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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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生の情報

 いくつか操作を行った後、フォルナがとある項目を押した瞬間、画面が暗転した。何事かと仲間達が見守る中で俺は一人冷静だった。たぶんこれは――

 次の瞬間、真っ白い画面になる。いや、それはどうやら天井のようだ。


「これは……」


 ソフィアが驚く間に画面に一人の男性が映った。黒髪の、地味な印象を与える男性。ただその格好はどうやら白衣であり……たぶんあの施設にいた医者だ。


『――――』


 そして何やら喋り始める……のだが、当然俺達は聞き取ることができない。ただ何やら切羽詰まっていることだけは理解できる。


「……録画映像か」


 俺の言葉に一同注目。そこで、


「たぶんこの端末には映像を……当時の光景を記録する機能もあるんだ」

「そんなものが? 古代技術とは驚異的だな……」


 フォルナは興奮よりもただただ驚愕している。


「なるほど、この男性は何か記録を残し、それを金庫に保管していたのか」


 その時、ドオンという重い音が部屋の中に響いた。とはいえそれは非常に遠い……施設の外であると予想はできる。

 音を聞いた瞬間、医者はさらに画面へ向かって何やら話す。そこで俺は、


「確認だが、翻訳できるか?」

「……文字に起こせればどうにかなるが、さすがにこれだけでは……資料はあるから可能かもしれないが、膨大な時間が必要になる」


 まあ厳しいよな……ふむ、様子からすると何かに追われているような印象を受ける映像なのだが……星神に関連することか、あるいは他に何か要因があるのか――


「……ん」


 そこで、フォルナが声を上げた。


「頻繁に同じ単語を繰り返しているな……ちょっと待ってくれ」


 映像はさらに続いている。その中でフォルナはじっと耳を澄ませ、


「……これはたぶん、星神のことを語っている」

「星神?」


 俺は眉をひそめる。


「医者がなぜ星神のことを?」

「さすがにそこまではわからないが、この男性は古代語で星神と翻訳される単語を話している……これは今の言葉に由来するもので、私達の言語に残っているものだから、どうにか聞き取れる」

「ということは、つまり――」

「どういう経緯で星神のことを話しているのかは不明だ。しかし先ほどの重い音から考えて、星神の攻撃を受けているのかもしれない」


 ……だからこそ、あんな山奥に施設を? 疑問は生じたが、答えを出すことは難しい。


「他に聞き取れる単語は?」

「現時点ではないな」


 その時、映像が終了した。他にもファイルがあったので再生してみると、先ほどの男性が画面に向かって話し始めている光景があった。


「別の日だな」

「日記のような記録として、映像を残したのかもしれない」


 俺の推測にフォルナは「なるほど」と応じつつ、


「どうやらこれは星神に関連する物であることは間違いないようだが……ただし翻訳には相当な時間を要する。この場にいる者達で作業に当たるとしても、恐ろしい時間が掛かるぞ」

「だよな……ただ、この男性は記録している時点で状況を説明しているだけにすぎない。星神のことを喋っているのは事実だろうけど、有益な情報かどうかはわからないぞ?」

「確かにそうだな……他の映像も同じか?」


 フォルナはさらに別の映像を出してみる。ファイルの数は結構あって、その中の一つをピックアップすると――今度は別の男性が。椅子に座り、映像に向かって喋っている。

 先ほどのは自撮りのようにも見えるアングルだったのだが、今回は違う。誰かがこの端末を持って明確にメッセージを残そうとしている。


 男性の姿は白衣だが、髪が茶色でやや年配だった。医者に見えなくもないが……研究者のようにも見えるな。


『――――』


 そして喋り始める。やはり何を言っているのかわからないのだが、


「……星神に関する話みたいだな」

「重要な情報を残したから、金庫に入れていた?」

「その可能性もゼロではない」


 だとすると、調べる価値はあるのか……星神が降臨した際の生の情報だ。非常に貴重なものではあるのだが――


「問題はどうやって調べるか……時間を掛ければいけると思うが、さすがに全てを翻訳するのは――」

「人海戦術にしても厳しいな……もし翻訳を早期にするのであれば、無茶をする必要性がある」

「あてがあるのか?」

「あくまで推測だが……リーベイト聖王国が手にした技術とも関連する事柄だ。現在この国は急速に発展しているわけだが、これはおそらく今回のように完全に近い施設が見つかった、と断定してもいいだろう」


 ……遺跡を探索している時にもそうやって推測した。俺やソフィアは頷き、


「俺も同意見だ」

「はい、私も……となると、こうした映像があったと?」

「ルオン殿の言う通りこの端末がありふれたものであったとしたら、リーベイト聖王国が調べた遺跡に存在していてもおかしくはない。ただ、映像があったとしても翻訳作業に苦労したはずだ……本来なら。映像一本を訳すだけでも膨大な時間を要する。しかし今の技術発展はそうした時間など皆無のように思える。となれば導き出される答えは――」

「翻訳者がいるか、それとも翻訳機能があるか」

「あるいは、字幕とかつけられるのかも」


 俺はそう言葉をこぼす。ソフィアは俺を見返し、


「字幕?」

「映像に何を喋っているのか、文字を表示することができる……文字にすれば全文の翻訳はそう難しくはないだろ?」

「時間は掛かるが……城側は人海戦術だってできるだろうし、そういう可能性も考えられるが……私としては、技術発展の速度を考慮して翻訳者、あるいは翻訳できる何かがあったと推測できる」

「……現在の言葉に翻訳とか、あり得ないだろ?」


 俺の指摘にフォルナは小さく頷くも、


「だがそれを実際している」

「矛盾しているような気もするけど……」

「そうでなければ聖王国の技術発展に説明がつかないからな。噂に上がっていた話なのだが、あり得ると私は考えている」

「噂?」

「古代の研究……そのメンバーの中に、古代から生きながらえている精霊の存在があると」


 精霊……!? なら聖王国に手を貸す理由は不明だが――


「もしそういう存在がいるのであれば、翻訳についても容易だろう……この映像を真正面から挑んだのでは時間が足らない。私は攻略法を探すとしよう。その間にルオン殿達は引き続き調査を行う……それがおそらく、最善の道であるはずだ――」


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