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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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施設の謎

「……推測だけど、必要最低限のモードってことじゃないかな」


 照明がついて俺は部屋の入口へ戻り、ソフィア達へ説明した。


「たぶん動力源は魔力で、しかし霊脈が存在しない……魔力を十全に確保することができず、必要最低限の照明を点灯させた、みたいな感じ」

「なるほど……それなら一応理解できます」


 ソフィアは床に手を当てながら答える。


「探査魔法は終了しました。ルオン様の推測通り、魔力が大地からこの設備へ流れ込んでいます。ただその量は多くはない」

「だろうな。ま、これでたぶん施設内の扉が動き始めたと思うから、調べてみよう」


 照明については非常灯レベルなので、俺達はなおも明かりを生み出しつつ調べることに。動力の部屋を出てすぐにあった扉について調べる。すると開閉のスイッチらしきものがすぐに見つかった。


「これか」


 壁の一部分が淡く緑色に輝いている。たぶんここに触ると動作するんだろう。

 で、試しに触れてみると……扉がゆっくりと開いた。ソフィアとリーゼが驚いている中で、部屋の中を確認する。


 そこは……ひどく殺風景な部屋だった。本棚とか、テーブルとかそういう家具は存在しない。その代わりに唯一、部屋の左右、壁際にいくつものベッドが配置されていた。

 ――先ほど、こういう施設なのではないかという推測を頭の中でしていた。それが見事的中した。ここは間違いなく、


「病院だな」

「病院、ですか?」


 ソフィアは部屋を覗き込みながら俺に応じる。


「ベッドが立ち並んでいる……患者の方をこの部屋にまとめていたと?」

「他の部屋もたぶん同じ構造だと思う。隣の部屋とかも調べてみよう」


 で、ドアを開閉してみると、やはり同じ構造でありベッドが並んでいた。やはりここは病院……思わぬ施設に立ち入ったわけだが、ここで疑問が。


「……なあソフィア、リーゼ。俺達はこの施設を歩き回っていたわけだが」


 俺は下を見る。そこにはツルツルとした白い床が。


「例えば天使の遺跡については、資料などが残存しているにしろ、廊下とかは土埃なんかが積もっていた。それは今まで入り込んだ遺跡で例外はなかったが……この施設は、そうじゃない。それどころか、ベッドまで壊れることなく存在している」


 俺はベッドの一つに近寄って触って見る。うん、壊れそうな雰囲気はない。


「この違いは、古代の人々の技術がとんでもないものであったということを証明しているわけだが……原理は何だ?」

「魔法によるものであることは確かでしょうね」


 疑問に応じたのはソフィア。


「この遺跡へ踏み込むより前に魔力を感じ取る事ができました。この施設全体を何らかの形で保存する……そういう機能を持っていたのではないでしょうか」

「霊脈がなくなっても、それだけはきちんと稼働していたってところかしら」


 リーゼがソフィアの言葉に付け加える。遙か遠い未来にまで原形を残す技術……さすがに俺達が来るまで残すつもりはなかったかもしれないが、古代人の技術のすごさが伝わってくる。

 で、この事実は俺にある仮説を思い浮かばせる。


「ソフィア、これは――」

「同じ事を考えています。リーベイト聖王国のことですね?」


 彼女の質問に俺は頷く。

 聖王国は古代の知識を利用して技術革新を行ったわけだが……その遺跡もこれほどまでに残っていたものであるとしたら、その魔法技術の発展が急速であることも頷ける。


「こんな遺跡が、リズファナ大陸にはそこかしこに存在していると?」

「ここまで原形を留めている場所は、それほど多くはないかと思います」


 と、ソフィアが俺に対し言及する。


「こうした遺跡ばかりならば、今まで見た資料にその旨が記述されていてもおかしくはありません。遺跡内のスケッチをした絵なども資料の中には存在していましたが、そのどれもが天使の遺跡のように、ボロボロでした」

「ということは、こんな場所は例外中の例外ってことか……ここが病院だとすれば、わざわざ残したのは――」

「いずれ使えるように、ってことよね」


 リーゼが告げる。


「さすがにこの時代まで使えるように、というわけではないでしょうけれど……非常時か、あるいは他に何か理由があるのか……ともかく、使えるよう残していたと」

「そうだな……開いていた部屋はもぬけの殻だったことを踏まえると、ここを事情によって離れる必要に迫られた。けれど、戻ってすぐに機能を回復できるように処置をしていたってことか……ただ残る疑問としては、なんでこんな山奥深くに病院を建設したのか。霊脈を利用したとはいえ、いくらなんでも立地が悪すぎる」

「ここでしかできなかったことがあった……ということかしら。霊脈に近くなければできない何かが」

「そこまで霊脈を利用したいと? それはただの病院って感じではないけど……」


 俺は部屋の中に並ぶベッドを見据える。まだ全てを見回ったわけではないが、ここまでの印象としては、普通の病院だ。研究機関を兼ねた病院とか、特別な要素はなさそうに思える。


「そこは私も疑問だけれど……調べたらわかるかもしれないわよ?」


 リーゼが提言。ま、結局そうする他ないよな。


「……念のため確認するけど、探索は継続するってことでいいんだな? ここが単なる病院であったとしたら、俺達の行為は無駄に終わる可能性が高いけど」

「やりましょう」


 ソフィアが表明。リーゼも頷き、俺は決断する。


「なら、徹底的に調べよう。それに、病院とはいえ、ここまで綺麗に残っている施設だ。好奇心もあるからな」


 既に古代の人々の技術を目の当たりにしているが……それについてより調べたくなった。

 リーベイト聖王国側も、こうして残された遺跡を見たのであれば、興奮するだろう。研究者達はこぞって調査に入るに違いない。そして全てが宝の山。ならば星神の技術に手を伸ばすのも頷ける。


「……なあソフィア」

「はい」

「これほどの施設がまだ残っている……リーベイト聖王国側も遺跡調査くらいはやっていたはずだ。なのに見つけられないというのは……隠蔽とか、そういう可能性もあるか?」

「微妙なところですね。もしそうなら、遺跡調査について不穏な噂があってもおかしくありません。ただ、情報集めをしている段階でも、そういうこともなく……こうして残る遺跡が少数ということではないでしょうか?」


 見つかりにくく、少数か……疑問の余地はあるが、今はただ足を前に向けることで解決法を探すほか無さそうだった。


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