薙いだ。相手はそれを短剣で防ぐ。再び腕に違和感を覚えたがそれだけ……しかし今回は続きがあった。

 左手がかざされる。何かをつかんでおり、煙幕か。それとも魔法道具の類いか。


 刹那、男の手のひらに闇が生まれた。魔法というより、道具を用いて魔法を生み出したといったところか。それもまた星神の技術か――考えながら俺は躊躇うことなく左手へ剣を一閃する。ヒュン――風を切る音と共に、パアンと闇が弾けた。


「なっ……!?」


 男は呻き突撃を停止する。まさかあっさりと潰されるとは思わなかったか。俺の動きから左手の挙動はバレてもいいという判断だったのかもしれないが、こちらがあっさりと攻撃を防いだので、行動を中断した。

 ただ、これで相手は俺達の実力をしかと理解したことだろう。短剣を構え男はどうすべきかと視線を泳がせる。隙が多少なりとも生まれているので、仕掛けてもいいが……後方にリーゼがいるとはいえ、小屋の中で仕留めたい。相手がしびれを切らして動き出すのを待つべきか。


 あるいは、連絡手段の類い……何か緊急事態に陥った際に使用する魔法などを行使されたら面倒だが……ラディの結界があるとはいえ、それも実行される前に潰したいところだ。


「俺達を、捕らえる気か」


 そこで男が告げた。ふむ、さすがにこうも待ちが多いと、推察できるか。


 単に始末するだけなら実力差がある以上は、さっさと終わらせればいい。けれど俺達はそれをせず、退路を断ち様子を窺っている状況……敵としてはあくまで捕らえるという手加減をしてもらっているので、そこに付け入りたいはずだが、俺達は油断なく相手を見据える。

 ジリジリと私兵達が後退し、三人が背中合わせになる。俺達は動かず、小屋の入口と窓を塞ぐ形で立ち、どうすべきかと考える。


 防戦に徹すれば、俺達としても少し面倒だ。それに星神の技術と思しきものを所持している可能性が高い以上、俺達としても無理はできない。短剣に加えて先ほどの闇の塊。それ以外にも所持しているだろうか?

 こちらも魔法を使うか? ただ閃光などの魔法は下手すると相手の姿を見えなくしてしまう可能性があるので、先ほど男が使ったように闇系の魔法を使用するべきか。それとも氷などで動きを封じるか――その時、ソフィアの魔力が高まった。退路は塞いだままだが、魔法を使うらしい。


 次の瞬間、ソフィアと対峙する女性が駆けだした。魔法に集中する分動きが緩む……そういう判断かもしれないが、それはさすがに見立てが甘い。即座にソフィアは魔法を行使。左手を軽く振って放ったのは、氷のつぶてだった。


「ちっ!」


 女性は舌打ちをして短剣で氷を弾く。直後、異変が生じた。刃に触れた氷が突如膨張すると、刀身を覆った。


「っ……!?」


 武器を封じるため……他のつぶては全て避けたが、短剣が使いものにならなくなったのは致命的か。ちなみに他の氷は床に落ちたが膨張はしない。魔力に反応して膨らむ仕組みのようだった。

 これで状況は俺達に有利となった……が、攻め立てるようなことはしない。目的が捕縛である以上、慎重に事を進めなければならない。


 ただ魔法の効果がある内に何か一手を……と考えていた時、女性が意を決したかソフィアへ接近した。短剣を振りかざしてはいるが……俺は動きを見て直感する。おそらくソフィアの顔面に短剣を投げつけて、怯んだ隙にというやつだ。

 武器が使えなくなった以上はそのやり方もアリといえばアリだ。ただし、今回の相手はソフィアであり、彼女ならばまあ間違いなく敵の動きから出方を把握しただろう。


 ソフィアもまた前に出る。その動きは破れかぶれになった女性を仕留めようとする動き。そこへ、女性が短剣を――投げた。予備操作はほとんどなく、突っ込むソフィアの場合、予測していなければ避けられないような状況だった。

 しかしソフィアは体をひねってかわす。女性の動きが一瞬止まる。まさか、と驚いているのが態度から明瞭にわかった。


 そして明確な隙ができる――他の男性二人が援護できれば良かったのだが、俺とシルヴィがさせるはずもなく……ソフィアの剣戟が女性にヒットし、相手は倒れ伏した。

 防具などが星神の技術由来なら、死んだふりという可能性もあるが……相手は動かない。一方でソフィアは女性の状態を一瞥した後、一歩下がった。俺達の目的は全員捕縛。それを果たすまでは囲みを解くことはない。


 そこで俺と対峙する男の表情に変化が。どうやら俺達の様子を見て、勝てないと悟ったのか口の端を歪ませた。それが苦笑であると認識した直後、男性は俺へ向け突撃する。

 それは先ほどの策がある動きとは違った。短剣を構えながら、俺の横をすり抜けようとする――ここまで通用しなかった状況下で実行する以上、それは間違いなく大博打だ。シルヴィと対峙する男も、同様に走った。このまま待っていてもいずれやられる。だから、もしもの可能性に賭けて……そういう判断らしかった。


 俺はそれに対しまず短剣を剣で受け、弾いた。膂力の差がある以上、相手が押し戻される。しかし今度は相手も引かなかった。押し通る――扉を目指し、体を前に傾ける。

 そこで俺は素早く相手の腕に剣を当てた。もちろん峰打ちであり、攻撃を受けたことにより男性は呻き声に加え、体を硬直させた。


 さすがに痛みまでは我慢するのは難しい。これによって相手は完全に動きを停止し、最後に俺の剣が体を捉えた。これで相手は気絶。さすがに演技とはいかないだろう。

 続けてシルヴィと対峙する男が吶喊の声を上げながら窓へと走る。短剣を振りかざしたわけだが――シルヴィはそれを巧みにかわした後、連撃を放った。


 俺達がフォローに入れるため、少し大胆な行動に出たわけだ。男はそれを避けることはできず直撃――よって三人目も、床に倒れ伏したのだった。


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