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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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構造物

 歩き回った結果、この施設内の大半が自動ドア的な物に仕切られており、入れる場所がほとんどなかった。開け放たれた扉もあるにはあったのだが、その部屋には何もない……撤収した形跡が見受けられた。


「これはハズレかしら?」

「そうだな……」


 リーゼの言葉に俺は頷くしかない。

 施設内に資料の類いも見当たらないので、これは成果なしに終わるか……と思いながら散策する。なんというか、本当に何もない。


 入口付近で魔力を感じたから、仕掛けとかあってもおかしくないのだが……室内にそんな雰囲気は見受けられない。そもそもこの施設は、研究室のような防衛機構が皆無であり、敵意が存在していない。これについても奇妙この上ないのだが……。


「ルオン、どういう施設なのかわかるかしら?」


 リーゼが問い掛ける。俺は首を左右に振り、


「手がかりが少なすぎるな……」


 とはいえ、この建物の構造を見て一つ思い当たることがあった……のだが、その推測が正しいとは限らないし、まだ喋らないでおく。

 頭の中でマッピングしているのだが、今進んでいる廊下で最後で……ふむ、真正面に扉が見えた。


「あの扉だけ、これまでと違うわね」


 リーゼの指摘に、俺は小さく頷いた。今まではそれこそ、自動ドア的なものばかりだったのだが、真正面の扉だけはドアノブがついていた。

 罠の類いはなさそうだったので、手を伸ばしてみる。回してみるとあっさりと開いた。鍵は掛かっていないな。


 俺達は警戒しながらゆっくりと扉を開けて中を覗く。そこには、


「……なんでしょうか、これは?」


 ソフィアがポツリと呟いた。真正面にある物……それは巨大な構造物だった。円柱を横に伸ばしたみたいだな形状をしており、その横には台座のような物がいくつかある。

 これまでに見なかった巨大な構造物だが……俺は近づいてみる。やはり魔物の類いは見受けられない。


 で、台座の方は……ボタンやらスイッチのような物が。これはどうやら、


「操作盤、か?」

「ルオン様、わかるのですか?」

「いや、見たこともないけど……前世で似たような物を見たことがある」


 工場の写真とか、そういうので……心の中で付け加えつつ、俺は構造物へ目を移す。

 たぶんこれ、機械の類いだな。ただ動力はたぶん魔力。とはいえ、外部から魔法を放っても効果があるとは思えない。というかそもそも、安易に干渉して良い物なのか?


「一番奥にあるし、この施設における重要な物だとは思うけど……」

「奥にも何かあるわね」


 リーゼの指摘に対し、視線を部屋の奥へ。扉とは反対側の壁一面に、巨大な操作盤があった。

 いや、それは制御盤と呼ぶべきだろうか……イメージとしては、工場とかにある電力を制御する場所。俺は前世学生の時に死んだので、そういうのを見たことは社会見学とかで工場内を案内された時くらいしかないのだが。


「……この部屋の中央にあるコイツを動かすための物だろうな」

「大掛かりな物ですね。何に使うのでしょうか?」


 ここが研究室なら、例えば実験装置とかそういうイメージなのだが……ここで俺はこの部屋だけドアノブの扉だったのを思い出す。


「……もしかして」


 呟きながら制御盤へと歩いていく。他の場所は自動ドアらしき物で開閉していたが、ここだけは普通のドア……ということは、ここは動力部だったのではないか? 自動ドアにしたら、動力を切ると出入りできなくなるし。

 で、壁一面の制御盤のどこかに、ブレーカー的なスイッチだかレバーがありそうだが……まあ、それをオンにしたからといって動くとは思えない。現時点で動力は不明だが、仮に電気だとしたら動力となるような物は存在していないので、動くわけがない。


 魔力であったとしても、この施設が建造された時に霊脈などから魔力をもらっていたとしたら……今はそれがなくなっている以上、動作するとは思えないな。

 とはいえ、やれるだけやってみよう……そう思いながら壁一面の制御盤をにらむ。


「ルオン、わかるのかしら?」

「いやさっぱり」


 天使の遺跡は潜ってきたけど、あいにく言語が読めるわけではない。ましてこの施設はそれよりも前に建造された古代人の施設である。スイッチとかの上によくわからない形の文字が記載されているのだが、当然理解不能である。


「とはいえ、だ。それらしいのがあるはずなんだが……」


 少しして見つけた。制御盤の端の方に、大きいレバーが一つ。たぶんこれが電源かな?


「ソフィア、リーゼ、入口付近で待機してくれないか」

「動かすのですか?」

「反応するかどうかわからないけどな」


 肩をすくめながら答え、電源らしきものに近づく。ソフィアとリーゼは互いに顔を見合わせた後、やがて俺の指示に従った。

 二人が入口まで移動した時、俺はレバーに触れる。ストッパーなどが掛かっているわけではないので、あっさりと動きそうだな。


「ねえねえ、これは何?」


 あ、懐のユノーを忘れてた。


「ユノー、そっちも入口まで戻っておいてくれ」

「えー、やだよ。面倒くさい」

「まったく……」


 ため息をつきつつ、俺はレバーを動かした。途端、ガチャンと一つ大きい音が響く。

 反応は……次の瞬間、足下が小刻みに揺れ始めた。振り返ると、中央にある構造物――動力源と思しきそれが、音を上げ始めた。


「動くのか、マジで……」

「ね、ねえねえ。これ大丈夫なの?」


 ユノーが気になって問い掛けてくる。俺はそれに答えようとした矢先――頭上から女性の声らしき物が聞こえてきた。


『――――』


 ただ、何一つわからない。そもそも古代語である。女性が何かしらアナウンスをしているのはわかるが、それ以上のことはわからない。ただ声の響きから、警告を発しているとは違い、状況を説明しているような雰囲気は感じ取れた。


「ルオン様、一体――」


 ソフィアが入口から声を掛けてきた瞬間、頭上に変化が。突如バチン、という音と共に光がもたらされた。ただその光量はそれほど大きくない。精々間接照明レベル。魔力なんかが足りなくて、照明を完全に起動できなかったってことか?


 遅れて、廊下からも音が聞こえ始める。どうやらこの施設が稼働し始めた……ということになりそうだった。


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