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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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試行錯誤

 フォルナの屋敷へ帰還し、俺達は成果を報告する。それに対し肝心の領主は、


「うおおおおおおおおおおおお――!!」


 死ぬほど興奮して、飛び上がりそうな雰囲気であった。むしろ興奮しすぎて倒れるのではとか思うくらいの反応である。


「落ち着けって……」

「これが落ち着いていられるか! 世紀の大発見だぞ!? 古代の手がかり……その一端を間違いなく私達は手にいれたんだぞ!?」

「なんか主旨が変わっているぞ……」


 俺の指摘に対しフォルナはなおも言い募ろうとしたのだが……ここで口が止まり、


「……オホン、すまない。気が動転してしまった」

「ああ、うん……で、解読作業を頼みたいんだが、できるのか?」

「結論から言うと、可能ではあるのだが……時間が掛かるぞ。それに、私はこれの操作方法がわからない」

「そこは俺がどうにか……結局一緒に作業をする必要があるか。ただ」

「ああ、わかっている。他の場所を調べるなど、やりたいことも多い、だろう?」


 俺の懸念を先読みしたフォルナ。こちらは素直に頷き、


「そうだな……問題は解読作業にどの程度掛かるのかだが」

「一日もあればおそらくは……いや、解読量にもよるな」

「なら早速始めようか……ソフィア達は待機ということで」

「お手伝いしますよ。どの程度役に立てるのかわかりませんが」


 ……彼女の言葉に甘えることにして、俺達は全員で作業を始めることに。カティやフィリが作業している横で俺達がおもむろに調べ始めたのだが、


「私もそちらに興味があるのだけれど」

「カティ、我慢してくれ」


 俺はカティへたしなめるように告げつつ、解読作業に入る。まずホーム画面と思しきもの。これについては割と簡単に翻訳できた。


「これは設定という意味合い……あとこれは、計画……か?」

「スケジュール管理とかしていたのかな」


 まあタブレット端末だし、日常的に利用していたのだろう。そうだったらなぜ病院を引き払うときに持っていかなかったのか気になるけど……。

 設定項目をタッチして、そこからさらに解読を進めていく。タッチするごとに色々と画面が切り替わり続けるので、文字の量はかなりになるな。


「これ、一日で終わりそうか?」


 こちらの疑問に対しフォルナは「わからん」と答えた後、


「ともあれ、一両日中でどれだけやるか試すことにしよう……しかし、下手すると徹夜になるぞ」


 時間的にゆとりが多少なりともあるから、別に徹夜までする必要性はないかもしれないけど……そんなことをして体調が悪くなったら目も当てられないしなあ。


「そこまでやることはないかもしれないが……」

「ちなみに私は止められても徹夜でやるつもりだぞ」

「……本人がやりたいのなら止めはしないけどさ」


 フォルナの言葉に俺は少し呆れながら応じる。なんというか、宝物を目の前にして目を輝かせている少年のそれである。まあ興味ゼロよりも解読作業が進むから、これはこれでいいけど。

 で、その日はずっと作業をし続けたわけだが……普段剣を振り、旅を続ける俺ではあったが、こうして根を詰める作業というのは慣れていなかったらしい。組織運営で書類仕事も少しは板についたかと思ったのだが……なんだか目と首が痛い。


「ルオン様、お休みになられては?」


 そんな様子に気付いたソフィアが言うのだが、


「いや、他の全員が休んでいないのに、俺一人というのは申し訳ないし、なんだか負けた気になるし」

「別に勝ち負けの問題では……」

「この言葉は……今の物で言い表すとチェスだな。遊戯に関してもこの端末とやらで可能なのか」


 俺達が会話をする間もフォルナは淡々と解読作業を進めていく。で、チェスか……。


「病院にあったことを考えると、日常的に使っていたのは間違いなさそうだな。で、暇になった時とか、リフレッシュしたい時に遊んでいたと」

「ストレス解消というわけか……ふむ、ここまで解読を進めてきたが、重要な情報はないか」

「まだその部分にまで到達していないだけだと思うが」


 まだまだ表層部分……とはいえ時間は過ぎ去り、気付けば夜に入ろうとしている。これは本当に一日以上は掛かるな。


「実際のところ、徹夜をするのか?」

「先も言ったが、私は続けるぞ」


 なんというか、ワーカーホリック的な感じだな……こちらとしては話が早いので、その方針に任せることにするけど。


「ソフィア、どうする?」

「ルオン様に従いますが」

「なら続けるか……ただし、体調が悪くなりそうだったら、無理はせず休むこと。いいな」

「はい」


 リーゼも頷く。さらにカティやフィリもこっちへ来て作業に加わる。気付けば人員全てでタブレット端末について調べる形になった。

 作業ペースは徐々に早まってはきているが、終わるのはどのくらいになるのか……時刻は深夜帯を迎え、さすがに根を詰めすぎて眠気も生じてきた。


 戦いなら一昼夜できるんだけどなあ……などと考えつつ、あくびをかみ殺し作業を続ける。ここまででフォルナについてはまったく作業の速度が落ちていない。なんというか、本当にライフワークなんだと認識させられる。おそらく彼女がいなかったら、解読作業自体が相当難航していたことだろう。

 ただ、日が出るまでにはある程度目処が立って欲しいところなのだが……そんな時、フォルナがあることに気付いた。


「ふむ、保管庫という表記があるな」

「保管庫?」


 首を傾げ呟いたのはソフィア。


「その端末の中に、保管庫ですか?」

「そういう風に翻訳される場所だ。ニュアンスなどは違っているかもしれないが」

「……保管庫、か」


 俺は小さく呟くと、端末近くへ赴く。


「もしかすると……」

「ん、何かあるのか?」

「この端末を利用していた人間に関する情報が眠っているかもしれない」

「ああ、なるほど。そういう意味合いで保管庫か。個人的な内容であれば多少申し訳ないが……調べてみよう」


 俺の提言により、フォルナは端末を操作し始める。たぶんだけど、このタブレットの核心部分に触れることになりそうだ。果たしてどのようなデータが眠っているのか……ゴクリとつばを飲みながら、俺はフォルナの操作を見守ることにした。


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― 新着の感想 ―
[一言] 秘蔵フォルダが火を噴いて、古代人(持ち主)の性癖が暴露されてしまう(マテ
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