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賢者の剣  作者: 陽山純樹
真実の探求

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案の難易度

 ユノーの策を採用することになり、俺達はリズファナ大陸で本格的に活動を開始した……今までも気合いを入れてきたわけだが、明確に指針が定まった中で動き始めたので、そういう表現で問題はないだろう。

 やることは色々あるが、俺の方は遺跡探索などを行うことになる。ただ、さすがにしらみつぶしに当たるというのは非効率だし、何よりそんな時間もない。よってまずはカティを中心に星神に関する資料を調べ始めた。とにかく、遺跡にまつわる情報を……ということで、可能な限り調べ上げる。その結果、いくつかあまり調べられていない遺跡を見つけることができた。


 これは領主フォルナの功績だ。文献などでこの場所に施設があるという記述が成されているが、現在の地形と照らし合わせても発見できないケースが多い。それはどうやら星神の行動によって何かしら異変が生じたから……ということらしい。しかし、いくつもの文献を調べることによって、当たりを付けることができた。よって、精度の高い情報を得ることができたのである。

 既にこのことはガルク達に加え、エメナ王女を観察しているシルヴィとラディにも連絡済み。王女はまだフォルナの屋敷へ踏み込むまでに時間を要する。その間に、やれることをやっておく。


「ルオン様、準備ができました」

「ああ」


 部屋で身支度をしていると、ソフィアがやって来て報告を行う。カティと調べ物をしておよそ数日。いよいよ当該の遺跡へ踏み込むこととなった。

 とはいえ、遺跡内で調べ物をする分には問題はない……というより、隠しダンジョン的な迷宮すらクリアした俺達であれば、探索はそれほど難しくはない。問題は時間。そういえば前も、時間に追い立てられて攻略していたよなあ……。


 ま、あの時ほど焦る必要はないんだけど……部屋を出て、食堂へ。そこで領主フォルナを含め、全員が待っていた。


「それじゃあ、改めて……今日より、星神打倒と、リーベイト聖王国の助力をするべく行動を開始する」


 ――方針としては、まず領主フォルナがリヴィナ王子について調べる。とはいえ、露見すれば一巻の終わりであるため、無理はしないように釘は刺している……ちなみに具体的にフォルナは何をするのか確認もしてある。とりあえず、問題にならなそうなレベルである。

 そしてカティは研究のために屋敷へ残り、フィリは彼女の手伝いとになった。カティが単独で残るという案もあったが、彼女自身一人ではさすがに効率も下がるためだった。手伝いにメイドをあてがうわけにもいかないため、フィリが助手という役目を担うことに。


 あと、この数日で一つ屋敷内に魔法を構築した。それはガルクと連絡を取り合うためのもの。本来はユノーを介し、なおかつ俺が魔法を行使する形だったが、これをカティでも行えるようにした形だ。ガルク達が魔法を上手く調整してくれたおかげで可能になったのだが、あいにく連絡がとれる場所は固定で、多少ながら不便。とはいえ、贅沢は言っていられない。


 ユノーについては、引き続き俺と帯同することになった。遺跡探索について、能力的に問題はないにしても、何かしらトラブルに発展する可能性がゼロではない。よって、カティ側やガルク側と相互に連絡を取れるような手段を確保しておくという意味合いがあった。

 で、遺跡の探索役として、俺とソフィアにリーゼという三人が動くことに。号令によって、俺達は屋敷を出る。馬が既に用意されており、それに騎乗して一路目標地点へ向かうことに。


 魔法で移動……という選択肢もあったのだが、ここからそう遠いわけではないし、人に見られでもしたら面倒なことになるかもしれない。まあ可能性は低いからとっとと魔法で向かうのが良いのでは、という提案もあったが……町に立ち寄って情報なども仕入れておきたかった。できる限りリヴィナ王子の動向……というか、リーベイト聖王国がどういう動きをしているのか、あるいは世論がどうなっているのかを逐一確認しておきたかったのだ。それが、ユノーの提示した案で非常に重要となるためだ。

 というわけで、俺達は馬を走らせる。二日ほど移動を行い、町にフォルナの名前を使って馬を停泊所に預け、そこからは遺跡のある山岳地帯へ向かう手はずとなっている。星神との戦いをより確固たるものとするために――俺達はいよいよ、仕事が始まった。






 立ち寄る町で情報を得ながら、俺達は進んでいく。まずバールクス王国側については、賢者からの情報を得たことにより作業が驚くほど早く進んでいるという。天使なども加わり、どういう風に戦うのか、その基本戦術を組み立て始めたとのこと。それに合わせ組織のメンバーも訓練を行う……こちらは非常に順調だ。

 一方、俺達は立ち寄る酒場などで王族に関する情報を得る。民衆から聞かれるのは、現王様の支持の高さと、次期国王としてリヴィナ王子の資質を認めるもの。この国に大きな富をもたらした王族である以上、非難をするような人間は一人もいない。


 中には否定的、というより「もっとこうすべきだ」と助言するように語る者もいるにはいたが……みんなが満足していることだけは明瞭となった。


「この状況下でリヴィナ王子が不祥事を起こせば、国内の情勢が大きく変わるでしょうね」


 夕食をとりながらリーゼが語る。うん、王位継承権第一位の人間が失墜するのだ。そのインパクトは相当なものだろう。


「賢者の資料でも、国内情勢がどういうことになっているのかは不明瞭なんだよな……まあリヴィナ王子に加え、レノ王子にまで影響が出るんだ。人々としても不安の種になるのは間違いないか」

「そうね。可能な限りダメージを抑えるには……どうしてもリヴィナ王子について対処しなければならないわ」


 ただ……例えばの話、リヴィナ王子が改心してもやってしまったことを元に戻すことはできない。なおかつ、話の流れとして賢者が見た未来……ゲーム通りの展開にする場合、リヴィナ王子は失墜しなければ流れが変わってしまう。

 そこを変えずに、ハッピーエンドへ導く……だからこそユノーの案は難易度が高い。とはいえ、俺はこの案を採用した以上、絶対に成功させる……成功させなければならない。


 実際に策が発動するのはまだ先だし、情勢次第でプランを変更する必要性はあるのだが……ともかく、今は目の前の物事に集中しよう。俺は思考を切り替え、ソフィア達と食事を続けることとなった。


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