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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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白い施設

 会話をしながら俺達は順調に歩を進めていく……その道中で魔物と遭遇することもあるのだが、全て例外なく瞬殺である。まあここの部分で不安要素は皆無……遺跡内に強い魔物がいる可能性もゼロではないのだが、この面子なら大丈夫だろ。


「で、辿り着いたわけだが……」


 俺達の目の前には、洞窟が。使い魔を飛ばしてみると、洞窟の最奥に扉らしき物が存在していた。

 俺は周囲を見回す。岩山を登った先に、山に囲まれた小さな窪地――地図で確認した地形通りなのだが、ここには木々が生えており、視界を悪くしている。


 そもそも人の手がまったく入っていない山であり、なおかつ魔物もいてここへ到達するのも一苦労……そりゃあ確たる情報がなければ調査には来ない。

 俺達は領主フォルナが収拾した資料があったからこそ辿り着けたわけで……放置されていたのも頷ける。


「ここに何か有益な情報があればいいわね」


 リーゼの言葉。俺は小さく頷くと、洞窟へと足を踏み入れる。

 正直なところ、それほど期待しているわけではない……現段階で遺跡へ入るのは、何かしら有益な情報を得られるかもしれないというわずかな可能性を賭けてのことだ。現時点で所持している情報……特に賢者による情報を得ている以上、駄目で元々という気分でここへ来ている。


 ソフィアやリーゼもおそらくそれは同じであり、ユノーに至っては観光気分……は言いすぎかもしれないが、特段深刻に考えていないだろう。

 俺達は扉の前に辿り着く。冷厳な雰囲気であり、この周辺だけ漂う魔力が違っているように感じられた。


「まだ遺跡が機能しているのか……?」


 シェルジア大陸にあった天使の遺跡には迷彩効果が残っているものもあったので、こういう場所があってもおかしくはないのだが……沈黙しているとソフィアが一歩近づいた。扉に手をかざし、


「魔力が残っていますが、罠の類いはなさそうですね」

「わかるのか?」

「簡単な探査魔法ですが。あと、室内に魔物の類いはいないみたいです」


 ……ふむ、トラップだらけというわけではないのか? ともあれ、ここまで来た以上は憶することなく進む他ない。


「全員、戦闘態勢に。ユノーは俺の懐に入ってくれ」

「はいはーい」


 緊張感なくユノーは俺の懐へ潜り込む。俺が先頭に立って、ドアノブに手を掛ける。

 ヒンヤリとした感触と、淡い魔力を感じ取る。とりあえず閉まっているというわけでもなさそうだ。俺はゆっくりと力を入れる。扉は――あっさりと開いた。


 明かりの魔法で中を窺う。静謐な空間であり、室内は真っ白な建材で覆われている。


「何の施設なんでしょうか……?」

「領主フォルナの見立てでは、研究施設……ということだが、実際のところどうだろうな」

「こういう場所に建設する以上、秘匿されるようなことをしている以外にあり得ないと思うけれど」


 リーゼが横から言及。ま、そうだよな。

 例えば居住できる施設……宿屋とかそういう所が残っていてもおかしくはない……のだが、さすがにこんな山奥にそんな施設を建造するとは考えにくい。平地にある建物は星神の災厄によって消滅し、残った施設は研究室とか、あるいは何かしらの軍事施設とか……まあ色々と候補はあるのだが、ロクなものではない。


 その内の一つをリーベイト聖王国は見つけ出し、魔法技術に応用しているわけだが……いよいよ室内へ。とりあえずソフィアの言う通り魔物の気配などは皆無だ。

 というか、生物的なものは存在していないようだ……ゴーレムとか魔法生物が守護者としていてもおかしくはないけど……視界に入る中にはいない。


「で、この施設だが……」


 俺は呟きながら廊下と思しき場所を進む。まず少し進んだら角に突き当たる。T字路で、右はさらに左へ曲がる道。左側は突き当たりがまたT字路だ。


「どういう構造なのかしら」

「うーん……というか」


 俺は廊下を見回す。広い空間ではあるのだが、なんというか無機質なものを感じる。白い建材……これがどういう素材なのか見当もつかないのだが、単なる研究施設というのも何か違う気がしてくる。


「……結論を出すには情報が少なすぎるな。とにかく、先へ――」

「あ、ちょっと待って」


 リーゼが呼び止める。何事かと思っていると、彼女はT字路の突き当たりに触れる。


「これ、亀裂が入っているわよ」

「え?」


 確認すると、確かに……というかこれは――


「扉だな、たぶん」


 前世で言う、自動ドアみたいなものか? よくよく見れば両開きの扉みたいに、線が入っている。


「これ、扉なの?」

「たぶんだけど。魔力とかに反応して開く仕組みか?」


 試しに魔力を壁に流してみたが……反応ナシ。駄目みたいだな。


「うーん……扉の大きさから考えると、奥はここを訪れた人間を招き入れる部屋かな?」

「研究室にそんなもの必要ですか?」


 ソフィアのもっともな疑問。うん、隠れて研究するのであれば、そんな部屋は本来必要がない。


「研究室、とは違うのかもしれないな……となると、星神に関する情報については望み薄かもしれないが……ま、調べるだけ調べてみようじゃないか」


 どうやら辿り着いた場所は、他とは異なる何か……俺は線の入る扉をいくらか叩いてみたが、やっぱり反応はない。

 ただ、なんとなく理屈はわかる。これが仮に自動ドアの類いだとしたら、どこからか電気のような動力源が必要になるはず。たぶんどこからか魔力を供給する施設があって、それにより動き出すってところだろうか?


「ひとまず、先に進んでみよう」


 俺の言葉にソフィア達は頷き、俺が先導する形で右へ向かう。突き当たりの角を曲がると、廊下が真っ直ぐ進んでいた。

 どうやら左右には扉……ただそれも閉め切られている。居住スペースか、それとも他の部屋へと繋がる扉なのか。


「謎は深まるばかりね」


 リーゼが感想を漏らしつつ、俺は先へと進む。構造は比較的シンプルみたいなのだが……どこもかしこも扉が閉まっており、魔法か何かで破壊した方が早いのではと思い始める。

 でも、無理に干渉したらどうなるかわからないにしな……ともあれ、歩き回れるだけ一度調べてみよう――そういう結論に達し、俺は遺跡内を探索することとなった。


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