表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/1082

塔の戦い

「えっと、シルヴィ。一つ言っておかないといけないことがある」

「どうした?」


 聞き返した彼女に対し、目を合わせながら言う。


「塔の戦い……攻撃にはもちろん参加するけど、俺は基本サポートという形になる」

「……サポート? なぜだ?」


 もっともな疑問。俺の技量を知っている彼女からすれば当然首を傾げるだろう。


「普段戦うのは問題ないんだが……俺には制約がある。大陸に居城を築いた、魔族については知っているか?」

「ああ、把握している」

「――信じられないかもしれないが、俺達はその中の一体の居城に踏み込んだことがある」

「……そういえば、少し前にそんな話があったな。最近一体が滅んだとも聞いたが……もしや、倒したのは――」


 俺は何も答えなかったが、この場においては沈黙が肯定を意味していた。信じてくれない可能性もあったが……彼女の表情は、信じるといった様子だった。


「……信じるのですか?」

「二人が嘘を言う人間には見えないし、それに実力があるのもわかっている」


 ソフィアの問いにシルヴィは答える。もしかすると訓練の最中感じるものがあったのかもしれない――ともかく俺は、さらに続ける。


「……どうやら居城を構えたのは理由があるらしい。実際、俺達は居城の主と戦ったが、全力というわけではなかった。もし本来の力を所持していたら、俺達は全滅だっただろう……それで、居城に踏み込んだ時俺は満足に戦えなくなってしまった」

「何か理由が?」

「ソフィアと契約した精霊によると、俺は強力な魔族の瘴気に弱い体質らしい……サポートはできたし、ソフィアや他の仲間の力によって対処できたけどさ……よって、俺は普段から後衛に回り状況を見て援護するように動く」

「そうか……事情は理解した。今回共に行くことになるラディという人物にはどう説明する?」

「俺の能力を把握しているわけじゃないから、今のところは話さなくてもいいと思う。もし何らかの形で露見したら、改めて伝えることにするさ」


 これで話は終わり――ソフィアの素性についても話そうか迷ったが、彼女は俺に視線を向けると一瞬首を左右に振った。まだ、ということらしい。これについてはソフィアの判断に任せた方がいいだろう。


 シルヴィが仲間に加わったわけだが、最後まで共に戦うかどうかはわからない……この辺りも今回の戦いで判断するのもいいだろうと思った。






 翌日から、俺達はラディと共に旅を開始する。片道数日の道のりなので難関もゼロ――道中騒動の一つもなく、俺達は目的地である塔へ近づこうとしていた。


「あれか」

「だな」


 俺の言葉にラディが応じる……塔といっても天高く伸びるものではない。周辺に存在する森から突き出て目立つのは事実だが、高さにするとビル五、六階建て相当くらいだろうか。

 石造りの塔は相当年季が入っているため、植物のツタなどが生え放題。とはいえ崩れる様子は一切ない。魔法でコーティングでもされているのかもしれない。


「入ろう。間違いなく魔物がいるから気を付けてくれ」


 ラディが言う――彼は杖術を使いつつ魔法を使うタイプで、接近戦も一応可能なタイプ。とはいえ基本は魔法メインであり、戦士系に任せて後衛で魔法を使用するのが本来の立ち位置である。

 横顔を窺う。多少なりとも緊張しているようだが、同時にわくわくするような雰囲気も存在。未踏の場所に踏み込むことに興奮しているようだ。魔法使いの住処だったということも、それに拍車をかけているのだろう。


 ネストルとシルヴィを先頭にして、俺が明かりの魔法を使い踏み込む――と、早速魔物が見えた。


 ――オオオオオッ!


 雄叫びが放たれる。赤色の皮膚と人より二回り以上デカイ魔物――間違いなくオーガだ。得物も見た目に準じトゲ付きの棍棒。侵入者である俺達に真っ直ぐ突撃を仕掛けてくる。

 その迫力は相当であり、この時点で普通の人は腰を抜かすこと間違いない。


 先んじて動いたのはネストル――鉄鎧に鉄盾を持った彼は、オーガの真正面に立ち対抗する構えを見せた。

 オーガが棍棒を振る。それを盾で受けたネストルだが――即座に体を傾け受け流した。ゲームと同様、防御する能力は一級品のようだ。


 そこにソフィアが『エアリアルソード』を放つ。風の刃を受けたオーガは大きく怯み――間髪入れずラディが『ファイアランス』を使用し、追撃を加える。

 加え、ネストルと後方から一気に駆けるシルヴィが剣を構え――俺はここでシルヴィへ攻撃力上昇の魔法を放ち――両者は同時に剣を薙いだ。


 戦士同士、連携できる様子……叩き込まれた斬撃を受けオーガは吹き飛ぶ。また形が残っていたが、トドメと言わんばかりにラディが『サンダーボルト』を放ち、消滅した。


 オーガとのファーストコンタクト――連携も上々で悪くない。これなら……ネストルが先導し、俺達は塔の上階へと進む。そこでまたオーガ。ただし今度はキングコブラよりも大きい大蛇の存在も認める。

 名は『ブラインドアタッカー』と言い、攻撃の当たりにくさとすばしっこさで面倒な相手だ。


 オーガが仕掛ける。ネストルがその進撃を阻もうとした時、俺は大蛇の存在を警告する。


「大蛇に気を付けろ!」


 その言葉と同時、ラディが動きを見せた。彼の目の前に突如大きな火球が現れる。だが『ファイアボール』とは魔力が違う。


 これは火属性中級魔法の『フレアボム』だ……単体を対象とし、中級魔法の中では威力が低い部類に入る――というのも、アカデミアで学んだ人物達が大抵一番最初に習得する中級魔法であり、製作者側も意図的にこの魔法が中級魔法の入口だと認識させたい意図があった様子。


 そして火球の狙いは、オーガではなく大蛇――ネストルとオーガが激突した瞬間、ラディの魔法が大蛇に炸裂した。着弾すると爆発するわけではなく、魔物に衝撃波を与えるという攻撃であり、魔法が直撃しても煙など生じず、魔物の動きを見極めることができる。


 オーガの進撃を阻んだネストルは反撃に出る。一撃決めた後、今度はソフィアが前に出てオーガへと迫る。

 訓練の成果が――注視した直後、オーガが棍棒を振りかざそうとする。だがソフィアは気にした様子もなく『清流一閃』を放つ。


 流麗な動きと共に一撃加え背後に回る。オーガは今度こそ動きを止め、シルヴィが追撃を放ち、撃破に成功。

 残る大蛇だが……ネストル達へ迫ろうとしたところに俺が『ホーリーショット』を放ち、迎撃に成功した。


「……こいつらは、番人といったところかな」


 ラディがオーガがいた場所に目をやりながら言う。


 魔物はいるが、魔族の存在は今のところない。どういう理由でこの魔物が塔を守護しているのかわからないが……最上階に行けばそれもわかるのだろうか。


 ――ここに到達するまでに塔に住み着いていた魔法使いについて情報を集めたが、名前なども相手によって変えているらしく、結局プロフィールについては一切わからなかった。

 塔に住んでいた事実はラディが把握していたように噂レベルで存在していたが、肝心の魔法使い個人の情報については不明……これは魔法使いが意図的に情報を隠していたことを意味している。


 そして、この魔物……素性を隠していた魔法使いをなぜ魔物達が狙うのか。可能性として考えられるのは、魔王を裏切った魔族だろうか。それなら素性を隠し塔に住み着いていたのも理解できるし、魔族が裏切り者として狙うのも理解できるが――


 色々と考えつつ、さらに上へ進む。またもオーガ。しかも今度は三体。


「……前衛三人がそれぞれ対応することにしよう」


 シルヴィが意見。するとネストルとソフィアは自然とオーガと対峙する。俺から見てネストルが真ん中、シルヴィが左、ソフィアが右。

 俺やラディは援護の構えに入り――オーガが呼吸を合わせたように同時に突撃を開始する。ネストルは防御の構えを見せ、ソフィアは魔力を高め、シルヴィはオーガへ疾駆する。


 三者三様の動き。俺はひとまずソフィアに『プロテクション』の魔法を掛けた後、三人の戦いが始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ