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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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乱入者の素性

「ルオン、私達が一番やってはいけないことは、ここにいることがバレることでしょう?」


 リーゼの言葉に俺はすぐさま頷く。


「そうだ。エメナ王女を嗅ぎ回っている組織……これがリヴィナ王子にまつわるものであれば、シルヴィやラディの姿を見られるだけでもまずいことになる。まあ二人も幻術で姿を変えるくらいはするだろうけど……」

「細心の注意を払って動かないといけない、と」

「そうだな……もしリヴィナ王子の一派であれば、星神にまつわる何かで武装している可能性もある。その場合、幻術なども通用していないなんて最悪な事態もあり得る」


 どうするか……とはいえ、どういう組織なのかは絶対に調べなければならない。


「重要なのは、相手に気取られないように調べることか……正直、ヒントが少なすぎるし、大変だとは思うけど」


 調査を強引に進めれば気取られる可能性があるので、慎重かつ急いで動かなければならない。タイムリミットはエメナ王女がここへ辿り着くまで。それほど時間があるわけでもないので、焦燥感があるな。


「……まず、一つの手だが」


 ここで領主フォルナが言及する。


「エメナ王女へ問い掛けるのはどうだ? 銀の腕輪のこととうろついている人物の人相を告げれば、候補に該当する可能性もあるんじゃないか?」

「あー、それは確かにあるな……」


 王族関連の組織だったら、王女が知っていて対処できそうだし……これが物語の範疇であっても、賢者から得た情報内に記述がない以上、少なくとも星神との戦いにおいてはあまり関係がないと言えるわけだし。


「こっそりシルヴィ達を介して連絡をとってみるか……」

「それが無難だな。おそらく王族関連だとは思うが」

「仮にその場合、俺達はどうするべきだ? 不用意に倒しても、さらに後続がやって来て、なんて可能性もあるぞ」

「王女に倒させるか、私達が対処するかは組織の全容を知ってからでも遅くはない……ただ、私としてはリヴィナ王子の仕業とは思えないのだが」

「根拠は?」

「現在進行形で、王子は王女へ攻撃を仕掛けている。実際は王子の一派がけしかけているという話だが……王子が別に組織を主導しているというのは、考えにくい」


 まあ確かにそうだな……仮に別勢力だとするなら、王子にエメナ王女の首を献上するべく競争をしているみたいな可能性もあるのか? だとしたら、結構面倒な話なんだが。


「……俺達の策は、敵の動きが同じであれば実行は可能だ」


 俺はやがて決断する。


「だから、賢者が示した流れに沿うように努力をする形で……今回のことは、可能な限り敵勢力に漏れないようにする。それが前提ってことでいいな?」


 確認の問い掛けに、全員は神妙に頷いた。






 エメナ王女からの情報がこちらへ届いたのは、翌日の昼を回ってからだった。


「あっさりと答えは出たよ。銀の腕輪と人相から……エメナ王女も知っていたらしいな。どうやらリヴィナ王子に取り入っている貴族の私兵らしい」

「つまり、王子の指示とは別に動いているってことか?」

「その可能性が高いだろうと王女は話していたそうだ」


 フォルナの疑問に俺は答えると、結論を述べた。


「賢者の情報によれば、ああいった勢力が表に出てくることはなかった……よって、迎撃しても問題ないと判断する。で、対応としてはこちらがやる」

「王女にはそう伝えたか?」

「まだだ。ひとまず話し合ってからというつもりだったから。結論が決まったら、回答をすぐにする」

「もし迎撃に成功した場合」


 と、ソフィアは話し出す。


「こういった勢力も動いていた……と、リヴィナ王子へ突きつける材料になるということですね」

「そうだな。元々、エメナ王女はリヴィナ王子が攻撃しているという証拠を集め、糾弾するのが戦いの流れだ。そういった証拠の一つとして、今回発見した勢力を槍玉に上げる……言わば証拠の補強だな。そういう形に持っていくことができれば、話の流れとしては賢者が見た未来と変わらないだろうな」

「ただ、そういう風にする場合……」


 ソフィアは言葉を濁す。これ自体、かなり大変だと理解している。

 というのも、敵は組織で動いている以上、どこまで締め上げればいいのかわからない。最悪指揮している貴族のところへ殴り込みなどという可能性もある。その場合、リヴィナ王子にまで状況が伝わってしまう可能性がある。


 もしやるとするなら、できるだけ敵の状態を把握した上で、迅速かつ適切に攻撃しなければならない。ただ、倒した後に増援が来た場合は延々と迎撃を繰り返す必要がある……さて、どうしたものか。


「問題は、攻撃して貴族側がどう動くかだな」


 フォルナが言う。うん、それが一番懸念するところだ。


「現在、エメナ王女の動向を観察に留めているのは、王女へ攻撃を仕掛けている者が別にいるから……あるいは、まだ調査段階なのか。どちらにせよ、貴族の私兵である以上は、目的を達成するまでは帰ってくれないだろうな」

「問題はそこだよな……どうする?」

「案を提示する前に確認だが、エメナ王女に危険はないのか?」

「王女には仲間もいるからな」


 現在王女は主人公と従者の騎士に加え他に四人の仲間がいる。個性の強い面々で、なんともゲーム的な感じだが、彼らに守られている以上、そう心配はしていない。


「よって、俺達は貴族の私兵に対し注力すればいいと思う」

「そうか。ならば貴族の動きが止まる方向性に持っていけばいいだろう」


 動きが……止まる? 疑問に思っていると、フォルナは説明する。


「私達はリヴィナ王子とエメナ王女が直接対峙するまでに、策を構築しておく必要性があるわけだが、そのために貴族の私兵は邪魔だ。逆を言えば、対峙するまで貴族が介入する時間を稼げばいいわけだ」

「そうだな」

「私兵を派遣している貴族からすれば、一番対応しづらいのは、王女が私兵を撃退した、とかあるいは取り巻きが始末した、とかではなく突然行方不明になるとかだろう」


 ……あー、なるほど。例えば魔物に襲われたとか、そういう風にしたら連絡も来ないし、手駒も失ってどうするか対応に苦慮するか。


「最悪、王女が私の屋敷を訪れるその時まで時間を稼げればいい……そう考えれば、決して難しくはないな――」


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